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地震と火山に国と司法が新判断 それでも“原発”動かしますか?

2017年12月25日 09:30

20140114_h01-01t--2.jpg 37万8000平方kmの国土のうち、平地は約3割。狭い日本は“地震と火山の国”である。子供でも知っている自然環境の中に、暴走したら止めることのできない「原発」及び原発関連施設が廃炉作業中のものも含めて60カ所近くある。
 原発の過剰整備は想定される地震や火山活動の過小評価が前提だったが、福島第一原発の事故で、過小評価の上に成り立っていた「安全神話」はもろくも崩れ去った。
 フクシマから6年9か月。原子力規制委員会は、新たな規制基準に沿って複数の原発に再稼働のお墨付きを出してきた。しかし、ここに来て国の機関や司法が、その結論が誤りであることを示唆する判断を下す状況となっている。(写真は川内原発)

■千島海溝を震源とする超巨大地震
 今月19日、政府の地震調査研究推進本部(以下、「地震本部」)が、北海道東沖の「千島海溝」で30年以内にマグニチュード(以下、M)8.8より大きい超巨大地震が30年以内に起きる確率を7~40%とする長期調査の結果を発表した。北海道東部に巨大な津波をもたらす超巨大地震は発生から400年程度経過しており、事態が切迫している可能性が高いとしている。もし超巨大地震が発生した場合、被害はどこまで拡がるのか――。下は地震本部が公表した資料の一部だが、位置関係から言って、被害は北海道東岸にとどまらず、道西岸や青森県にまで及ぶ可能性がある。

千島海溝.png

 北海道西岸には、原発3基を擁する北海道電力の泊原子力発電所がある。青森県の下北半島には東北電力の東通原子力発電所があり、原発1基が存在する。他にも、電源開発が大間原子力発電所に原発1基を建設中だ。同じく下北半島の六ケ所村には、全国の原発から輸送されてくる使用済み核燃料の再処理施設やMOX燃料を製造する工場などが集積している。千島海溝を震源とする超巨大地震が、こうした施設に影響をもたらすことは容易に想像がつく。

■大分まで延びた中央構造線断層帯
 原発に影響を及ぼすことが想定されるのは、千島海溝を震源とする地震だけではない。地震本部は、四国地域の断層帯についても再評価し、その結果を19日に発表している。国内最大の断層帯は「中央構造線断層帯」。再評価によって、これまで四国沖と考えられていた西の端が大分県まで達していることが明らかになっている。(下の図参照。地震本部公表資料より)

四国.png

 中央構造線断層帯は、3基の原発がある四国電力伊方原子力発電所のすぐ北側を走っており、中国電力が建設を計画している上関原発の位置も、断層帯に近接する形となる。中央構造線断層帯が延びたことで伊方原発の危険性が増したと考えるべきだが、伊方原発の再稼働を認めた原子力規制委員会に審査結果を見直す動きはない。

 四国を東西に貫く断層帯は、そのまま豊後水道を渡って別府湾に入り、大分県内の細かな活断層へと続いていく。その延長線上にあるのが熊本地震を引き起こした活断層の帯だ。南に下れば、九州電力川内原子力発電所がある。川内原発周辺の活断層を巡っては、再評価の作業を進めていた地震本部の分科会が議論の中で、九電の地質調査結果について「(九電の)解釈はとにかくひどいものである」、「最もひどいのは、地表面(海底面)にまで断層変位が及んでいるにも関わらず、断層の存在を全く無視していることである」などと、厳しく批判していたことが分かっている。

■広島高裁―「火山」の影響認め運転差し止め 
 原発に事故をもたらすのは、地震だけではない。広島高裁は今月21日、住民が求めた伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分の抗告審で、地裁の決定を覆し、運転を禁じる決定を出した。「阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合、(約130キロ離れた伊方原発が)火砕流の影響を受けないとはいえない」というのがその理由だ。高裁段階で原発の運転差し止めを認めたのは初。火山の影響を認めた点でも、画期的な判決だった。実は、阿蘇山に最も近いのは川内原発。伊方だけでなく、川内原発も影響を受けると考えるのが普通だろう。前任の原子力規制委員長は、桜島の噴火と川内原発の関係について聞かれ、桜島の噴火が川内原発に影響を与えることなど「あり得ない」と断言した。広島高裁の決定は、その判断が間違いであったことも示唆している。

 私たちは、阪神・淡路、東日本という巨大地震を経験している。世界の活火山のうち1割近くは日本国内。火山噴火を伝えるニュースが絶えた年は少ない。その日本で、国の機関が地震の危険性が増すことになる調査結果を公表し、司法が火山噴火との関係から運転差し止めを認める決定を出した。もっとも原発に頼ってはいけない国に、原発と関連施設が約60か所――。警鐘が鳴らされていることに、気付くべきだ。



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