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1万票台で議員バッジ 衆院比例区の問題点
選挙費用は報告免除

2017年11月 8日 09:05

gennpatu 1864410756--2.jpg 1万票台の得票で衆議院議員に当選――。信じられない話だが、先月の総選挙で実際に起きたことだ。京都5区で約19,000票しか獲得できず4位に沈んだ希望の党の新人・井上一徳氏が、単独2位だった比例近畿ブロックで復活当選。有権者から「小選挙区で惨敗した候補者がバッジをつけるのはおかしい」という声が上がった。他にも20%台の惜敗率で当選したケースが複数あり、現行制度の抱える問題点が浮き彫りになった形だ。
 衆院比例区の“欠陥”は他にも。じつは、比例単独で選挙に臨んだ候補者たちの選挙運動の収支は、有権者に知らされることがない。すべての候補者に義務付けられている『選挙運動費用収支報告書』の作成・提出が、衆院比例区だけ免除されているからだ。改めて、衆院比例区の問題点を検証した。

■4位落選で代議士に
 問題視されているのは、京都5区で落選し、比例近畿ブロックで復活当選した希望の党の新人・井上一徳氏のケース。小選挙区では自民(60,277票)、無所属(30,665票)、共産(21,234票)の候補に次いで4位。わずか19,586票しか獲得できなかった。しかし、井上氏は希望・比例近畿ブロックの単独2位。同党は3位まで議席を得たため、惜敗率に関係なくスンナリ初当選を決めていた。このため、敗れはしたものの奈良1区で88,082票を集め97.2%の惜敗率だった馬淵澄夫元国土交通相が比例復活できずに落選。永田町関係者だけでなく、多くの有権者から制度の欠陥を指摘する声が上がる事態となっている。

 惜敗率20~30%台で復活したケースは他にもある。静岡7区では、約13万票の自民党候補に対し26,383票しかとれず3位で落選した立憲民主党新人の日吉雄太氏が、党の躍進に助けられ比例東海ブロックで復活当選。惜敗率20.3%で議席を手にしている。南関東ブロックでも、神奈川6区において惜敗率28.3%で3位落選の維新新人・串田誠一氏が復活当選している。

 小選挙区で競り合った末、敗れた候補が復活するなら納得もできる。しかし、小選挙区で3位以下と惨敗し、当選者の2割、3割程度の得票しかできなかった候補者が比例で復活というのはたしかに筋が通らない。前述した希望・井上氏の小選挙区での得票について計算してみると、投票した有権者の15%未満。こんな候補者がバッジをつけることは、当該選挙区の有権者が下した判断を無効にするに等しい。比例復活について「死票の救済」という声もあるが、惜敗率90%台の候補者が救われない現状では、死票の救済にはなるまい。現行制度に欠陥があることは確かだ。

■比例単独候補、選挙収支は不透明
 衆議院の比例区については、別の問題もある。公職選挙法は、すべての選挙において『選挙運動費用収支報告書』の作成し、当該選挙を所管する選挙管理委員会に提出する義務を課している。しかし同法は、《選挙運動に関する収入及び支出並びに寄附》について規定した章の中で、「衆議院(比例代表選出)議員の選挙については、適用しない」と定めているのだ。このため、比例区の候補は「出納責任者の選任」や「会計帳簿の備付及び記載」、「選挙運動に関する収入及び支出の報告書を作成し提出」といった通常なら全ての立候補者が行う選挙事務を免除される。

 衆院比例区は政党が取り仕切る選挙。比例の候補者は名簿に名前が登載されるだけで、個人的に選挙カーを動かしたり、選挙用ポスターを作成する必要がない。ただし、小選挙区と重複立候補している候補は小選挙区内での戦いが主で、そこでの選挙収支は報告される。比例区候補に選挙運動の収支報告を求めないことには、一応の理由がある。だが、比例単独候補については別だろう。比例単独候補が当選するためには党の得票を増やすしかなく、つながりを頼ってブロック内で運動するのが普通だ。必然的に運動費用がかかる。これは収支を明らかにし、選挙運動の実態を報告させるべきなのだ。

 希望の党から出馬し、比例九州ブロック一位となった中山成彬氏や、近畿ブロック一位の樽床伸二氏、前述の井上一徳氏は小池都知事のお友達。名簿登載の経緯が不透明だったことに、多くの批判が集まった。この方々の選挙収支が不透明というのでは、あまりに有権者をバカにしている。



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