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聞いて呆れる「国難突破」と「一院制」 安倍も小池も非常識

2017年10月 6日 10:05

gennpatu 1864410760.jpg 突然の衆議院解散と、「小池劇場」に翻弄されるマスコミと国民。安倍首相が掲げた大義名分は「国難突破」で、“国難”とは北朝鮮危機のことだという。
 いつミサイルが飛んでくるか分からない状況は、たしかに戦後最大の危機。国難であることは確かだろう。しかし、国難を前に衆議院を解散し、危機管理体制に穴をあけることが許されるとは思えない。
 閑散とする国会をのぞいてみると、無責任な安倍首相と、現実が理解できていない小池新党を象徴する場所があった。

■政治不在 ― 国会の登院表示板が示す現実
 下の写真は、国会議員の登院状況を示す表示板。登院した議員の氏名にランプがつく仕組みだ。これが5日に撮影した「衆議院」の現状。当然ながら、解散によって衆議院議員は一人もいなくなり、氏名さえ記されていない。

0-1507090081678.jpg 下は参議院の表示板。やはり5日の状況だが、定数242でたった2人しか登院していない。衆院選の応援に回るため、ほとんどの参院議員が全国に散っているためだ。つまり、永田町は「カラ」。政治不在が現実だ。

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■「国難」に解散総選挙の矛盾
 さて、“北朝鮮危機”である。今年に入り、金正恩は9月15日の発射を含め計15回のミサイル発射訓練を行った。どう考えても、異常事態だ。予告なく日本上空を通過させた9月15日の発射は、昔なら“宣戦布告”ととられてもおかしくない暴挙だった。

 一気に日本国内の緊張が高まったが、それが今やどうか。森友・加計疑惑隠しの衆議院解散と小池新党の登場で、北朝鮮危機は忘れ去られた状態。大手メディアは連日、希望の党を軸に動く選挙情勢を追い回し、北朝鮮問題は脇に追いやられた格好だ。

 衆議院解散後も、北朝鮮国内ではミサイル発射の兆候が確認されており、10月10日の朝鮮労働党創建記念日あたりが、もっともその可能性が高いと複数の韓国メディアが報じている。その日は、総選挙の公示日だ。仮に、このタイミングで北朝鮮が暴走したら、一体どうなるのか。

 まず、危機管理上の問題だ。今月1日、安倍首相と菅義偉官房長官が二人揃って東京を不在にするという事態が起きた。首相は京都市の国際会議に出席、官房長官は北海道で選挙応援だったという。両人の不在は「4時間」だったとされるが、北朝鮮の暴走を完全に事前予測するのは不可能な状況。「国難」と叫びながら、政府中枢が地方に出て不在というのは矛盾している。安倍の「国難突破」が、モリカケ疑惑を隠すための便法であることは明らかだ。

 そもそも、本当の国難にあたって為政者が呼びかけるべきは「挙国一致」。日本が戦争に巻き込まれようという時に、右も左もあるまい。国難を前に選挙で政治空白を作り出すということこそが、まさに国難。上掲の写真が示すような永田町の現状では、政治が機能しないのだ。解散という安倍首相の選択は、国の安全保障上、絶対に避けるべきものだった。

■どうする!防衛出動の「国会承認」
 次に、北朝鮮危機への対応上の問題がある。「日本には自衛隊がいる」そう考える国民も多いはずだ。しかし、自衛隊という組織は、そう簡単に動けない。防衛出動と言う形で武力行使を行う際、踏むべき手順を防衛省に確認した。
内閣総理大臣が防衛出動を命じるにあたり、国会の承認が必要となる。なお、国会の承認に関しては、原則は事前承認だが、特に緊急の必要があり、事前に国会の承認を得る暇(いとま)がない場合は事後承認もできる」(防衛省の回答)
 自衛隊の防衛出動には、原則として国会の承認、つまり衆議院と参議院での承認が必要なのだ。

 前掲の写真に戻ろう。現在、解散によって国会は参議院だけ。防衛出動の国会承認を得るにあたっては、衆議院を省いて、参議院だけで防衛出動の是非が問われることになる。有事に際し、国会での慎重な議論が期待できるとは思えないが、参議院だけの議論で足りる話ではあるまい。

■本当の国難とは……
 「希望の党」はきょう正式に選挙公約を発表するが、結党と同時に打ち出した政策が「一院制」。選挙公約にも明記されるという。参議院が「衆院のカーボンコピー」と言われていることは事実だ。衆・参で与野党の議席比率が違っていれば、「決められない政治」に逆戻りする可能性もある。だが、民主主義に求められるのは広範かつ慎重な議論。スピード感が増す一方で、「独裁」を助ける一院制は、日本の民主主義を崩壊させる危険性の方が大きい。安倍や小池といった独裁的な手法を押し通す政治家が幅を利かす現状では、なおさらだろう。北朝鮮危機を前に、参議院だけという不安定な局面で、「一院制」を持ち出す感覚――。希望の党は、ズレているということだ。

 「国難突破」を掲げて解散に踏み切った安倍晋三。北朝鮮危機を目の当たりにしながら、政治空白を作る暴挙を、自民党や公明党は容認した。こんな連中に国防だの安全保障を語る資格はあるまい。一方、選挙戦で台風の目になると目されていた小池百合子の新党は、こうした事態の中で「一院制」などというトンチンカンな方向性を打ち出して、失笑を買っている。安保法反対を訴えていた民進党の議員たちは、議席のために政治信条を曲げ、安保法賛成に転じた。救いようのない愚か者ばかりの永田町。国難とは、まさにこうした政治の現状を指している。



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