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鶴保前沖縄担当相本人に100万円 業者証言 六本木しゃぶしゃぶ店で

2017年12月11日 07:00

00-鶴保会見2.png 前沖縄北方担当相の鶴保庸介参院議員(和歌山県選挙区。当選4回)が、沖縄県名護市辺野古で進む米軍普天間飛行場の移設工事に必要な「岩ズリ(がんずり」の採取に絡み、鹿児島県南大隅町に本社を置く採石会社の代表者から100万円の現金を受け取っていた疑いが浮上した。鶴保氏の関連政治団体が提出した政治資金収支報告書を確認したが、業者からの100万円は記載されていない。
 採石業者側から鶴保氏側への現金提供については、共産党の機関紙「赤旗」が11月19日の日曜版紙面でスクープ。鶴保氏の後援会長を名乗る関西在住の人物に、鶴保氏との面会を実現するなどの名目で多額の現金を渡したことが報じられ、報道各社が後追いする状況となっていた。
 HUNTERは、採石業者に直接取材。問題の後援会長への資金提供の他に、鶴保氏本人に対する現金供与があったことを確認した。

■注目集める鶴保疑惑
20171211_h01-02.jpg 「岩ズリ」とは、岩石を破砕した建築資材。辺野古沖の埋め立て工事だけで約1,700万㎥の岩ズリが、県外の採石業者から購入される予定となっている。採石業者は、南大隅町辺塚にある花崗岩の山から建築資材用の岩ズリを採取し、辺野古の埋め立て工事や自衛隊岩国基地の拡張工事などに売り込むことを計画。神奈川県内の不動産会社社長と組んで複数の地主から採石権を取得し、事業展開することを狙っていた。

 ところが、南大隅町の理解が得られず事業は停滞。困っていたところ、平成27年11月に、別の採石業者ルートで知り合った関西の男性から「参議院議員鶴保庸介後援会 関西千年会会長」という肩書の名刺を持つ人物M氏を紹介され、同氏の勧めに従って鶴保氏を頼ったという。

 翌年2月、同行したM氏とともに国会内にある参議院自民党の政策審議会長室で鶴保氏と面会した採石業者は、鶴保氏に事業への協力を要請。この時、M氏から「面会料」として100万円を用意するよう言われ、鶴保氏との面談直前に封筒に入れた100万円をM氏に渡したという。採石業者は、以後11回に及んだ面会にかかった費用やM氏への「顧問料」、さらには鶴保氏が4選を果たした昨年の参議院選挙に対する選挙支援費用を含め2千万円以上の資金提供を行ったと話している。

■封筒の100万円 鶴保氏本人に
 M氏ではなく鶴保氏本人への現金提供はなかったのか――。HUNTERの確認に採石業者は、「鶴保先生に直接100万円渡した」と明かした上で、当日の状況を詳しく証言。それによると、100万円を鶴保氏本人に渡したのは昨年4月6日。都内港区六本木にある高級しゃぶしゃぶ店で、M氏、神奈川の会社社長、自社の社員ら5人で鶴保氏を接待し、予約した部屋の隣で「選挙、頑張ってください」と言いながら100万円入りの封筒を渡したという。封筒の中身を確認した鶴保氏は100万円を封筒ごと鞄の中に入れ、「領収書、いる?」と顔を向けたというが、「いらないんだろ」と言わんばかりの問いかけに、採石業者は「いえ」としか答えられなかったとしている。

 採石業者が、傍証として示したのがカネの動き。下は、採石業者が鹿児島県内の信用金庫で開設した口座の預金通帳の一部で、4月6日に、50万円ずつ採石業者個人の都市銀行の口座に移したことが記録されている。採石業者は、都内のATMでこの計100万円を引き出し、鶴保氏に渡したと明言している。

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■法令違反の問いに業者「覚悟している」
 鶴保氏の関連政治団体は、総務省届出の資金管理団体「鶴翔会」と「自由民主党和歌山県参議院選挙区第二支部」。昨年分の政治資金収支報告書を確認したところ、鶴保氏が業者側から受け取ったという100万円の記載はなかった。資金提供が事実なら、政治活動にともなう収入・支出のすべてを報告するよう求めた政治資金規正法の規定に抵触する疑いがある。

 問題は、しゃぶしゃぶ店での現金授受に贈収賄の可能性まで生じることだ。関西千年会の会長M氏に提供した資金が、鶴保氏に渡ったかどうかは不明。しかし、鶴保氏本人への100万円は、辺野古で進められる埋め立て工事への参入と南大隅町に対する影響力行使を依頼したことへの見返り。鶴保氏はしゃぶしゃぶ店で接待を受けた4か月後の昨年8月に沖縄・北方担当相に就任しており、役所に何らかの口利きを行っていれば、採石業者とともに罪に問われる場合もある。

 この点について採石業者は、次のように話している。
「もちろん自社の利益のために、というのはある。しかし、私は、国の事業が円滑に進むことと、過疎化で苦しむ南大隅町辺塚地区が少しでも潤えばと考え、頑張ってきた。採石事業に理解を示し、協力してくれた地元住民への恩義にも報いたいという思いも強い。辺塚は、核ゴミ処分場の誘致問題で揺れたところ。事業を行うことで、核ゴミ処分場も不可能になると確信していた。残念なことに、南大隅町は聞く耳を持たなかった。困って頼ったのが、鶴保先生の後援会長M氏。政治の世界に縁遠かったため、コロッと騙され、言われるがまま資金提供を続けることになった。だが、鶴保先生側は、一方的にカネを吸い取るだけ。事態は、何も動かなかった。政治の世界のことについて無知だったとはいえ、依頼したことへの賄賂だったことは確か。贈収賄ということになるかもしれないが、私が罪に問われることになっても、仕方がないと思っている。覚悟はできている」

■鶴保氏側は事実上の取材拒否
 六本木のしゃぶしゃぶ店で現金100万円を渡したという採石業者の証言内容は事実なのか――。鶴保議員の国会事務所に文書で確認を求めたが、期限までに回答はなく、事実上の取材拒否となっている。



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