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大事なのはカネとコネ 希望の党・候補者選考の舞台裏

2017年10月 4日 08:00

0-koike.jpg 小池百合子東京都知事が率いる「希望党」が3日、第一次公認の192名(比例単独1名)を公表した。半数以上を民進党の離党組が占める格好となったが、公認候補選考の舞台裏で、“しがらみ”だらけの醜い動きがあったことが分かってきている。
 例えば、福岡県の候補者選考は、まさにその典型。小池氏と関係の深い自民党議員がいる福岡6区では、民進の公認候補を引きずり降ろす形で擁立を見送った他、3区においては希望の党幹部による地元県議の一本釣りも顕在化。関係者から「小池とその側近は何様のつもりなのか」と、怨嗟の声が上がる始末となっている。
 「しがらみのない政治」どころか、カネとコネが物を言う候補者選考劇。希望の党と民進党関係者の証言から、その実態に迫った。(右は、「小池の実像」と題する読者投稿の1枚)
 
■「政策協定書」に見るヤクザの論理
 小池新党の実相を序実に示す文書が一斉に報道され、ネット上でも拡散される事態となっている。複数の内容があるが、下が最終的なものだという。

希望の党 小池百合子代表殿

政策協定書

 私は、希望の党の公認を受けて衆院選に立候補するに当たり、下記事項を順守すること、当選した場合には希望の党の所属する会派に所属して国会活動を行うこと、希望の党党員として政治活動を行うことを誓います。

 1、希望の党の綱領を支持し、「寛容な改革保守政党」を目指すこと。

 2、現下の厳しい国際情勢に鑑み、現行の安全保障法制については、憲法にのっとり適切に運用する。その上で不断の見直しを行い、現実的な安全保障政策を支持する。

 3、税金の有効活用(ワイズ・スペンディング)を徹底し、国民が納める税の恩恵が全ての国民に行き渡る仕組みを強化すること。

 4、憲法改正を支持し、憲法改正論議を幅広く進めること。

 5、国民に負担を求める前に国会議員が身を切る改革を断行する必要があること、および、いわゆる景気弾力条項の趣旨を踏まえて、2019年10月の消費税10%への引き上げを凍結すること。

 6、外国人に対する地方参政権の付与に反対すること。

 7、政党支部において企業団体献金を受け取らないこと。

 8、希望の党の公約を順守すること。

 9、希望の党の公認候補となるに当たり、党に資金提供をすること。

 10、選挙期間が終了するまで、希望の党が選挙協力の協定を交わしている政党への批判は一切行わないこと。

年 月 日

第48回衆院選 立候補予定者(署名欄)

 簡単に言えば、「安全保障法制と改憲への反対は許さない」「公認がが欲しければ、上納金を払え」「日本維新の会への批判は許さない」ということ。前提になるのは“小池氏とその側近への絶対的な服従”だ。小池氏や若狭勝、細野豪志両前衆院議員が気に入らないことをしゃべろうものなら、「リベラル」の烙印を押され、追放されることになる。黒いものでも小池氏が白と言えば「白です」と言えというわけ。「黒いカラスでも、親分が白いと言えば白」――ヤクザ映画によく出てくるフレーズだが、希望の党は方針はこれと同じ。聞こえの良いことばかり並べたてているが、小池氏の周辺ではヤクザ組織同様の論理がまかり通っている。

■非常識な上納金要求
 さらに非常識なのは、党への資金提供という形で、これまたヤクザ組織同様の“上納金”を強制している点だろう。希望の関係者に聞いたところ、候補者に必要とされるのは、前職組が800万円、新人が700万円。内訳はこうだ。まず、小選挙区の供託金が300万円。次に重複立候補のための比例区の供託金が300万円。これに前職は200万円を、新人は100万円を希望の党に「寄附」しなければならない。小選挙区の供託金は勝てば返ってくるものの、党に出した比例の供託金や希望への寄附は出しっ放しになる可能性が高い。一般的に、供託金に充当できる程度の資金は、公認を出した党側が支給するのが普通。希望の党の上納制は、異例中の異例と言えよう。

