右の写真は海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」(海上自衛隊HPより)。共同通信などの報道によれば、防衛省は同艦を戦闘機の離発着が可能な「空母」に改修し、最新鋭のステルス戦闘機「F35B」を配備する検討に入ったという。
改修前だが、「いずも」はどう見ても空母=航空母艦。理屈はともあれ、空母の運用は遠隔地への航空機攻撃を前提とするもので、専守防衛を定めた憲法との整合性が問われることになる。
安倍政権による軍拡路線の行き着く先は……。
■政権が目論む「攻撃型空母」の導入
防衛省が導入しようとしているのは、短距離離陸や垂直着陸ができる最新鋭のステルス戦闘機F35B。航空自衛隊がF-4戦闘機の後継として導入を進めるF-35A(右の写真。航空自衛隊のHPより)の仕様を、一部変更したものだ。
1機150億円といわれるF35Bを艦載機として運用するため、現在はヘリコプターしか運用できない護衛艦「いずも」の甲板を改装する計画だという。「いずも」は、平成25年に就役した海自最大の護衛艦。今年3月に就役した2番艦「かが」同様ヘリ5機を搭載することができるが、戦闘機を運用することはできない。
「日米の連携強化」「中国・北朝鮮への対抗手段」「日米同盟の強化」――。考えられる政権の言い訳はそんなところだろうが、戦後、憲法で専守防衛を義務付けられた自衛隊が空母を保有したことはない。遠隔地での戦闘機発進を可能とする攻撃型空母の運用は、明らかに憲法違反。野党はもちろん、憲法学者からも反対の声が上がりそうだ。右寄り政権による軍事大国化を、諸外国から危険視される可能性もある。
自衛隊の装備を巡っては今月、北朝鮮のミサイルに対抗する防衛システムとして、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入が閣議決定された。計画では、国内の東と西に2基。2,000億円以上の費用がかかるものと見られている。
■安倍政権下、増大する軍事費
次からの次の軍備強化。千億単位の税金が、政権の独断で費消されているのが実情だ。その証拠に、安倍政権下での防衛費は増える一方となっている。下は、小泉政権下の平成14年度から30年度までの防衛予算の推移である。
小泉政権(平成13年4月~平成18年9月)以来減り続けていた防衛費は、安倍が首相に返り咲いた25年から急上昇。平成28年度には、在日米軍関係経費のすべてを加えた予算額が初めて5兆円を突破し、29年度予算で5兆1,251億円に。来年度は、過去最大の5兆1,911億円まで伸びる見込みだ。歯止めを失ったも同然の軍拡路線。安倍が目指す「美しい国」とは、「戦争ができる国」のことなのである。
■一貫して憲法無視
軍事情報を秘匿するための特定秘密保護法、憲法解釈を歪めた集団的自衛権の行使容認と安全保障法制――。積み重なる軍事費を含めて、すべてが戦争への道普請といえるだろう。北朝鮮や中国との問題を解決する手段を、ひたすら「武力」に頼ろうとする安倍政権の姿勢は、外交における知恵のなさの裏返しでもある。
短絡的思考の持ち主である安倍にとって邪魔なのが、日本が戦争に巻き込まれるのを阻んできた憲法。とりわけ9条には敵意さえ抱いている節がある。だから一貫して憲法無視。安倍の「憲法改正」は、国家・国民のためではない。
攻撃型空母の導入は、明らかな憲法違反。しかし、一強に奢る安倍政権は強引に事を進めるだろう。憲法を踏みにじることに、なんの痛痒も感じない安倍だからこそできる愚行。暴走を止めるには、国民が声を上げるしかない。あなたは、「戦争のできる国」を望みますか?
*新年は1月4日から記事配信の予定です。