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総選挙結果にみる「一強」の実態

2017年10月24日 09:50

100_80712.jpg にっこり笑って「排除しますわよ」と言った小池百合子東京都知事が、国政の場から事実上“排除”されるという皮肉な結果となった衆院選。連立を組む自民・公明で改憲発議に必要な3分の2(311)を確保し、安倍晋三首相が、悲願とする自主憲法制定に向けての動きを加速させることは確実だ。
 だが、希望の党に一票を投じた有権者も含め、旧来の民進党支持者は安倍政権による改憲に大半が反対。改憲発議が実現したからといって、戦後70年以上この国の平和を守ってきた現行憲法が、すぐに書き変えられると考えるのは早計だ。
 選挙結果から、「一強」の実態を検証した。

◆実際には難しい「改憲」
 下の票は、今回の総選挙で各党が得た比例区の票。自民、公明、維新のいわゆる「改憲勢力」で約2,900万票。「護憲」の姿勢を鮮明にしている立憲民主、社民、共産の3党で約1,640万票だ。改憲派が圧倒しそうな数字だが、実際には拮抗する。公約に「改憲」を掲げた希望の党の約970万票すべてが、改憲を容認した有権者の票とは言い難いからだ。

改憲勢力.png

 いまや政界のはぐれ者となった小池氏や前原誠司氏、細野豪志氏らは改憲派だが、民進を離党して希望に合流した議員たちの多くは、安倍政権下での改憲を認めていない。例えば、福岡2区のケース。小選挙区で落選し比例復活した希望の公認候補は、選挙期間中「憲法に関する考え方は変わっていない」と明言。“安倍が主導する改憲”に反対する意向を示していた。民進離党組の主張は、ほぼ同じ。希望に投票した970万人の全てが、安倍政権下での改憲発議に賛成しているわけではない。むしろ、大多数が反安倍。有権者の半数近くが棄権していることを考え合わせると、国民投票で「改憲」が選択される可能性は低いと見るほうが自然だろう。

◆下がった自民の小選挙区得票率
 圧倒的な議席数を得た安倍政権だが、盤石の支持基盤というわけではない。下は、これまでの衆院選で各党の小選挙区候補が得た票のまとめと、今回の数字。たしかに、自民党は前回(平成26年)総選挙より票を伸ばしているが、これは、選挙年齢が18歳まで引き下げられたことで有権者の数が増えたせい。反自民の受け皿としてはベストだった立憲民主の公認候補が少なかったこともある。実質は減少。その証拠に、自民党の小選挙区得票率は前回の48.1から47.82へとわずかながら落ちている。

小選挙区29-1.png

小選挙区29.png

◆比例区では「立憲+希望」で自民を凌駕
 これが比例区の得票になると、安倍政権にとっては驚愕の結果であったことが分かる。前回の総選挙まで落ち込む一方だった民進党。分裂したとはいえ、「旧民進系」というくくりで考えると、希望と立憲の合計が自民党の得票を上回っている。「排除」などせずに、共産を加えた野党が一丸となって戦っていれば、安倍政権を倒せたのは事実。小池氏やその周辺の傲慢と無知が、安倍首相を救ったということになる。

比例得票1.png

比例29年.png

◆2割に満たない自民の絶対得票率
 今回の総選挙、自民党が小選挙区で得たのは約2,650万票,比例区では1,850万票しかとっていない。有権者は約1億609万人で、候補者や政党の得票数を有権者数で割った「絶対得票率」は、それぞれ25%、17%という数字になる。比例区に関して言えば、自民党は有権者の2割もつかめていないということだ。これが「一強」の実態なのである。



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