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僭越ながら:論

本当に改憲が必要ですか?

2017年10月13日 10:20

 報道各社による衆院選の情勢調査で、「改憲」を公約に掲げた自民党が、単独過半数(233)を大きく超える勢いを示していることがわかった。「加憲」などというごまかし言葉を使う公明党や、改憲に積極的な日本維新の会、希望の党の議席を加えると、国会の改憲派が改正発議に必要な3分の2(310)を優に超える勢力となる可能性が高い。本当に国民は改憲を望んでいるのか――。

■受け身の改憲論
 日々の暮らしの中で、強く「憲法を変えなければならない」と思うことがあるか?おそらく、大多数の国民は「NO」と答えるだろう。トレンドになりつつある“改憲”だが、この国は、根本的なところで大きな間違いを犯している。

 戦後70年以上、日本会議などの国家主義集団を除き、国民の側から「憲法の、この条文を変えてほしい」という声が上がったことはない。日々の暮らしを送る上で、何の必要もないからだ。報道機関の世論調査で改憲の是非を聞かれ、仕方なく答える、というのが現状だろう。いわば受け身の改憲論議なのである。

 そもそも憲法とは、権力を縛るための最高法規。解りやすく言えば、主権者である国民に対し、政治や行政が「やってはいけないこと」と「やるべきこと」を明記したものなのだ。ために憲法99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とある。

 しかし、昨今の憲法論議はすべて政治家主導。「尊重」「擁護」どころか、縛られる側の政治家が憲法99条を無視し、規律を緩めたくて議論を提示しているに過ぎない。従って、改憲提起の論拠も極めて曖昧だ。

■曖昧な改憲理由
 安倍首相をはじめ、右派陣営が口にする改憲理由は「国際情勢の変化」。とくに今回の総選挙では、北朝鮮の暴走にその根拠を求めるケースが多い。彼らは、世界各地でテロや紛争が頻発する中、自衛隊を「軍隊」として憲法に規定し、国防の方針を明確化するのだと主張する。だが、自衛隊はもともと専守防衛のための組織。憲法に明記しようとしまいと、その役割に変わりはない。無理のある拡大解釈で、すでに自衛隊の海外派遣も実現しており、「国際情勢の変化」とやらに付き合って憲法を改正する必要はあるまい。

 ならば、何のための改憲か――。結党以来「自主憲法制定」が党是である自民とは別にして、各党の考え方を公式サイトの記述から確認してみた。

【公明党】
「平和・人権・民主の3原則を堅持しつつ、時代の進展に伴い提起されている新たな理念・条文を加えて補強していく「加憲」が最も現実的で妥当な方式と考えます。例えば、環境権や地方自治の拡充など……」(公明党HPより)。

【日本維新の会】
「70年前に施行されて以来一言一句の改正も行われていない現行憲法を、時代の変化に合わせ、わが国が抱える具体的問題を解決するために改正する。わが党は、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置という3点に絞り込み憲法改正原案を取りまとめた」(日本維新の会HPより)。

【希望の党】
「憲法9条をふくめ憲法改正論議をすすめます。自衛隊の存在を含め、時代に合った憲法のあり方を議論します。たとえば、国民の知る権利を憲法に明確に定め、国や自治体の情報公開を進めること。地方自治の「分権」の考え方を憲法に明記し、「課税自主権」、「財政自主権」についても規定すること」

 “時代の進展”(公明)、“時代の変化”(維新)、“時代に合った”(希望)――。要するに、各党とも現行憲法は「時代」に合わないと考えているのだ。しかし、日本国憲法のどの部分が、この時代のどこに合わないのかについては説明されていない。「時代に合わない」という曖昧な言葉を便利使いしているだけで、じつは各党の改憲理由は明確化されていない。

 自民党の改憲理由も、穴だらけだ。同党の主張は、「憲法改正については、国民の幅広い理解を得つつ、衆議院・参議院の憲法審査会で議論を深め各党とも連携し、自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消など4項目を中心に、党内外の十分な議論を踏まえ、憲法改正原案を国会で提案・発議し、国民投票を行い、初めての憲法改正を目指します」(同党公式サイトより)。だが、憲法に明記しなくても自衛隊は国内外でその存在を認められているし、教育の無償化は現行法の範囲内で可能。参議院の合区解消にしても国会法や公職選挙法の改正で検討すべき課題であって、憲法に規定する必要はない。

■安倍の狙いは全体主義国家
 自民党の本当の狙いは9条2項の撤廃と、緊急事態条項の追加。日本を「戦争のできる国」にして、非常の際は、政府の権限で国民の生活や経済活動などの自由を奪うことができるような国家にすることである。

 ちなみに、緊急事態条項は、日中戦争が泥沼化する状況で制定された戦時法規「国家総動員法」と同じ発想に基づくもの。国家総動員法の第1条には「本法ニ於テ国家総動員トハ 戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ際シ国防目的達成ノ為国ノ全力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル様 人的及物的資源ヲ統制運用スルヲ謂フ」とある。戦争時やそれに準じる事態においては、国防のため、国民の人的、物的資源を政府が統制し運用するということだ。つまりは全体主義国家。安倍自民党が目指しているのは「個人より国家」が尊重される世の中なのである。

 安倍首相は2015年11月、参院予算委員会の閉会中審査の中で「緊急時に国民の安全を守るため、国家、国民自らがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置づけるかは極めて重く大切な課題だ」と明言。国家のためなら、国民の自由を奪うのは当然という考え方を明確に示している。これでも、安倍自民党を支持するのか?

■求められる国民主導の改憲論 
 重ねて述べるが、改憲を言い出すのは国民の側。政治主導で改憲を提起するのは間違いだ。国民の間に改憲への機運が高まった時、広範な議論を経て、国会発議に持ち込むべきだろう。主権者は国民。安倍に平和国家を崩す権利などない。



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