福岡のローカルテレビ局「RKB毎日放送」(正式名称:RKB毎日ホールディングス)が、本社に隣接する土地に予定されている民間企業のホテル建設計画に介入し、土地売却を持ちかけていたことが分かった。
問題の土地は、民間の特定目的会社が、ホテル建設を前提に購入した元市有地。RKBは、事業の許可権限を持つ市に対しホテル建設についての注文をつけた上で、コンサル業者を使って土地を売るよう、特定目的会社側に申し入れていた。
公共性が求められるテレビ局が、民間企業の仕事に横やりを入れた形。ホテル建設用地を巡っては、RKBの動きに合わせるように市がホテル建設にストップをかけ、土地の所有権が裁判で争われる事態となっている。(写真はRKB本社)
■ホテル建設 市の態度急変でストップ
問題のホテル建設用地は、市内早良区のRKB本社に隣接する海側の土地。市が開発し、事業者公募で選考された民間の特定目的会社が平成19年に市と売買規約を結び、所有権を取得していた。
(下の写真、手前の駐車場がホテル建設予定地。奥がRKB本社)
契約は、公有水面の埋め立てによって造成された土地であるため買い戻し特約付き。10年以内にホテル建設が出来なかった場合、市が買い取ることができる内容となっていた。
リーマンショックなどの影響で遅れていたホテル建設計画だったが、一昨年から再始動。進出するホテルも決まり今年度内にも建設工事が始まる状況となっていたところ、1月頃から市側の態度が急変し、「10年で買い戻し」という特約を盾に、特定目的会社に土地の明け渡しを要求したという。計画を進めていた特定目的外会社側は猛反発し、土地の所有権を巡る訴訟に発展している。
■業者使って土地売却申し入れ
RKBの動きが顕在化したのは、昨年秋。HUNTERの取材によれば、RKBから業務委託された東京都千代田区に本社を置く不動産の総合コンサル業者が、ホテル建設用地を所有する特定目的会社に対し、RKBに土地を売却するよう申し入れていた。イベントホール建設などを視野に入れた動きだったと見られている。
RKBが、本社隣に位置する土地に特別な関心を寄せていたことは確か。市への情報公開請求で入手した文書によれば、平成27年3月、RKBは事業を所管する市港湾局に対し、「弊社北側隣接地における開発計画について」と題する文書を提出し、周辺交通事情の悪化を理由に、ホテル建設計画に注文を付けていた。
市関係者の話では、福岡市が容認特定目的会社のホテル建設計画を容認していたのは昨年夏頃まで。その後、徐々に態度を変えたとされ、RKBが動き出した秋以降は買い戻しへと方向転換。今年1月から2月にかけては、事業中止の姿勢を鮮明にしていた。一連の流れを見ると、福岡市による特定目的会社からの土地買戻しに、RKBが関与した可能性が否定できない。
■RKBは事実上の「取材拒否」
公共性が求められるテレビ局が、民間事業者の計画に横やりを入れることはどう見ても不適切。RKBに対し事実確認するため、以下の2点を文書で質問した。
本社隣に位置するホテル建設用地に関して、RKBが市に要望書を提出していたのは、前掲した市の開示文書でも明らか。答えを渋るような話ではない。土地売却を持ちかけたことについても、隠す必要はないはずだ。だが、HUNTERの質問取材に対するRKB側の対応は、メールで送られてきた下の一文。容易に答えられる確認事項であるにもかかわらず、「回答を控える」という事実上の取材拒否だった。
市が開発した土地を巡る、地元テレビ局の不可解な動き。一部幹部が福岡市の“最高レベル”と親密だとされるRKBが、隣地の土地を手に入れるため、裏で行政に働きかけをしたのではないか――。そうした疑念が膨らむ状況だ。
ホテル用地を保有する特定目的会社は、HUNTERの取材に対し「係争中のため、何も話せない」としている。