任期満了に伴う霧島市長選の投開票が19日に行われ、4期目を目指した現職の前田終止氏(70)が、新人で元県議の中重真一氏(40)に惜敗するという波乱が起きた。落選した前田氏の28,892票に対し、中重氏の得票は29,455票。563票という僅差の勝負だった。
敗れた前田氏は、三反園訓鹿児島県知事(写真)との親密な関係で知られる人物。三反園氏の不義理に怒って知事の後援会を抜けたメンバーの中には、今回の選挙結果を受けて「昼間から祝杯をあげた」という人たちもいる。彼らが口をそろえて指摘するのは、三反園氏の人間性に関する問題。「今は話せない」としていた後援会のメンバーも、重い口を開き始めた。
就任から1年半を迎えようとしている三反園知事の周辺で、不満のマグマが噴出しようとしている。
■落選した霧島市長と三反園知事の関係
三反園氏の関連政治団体は、鹿児島県選挙管理委員会届出の「みたぞのさとし後援会」と総務省届出の「みたぞのさとし後援会 三訓会」。三訓会は資金集めの団体で、昨年7月の知事選で実働を担ったのは「みたぞのさとし後援会」だった。
選挙後、知事が初当選の原動力となった反原発派を一方的に切り捨てたのは周知の通り。候補者一本化のために結んだ「政策合意」も、事実上反故にされた状態だ。ただし、裏切られたのは反原発派だけではない。なんと、知事自ら就任を依頼した“後援会長”を辞任させ、集票部隊の主要メンバーも周辺から遠ざけたのである。「三反園は知事である前に、人として最低」(元後援会幹部)――選挙戦を通じて三反園氏を支えた多くの人々が、口をそろえて発する言葉である。
後援会の分裂を主導したとされるのは、東京都内に本社を置くコンサルタント会社の代表で元参院議員の秘書だったB氏。知事はこの元秘書B氏に「頭が上がらない」(元後援会幹部)とされ、実際、今も知事の後援会事務所を取り仕切っているのはB氏だという。
このB氏を三反園氏に紹介したのが霧島市長選で落選した前田氏。知事選当時の事情を知るある経済人は、こう話す。
「前田市長は表で伊藤さん(祐一郎前知事)の応援をしながら、裏ではBを知事に紹介したり、辞めさせられた後援会長に就任を依頼したりと、三反園支援を行っていた。後援会長のよからぬ噂を流したのも前田市長だったと聞いている。伊藤さんも3期で退場となったが、因果応報とはこのこと。市民に飽きられたのもあるが、悪い噂も少なくなかった。自業自得ということだ」
知事、前田氏、B氏のことについては、元後援会幹部が次のように証言する。
「三反園知事自身の口から聞いた話ですが、知事にB氏を紹介したのは、霧島市長の前田さんだったそうです。前田さんとB氏は昔からの関係。B氏は参議院議員の秘書、前田さんは県議だったから、当然付き合いがあったのでしょう。前田さんは、知事とB氏をつなげた張本人なんです。後援会の初代会長は知事周辺から難癖をつけられ、名誉を傷つけられましたが、悪い評判を言いふらしたのも、前田さんとその仲間。B氏も同じ穴のなんとかですよ。それもあって知事は、前田さんやB氏と縁を切れない。特にB氏は資金面の裏を知っているだけに、切ることはできないでしょう。選挙後のゴタゴタを心配した有力後援者から『Bを切れ』と言われた時も、知事は『できない』と突っぱねました。正式な秘書でもないB氏と知事との関係は、どう見ても不適切。噂通りにB氏が県政に口出ししているとすれば、そのうち大きな問題が起きる可能性もあります。」
■ざわつく知事周辺から新たな証言
気に入らない報道を行ったテレビ局の記者に対し、知事室で「BPO(「放送倫理・番組向上機構」)に訴えるぞ」と脅し不当な圧力をかけたり、県議会での質疑で、聞かれたことに答えず県職員に代弁させるなど傲慢な姿勢を露わにしている三反園氏。前田市長の落選でざわつく知事の周辺からは、知事に関する様々な話が漏れ始めている。閉ざされていた堅い口から語られるのは、知事の実像。取材結果については、来月初めの配信記事で詳細を報じる予定だ。