 問題はまだある。民進離党組は、すでに民進党本部からかなりの活動資金をもらっている。しかし、希望への寄附200万円は個人名が筋。工面の仕方を間違えれば、叩かれる可能性もある。また、選挙前の政治活動と選挙運動に数百~千万単位の資金が必要となるため、資金繰りに苦しむ候補者は少なくないと見られている。資金の手当てを受けていない希望のプロパー候補も同様の条件だとされており、そちらはさらに厳しい状況。「金持ちしか出れない」(永田町関係者)というのが希望の党の実態だ。

f1f71259198209864e951450c7f032bbfdd39114-thumb-autox346-19298.png ■カネとコネで公認決定
 「しがらみのない政治」も真っ赤な嘘だった。東京2区から希望公認での出馬が決まったのは鳩山太郎氏。故・鳩山邦夫氏の長男で元都議という経歴ながら、数年前にはテレビ番組で「ニート」であることを告白したという変わり種。政界では「終わった人」という見方が大半だった。それが真っ先に公認決定。邦夫氏と小池氏の深い関係があったればこそだ。

 福岡6区の候補者選考では、もっと酷いことをやっている。邦夫氏の死去に伴う昨年の補欠選挙で初当選した邦夫氏の次男・鳩山二郎氏は自民党の公認候補。当然対抗馬を出すべきだが、民進党の公認が決まっていた女性候補には希望の公認を出さないという。理由は「小池さんと鳩山家は仲がいいから」(希望の関係者)――。昨年の補選では、小池氏が二郎氏の応援に駆け付け話題になった。永田町では「鳩山サイドが、カネは出すから、鳩山由紀夫の長男を希望の党から出馬させてほしいと頼んでいる」という噂もある。

 民進党離党組で希望の公認をもらうのは、小池、前原、細野と近い人間だけだ。福岡3区では、民進の公認候補を調整の過程ではじき、同候補の選対幹部を務めていた若手県議を擁立しようとしたが、地元から猛反発をくらって県議が出馬を撤回する騒ぎに。県議が結婚式に招待するほど親しかった細野氏に一本釣りされたと言われており、ここでも“しがらみ選考”をさらけ出す結果となっている。

■蠢く右翼政治家
 九州の候補者選考を巡っては、極右の政治家が蠢いている。過激な発言で自民党を追われた中山成彬元文相だ。日本軍の強制による従軍慰安婦も南京大虐殺もなかったと主張してきた筋金入りの極右。2008年に国土交通大臣に就任した折は、「日教組解体」「日本は単一民族」などと言う問題発言を連発し、3日でクビになったという経歴の持ち主である。九州で希望の党の公認を蹴ったある出馬予定者は、中山氏から「小池の言う通りに動くこと。政治資金を提供すること。安全保障法制に反対しないこと」などの条件を突き付けられ、即座に公認を辞退したという。「九州は俺がまとめる」と豪語している中山氏に対し、ある民進党関係者は「虎の威を借る狐。この人が九州比例の上位になるようなら、希望の党は極右の政治集団として認識され、大幅に票を減らすだろう」と話している。

■「仕組んだのは前原」
 ドロドロの民進内対立は、じつは前原氏の思惑通り。選別、排除が進む現状を嘆くそぶりの前原氏だが、じつはニンマリしているとある民進党の議員は言う。「前原の思惑通りに事が進んでいる。前原は、代表選で対立した枝野氏らを排除したかっただけ。リベラル排除は希望側の方針という形になっているが、前原もグル。党を売り渡したとの指摘は事実だ。加えて細野はもともと前原の子分。前原、細野、小池が仕組んだリベラル潰しなんだ。だから、立憲民主党の候補者には刺客を送る。裏はドロドロ。改憲派の茶番劇に過ぎない。希望の党は、しがらみだらけのインチキ政治集団だ」。こうした見方を裏付けるように前原氏は3日、報道陣に対し、立憲民主党の設立という形で民進が分裂したことについて、「全てが想定内」と本音を漏らしている。



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