高島宗一郎福岡市長の任期が、残り1年を切った。来年11月には3期目をかけた市長選。失政やスキャンダルを極力避けようと市役所内部がピリピリする中、市長の監督責任が問われる事態が出来し、市役所周辺がざわついている。
市関係者の話を総合すると、問題を起こしたのは市長の「政務秘書」。身の程知らずの行動をとがめられ、事実上の“謹慎処分”になっているという。一体何があったのか……。
■暴走する「政務秘書」
とにかく評判が悪い。市の事業に介入し、あれこれ指示を出すなど市役所職員を使用人扱い。何を勘違いしているのか、市の人事にまで口を出すという。夜は若い経営者連中を引き連れて市内の飲食店で豪遊し、高級クラブでは業者からの接待。職員からは「そのうち、(警察に)捕まるんじゃないか」「何様のつもりなんだ」といった声が上がる始末だ。何人もの歴代市長側近を見てきたが、高島氏の「政務秘書」は質の低さにおいて間違いなくナンバーワンである。
仕えた政治家の“看板”で飯を食っていることを忘れ、自分自身に力があると思い込むタイプの秘書がいるが、彼はその典型。今年3月に行われた下関市長選に出向いた政務秘書は、応援した新人候補の勝ち戦で調子に乗ったらしく、「俺が市長にした」と言わんばかりの自慢話をして回ったとされる。博多座の社長人事に関わったのか、周辺には「社長にしたのに、見返りがない」とぼやいていた。事実なら、救いようのない勘違い秘書だ。
気になるのは、陳情や頼み事を受ける際の姿勢。政務秘書は、パーティー券購入を割り当てるなど、必ずと言っていいほど「見返り」を求めるだという。斡旋収賄が成立する構図だが、高島市長の政務秘書は“私設”。公務員ではないため、見逃されることになる。市長秘書の肩書を使って様々な利権に介入してくると言われているが、職務権限もないことから野放し状態。あまりの傍若無人ぶりに、顔をしかめる職員や議会関係者は少なくない。その政務秘書が“謹慎”。噂は、市内部はもちろん市議会関係者にまで広がっている。
■背景に博多区内の大型開発
たしかに政務秘書は表舞台から姿を消していた。「最近、市役所では見かけない」(市職員)「市長の政治資金パーティーには来ていなかった」(企業経営者)。頻繁に出入りしていた市役所にはまったく来ておらず、今月5日に開催された高島市長の政治資金パーティーでも、“会場”に政務秘書の姿はなかったのだという。一体何があったのか――。
取材してみると、裏で高島市長の進退に関わるような「事件」が起きていた。危うい行為に走ったは件の政務秘書。市内博多区で予定される大型開発に首を突っ込み、主導権確保のために動いていたという。これが業界関係者の耳に入り、激怒した関係者が政務秘書の後ろ盾である北九州の県議に通報。市長周辺で協議の上、政務秘書に「謹慎処分」が下されていた。特定業者との間に見返りの約束があれば、市政を揺るがす事件に発展していた可能性もある。図に乗った政務秘書は、踏み込んではいけない領域に足を入れたということだ。
■危うい行為、次々に
問題の政務秘書を巡っては2011年11月、高島宗一郎福岡市長の政治団体が開いた政治資金パーティーの収益を上げるため、市幹部にパーティー券を割り当て、職員らにパー券を購入させていたことが判明。2014年9月には、市の第3セクター「博多港開発株式会社」の幹部に、パーティー券購入の取りまとめを依頼していたことも分かっている。市長の権威を笠に着て、横暴さを増す政務秘書。市役所内部からは、「最近は平和だと思っていた。聞けば政務秘書さんは謹慎中。喜んでいる職員は少なくないですよ」「そのうち事件になるなと思っていました。謹慎程度で済んで、市長は助かったということでしょうね」といった声が上がっている。