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「お前が国難」の証明 安倍政権下で急増した自衛隊機スクランブル

2017年10月30日 09:40

0-スクランブル2.jpg 安倍晋三首相が、「国難突破解散」とうたった今回の総選挙。野党の迷走で自民党の大勝に終わったが、ネット上では「お前が国難」「安倍難突破解散」などと揶揄され、街頭演説の情報があれば「国難来たる」「会いに行ける、国難」などと皮肉られた。
 じつは、こうした批判が単なる言葉遊びではなく、政権の本質を突いたものだったことが分かる資料がある。統合幕僚監部が公表した自衛隊機による緊急発進(スクランブル)回数の年度別推移だ。それによると、第2次安倍政権発足以降に強行された集団的自衛権の行使容認から安保法制、共謀罪法といった一連の戦争準備の裏で、中国やソ連の軍用機に対するスクランブルが急激に増えていた。

■スクランブルの実態
 平成27年5月、憲法解釈をねじ曲げて集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍首相は、記者会見の冒頭で次のように述べていた。

 平和安全法制を閣議決定いたしました。もはや一国のみで、どの国も自国の安全を守ることはできない時代であります。この2年、アルジェリア、シリア、そしてチュニジアで日本人がテロの犠牲となりました。北朝鮮の数百発もの弾道ミサイルは日本の大半を射程に入れています。そのミサイルに搭載できる核兵器の開発も深刻さを増しています。我が国に近づいてくる国籍不明の航空機に対する自衛隊機の緊急発進、いわゆるスクランブルの回数は、10年前と比べて実に7倍に増えています。これが現実です。そして、私たちはこの厳しい現実から目を背けることはできません。
 「スクランブルの急増」――集団的自衛権の行使容認を決めて以来、首相や政府自民党が度々使う話だ。スクランブルとは、わが国周辺を飛行する航空機を警戒管制レーダーや早期警戒管制機などにより探知・識別し、領空侵犯のおそれのある航空機を発見した場合に、戦闘機などを緊急発進させ、その航空機の状況を確認・監視する行為。実際に領空侵犯が発生した場合には、退去の警告などを行う。統合幕僚監部の公表した数字によれば、民主党政権下の平成21年度からスクランブル回数が増加に転じ、安倍政権に替わった24年度からは、さらに急激に伸びていた。この5年間の推移は以下の通りだ。

・21年度299回
・22年度386回
・23年度425回
・25年度810回
・26年度943回

 だが、安倍首相が述べてきた「10年前と比べて実に7倍」という主張は、スクランブル回数の比較としては過去の実態を無視したもの。“まやかしに近い”と言っても過言ではない。

 たしかに、26年度のスクランブルは943回で平成16年の141回に比べると7倍に近い数字となる。しかし、比較対象としたのが「10年前」の数字だというのがくせ者。この回数は、平成に入ってからの最低で、緊急発進が可能となったばかりの昭和30年代と同程度の水準なのだ。統合幕僚監部が公表した年度別緊急発進回数の推移のグラフを見れば一目瞭然である。

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 昭和50年(1975年)から平成元年(1989年)にかけては、ソ連機による領空侵犯などが頻発したためスクランブルが急増。昭和49年に300回程度だったものが、59年には944回と3倍以上に増えていた。59年の944回は、安倍首相が「10年前と比べて実に7倍」と言った26年度の943とほぼ同じ回数。比較対象をどの年度の数字にするかで、印象はがらりと変わる。正確さを担保するためには「80年代はじめと同じ程度」を加えるべきだろう。姑息な首相は、こうしたごまかしが得意だ。

■外交失敗の裏付け―解決策は?
 安倍首相が2度目の首相就任を果たしたのは24年(2012年)12月。以後、自衛隊機の緊急発進は3倍近くに達している。スクランブルの主な相手は北朝鮮機ではなく、中国機。米国べったりの安倍外交の失敗を物語っている。加えて、「ウラジミール」などとファーストネームで呼び合っているプーチン・ロシア機へのスクランブルも横ばい。北方領土問題が解決に向けて進展しているかのような宣伝のウソも見て取れる。

 なお、第1次安倍政権の平成18年(2006年)9月~翌年8月では、同じように19年(2007年)度に急増した後、安倍氏が政権を投げ出した翌20年度は急減していた。安倍政権の強硬姿勢に対する、周辺諸国の正直な反応と言えるだろう。

 安倍首相の憲法改正への執着、歴史修正主義的な言動が、東アジアの緊張を高めているのは確かだ。自ら緊張を高めておいて、危機を言い募り、その危機を突破するためにさらに緊張を高めるような言動を重ねる首相。まさに“マッチポンプ”である。解決策は振り出しに戻って、元凶を取り除くこと。すなわち安倍首相の退陣ということになる。



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