安倍政権の是非が問われる22日投開票の衆議院議員選挙で、公明党が、立党したばかりの「立憲民主党」に対する攻撃を強めている。
他宗を批判して信者を増やしてきた同党の支持母体「創価学会」の歴史を彷彿とさせるような激しさ。議席減が見込まれる同党の焦りが、躍進確実の新党に向けられた形だ。なりふり構わぬ姿勢に、有権者からも疑問の声が上がっている。
■止まらぬ立憲民主党への“口撃”
今月3日に結党したばかりの立憲民主党に対する、山口那津男公明党代表の口撃が止まらない。公示(10日)前の6日には早くも立憲民主党を狙い撃ち。街頭演説で、「格好いいこと言ってる立憲民主党は、実は選挙のために“魂を売った”人たち」「いっけん民主党」などとこき下ろした。(下は、その時の様子を紹介した公明党選挙特設サイトのトップ画面)
その後も立憲民主党をターゲットにした口撃は続き、山口代表の発言があるたび、サイトのトップ画面が更新されている。(以下、公明党選挙特設サイトのトップ画面から)
「悪夢」「デタラメ」とおだやかならぬ言葉を連ね、文末には「!」を付けて怒りを強調する興奮ぶりだ。普段の静かな語り口から一変した山口氏の演説には、立憲民主党への憎悪さえ感じられる。もともと公明党と共産党は犬猿の仲。共産党を攻撃するのは理解できるが、立憲民主への激しい批判は、異常と言うしかない。
公明党は政権与党である。実績と政策を、それこそ愚直に訴え、審判を仰げばいい。それが、度を越えた他党の批判。見苦しさの裏にあるのは、議席獲得目標に届きそうもない現状への焦りだろう。他党批判の激しさが想起させるのは、同党の支持母体「創価学会」が信奉する日蓮の教えである。
■お手本は日蓮の他宗批判?
日蓮宗の宗祖である日蓮が、他の仏教宗派を批判した言葉として伝えられるのが「真言亡国、禅天魔、念仏無間、律国賊」。簡単に言えば、真言宗は亡国の教えで禅は天魔の所業、浄土宗など念仏を唱える者は無間地獄に入り、戒律を説く僧は国賊ということだ。戦後、創価学会は“折伏”といわれる勧誘活動で信者を増やしてきたが、その折の他宗批判は激しいものだった。公明党の立憲民主への攻撃は、この他宗批判を彷彿とさせる。まさに政教一致。一般の有権者には理解できない姿勢だろう。
都内に住む40代の女性会社員は、こう語る。「私は立憲民主党の支持者ではないですが、ニュースで見た山口代表の演説は、ちょっとお粗末だなと思いました。『いっけん民主党』って何ですか。ダジャレで他の党をバカにするなんて、みっともないですよ。立憲民主党の支持者にも失礼でしょう。安倍さんの暴走を止めなかった責任は公明党にあるはず。他党の批判をする前に、反省しろと言いたい」
■「平和の党」の変貌
「平和の党」を自認してきた公明党は、安倍政権下で大きく変貌した。国民の知る権利を制限する特定秘密保護法、解釈憲法による集団的自衛権の行使容認、大多数の憲法学者が憲法違反を指摘した安全保障法制、一般人を監視対象とする共謀罪――。いずれも「戦争ができる国」への道普請だが、そのすべてに公明党は賛成し、一強=安倍独裁に手を貸した。一連の流れによって、戦後70年以上かけて日本が築き上げてきた平和国家の根幹が揺らぐ事態となっているが、その責任は自民党を支えてきた公明党にもある。創価学会の信者の中にも「公明党は変わった。平和の党の面影もない」と嘆く人もいるほど。議席死守に懸命となるのは勝手だが、子供じみた他党批判は、かえって票を減らすということに気付くべきだろう。