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小池「希望の党」への絶望

2017年10月 2日 08:35

0-小池.png 憲法改正も安保法も集団的自衛権の容認――これが「希望の党」というなら、小池百合子東京都知事らが目指すのは、「戦争のできる国」ということになる。そこに「希望」などあるはずないが、それでも民進党の議員たちは同党の公認が欲しいのだという。つい最近まで「安保法反対」を叫んでいた民進党の議員たちに、政治家としての矜持はない。
 一方、排除の論理で公認候補を「絞り込む」という小池氏とその側近。「(民進党の候補者の)全員を受け入れることなど、さらさらない」と突き放す小池氏の居丈高な態度は、党の綱領に掲げた「寛容」とは真逆のものだ。
 日本維新の会とも連携することが明らかとなった小池新党が、どうやら安倍自民と同じ右翼的、全体主義的体質の政治集団であることが見えてきた。

■「しがらみのない政治」の欺瞞
 小池知事は「しがらみのない政治」を強調する。では、“しかがみ”とは具体的に何を指すのか?「しがらみ」の語源は「柵」。 水の流れをせき止めるために、川の中にくいを打ち並べて、それに木の枝や竹などを横に結びつけたものだという。転じて、引き留め、まとわりつくもの、じゃまをするもの。人間は大なり小なりしがらみの中で生きているものだが、小池氏が言うしがらみが何なのか、まるで見えてこない。そもそも、しがらみだらけの世の中で、それを調整するのが政治。アメリカの政治学者ロバート・ダールは「人間が二人いれば、そこに政治がある」と述べている。この世に、「しがらみのない政治」などあるはずがない。

 あえて言う。小池氏は1年前に都知事になったが、「東京を変える」という都民との約束は、国政を目指す彼女にとっては最大の足かせ。これほどのしがらみはあるまい。一方、民進党の議員たちにとっては「特定秘密保護法や安全保障法制を廃止し、憲法違反である集団的自衛権の行使容認を撤回させる」という国民との約束こそ、しがらみだろう。なくしてはならない“しがらみ”も、ある。

■「リベラル」について
 小池氏は、憲法改正と安保法に反対する政治家は「排除する」と明言した。それは、リベラルの否定だ。リベラルとは本来「自由主義」を指す。自民党の英語表記は「Liberal Democratic Party(リベラル デモクラティック パーティー)」。自民党の中には、少数ながら安倍政治を批判してきた議員がいるが、今回の総選挙では公認を受けている。自民党には、多少なりとも「寛容」さが残っているということだ。

 これに対し、小池氏や細野豪志氏の方向性は“リベラルの排除”。安倍政権以上に危険な政治集団だということを示している。国民が嫌悪してきたのは、自由にモノを言う事すら許さない安倍首相の姿勢ではなかったのか?

 リベラルについてはもう一点、気になることがある。ここ数日の報道番組やワイドショーを見ていると、安保法や改憲に反対する人のことを、共産党も社民党も含めた形で「リベラル」だと決めつけているケースがほとんどだ。リベラルと左翼は違う概念。混同するのは間違いだろう。自民党のリベラル派が左翼だという指摘など聞いたことがないし、正確さを求めるなら、かつて使われた「タカ派」「ハト派」の方がスッキリする。もっと解りやすく言えば、「平和主義」か「軍国主義」か、という視点で区別すべきだろう。マスコミの誤用は目に余る。

■排除の論理―安倍の「こんな人たち」に通底
 「民進党の全員を受け入れることは、さらさらない」「(安全保障、憲法改正で一致しない者は)排除する」――。そう明言した小池氏。一体、何様のつもりなのか。民進党は、昨年の参院選比例区で、自民党に敗れたとはいえ約1,175万票の支持を得た政党だ。「民進」と書いた有権者の多くは、特定秘密保護法や集団的自衛権、安保法、改憲といった一連の右寄り路線に反対する意見の持ち主ではないのか。つまりは、リベラル。小池氏は民進党の議員だけでなく、リベラルを志向する国民を「排除する」と言ったに等しい。これは、都議選の街頭演説で、批判する声を上げた人たちを指さし「こんな人たち」と暴言を吐いた安倍首相の姿勢に通底するものだろう。排除の論理を振りかざす細野豪志という男も同じ。彼は、つい最近まで「安保法反対」を掲げる民進党の代表代行だった男。「恥を知れ」と言いたい。

 それにしても、小池氏の独裁的手法はあまりに酷い。予兆はあった。都議選後、都民ファーストの代表が小池氏から野田数氏に変わり、つい最近小池氏の元秘書で都議に当選したばかりの荒木千陽氏に交代した。新代表は、小池氏を含むたった3人の幹部が決めたとされ、密室選考に内部からも批判が出ていた。さらに、都民ファーストの都議たちには、個別の取材を受けることが禁じられており、いまもその状況が続いている。権力で批判を抑える手法は、安倍政治と変わりあるまい。排除の論理、リベラルの否定、言論統制……。まるで北朝鮮や中国である。

■民進党よ、筋を通せ
 民進党の衆議院議員たちが、総選挙を前に、藁にもすがる思いだったことは確かだ。だからといって、自らの政治信条やこれまで訴えてきた主張をかなぐり捨て、一首長に過ぎない小池氏の門前に馬をつないでいいのか?

 下は、安倍政権の足跡だ。特定秘密保護法、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認、安全保障法制、TPP、共謀罪――。民進党は旧民主党時代を含めて、安倍政権による数の暴挙に対し、一貫して「反対」の立場をとってきた。それが、議席がかかる局面になったとたん、「憲法」と「安保」で選別するという小池新党の「踏み絵」を、喜んで踏もうというのでは筋が通るまい。

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 野田佳彦元首相は、「三権の長の経験者はご遠慮願う」と言った細野豪志の言葉を捉え、「股をくぐるつもりなどない」と言い切った。排除される予定の「リベラル派」は、小池右派新党への合流をよしとせず、新党を結成するという。筋が通っている。ガンバレと声を上げたい。政治家にとって最も大切なのは、自らの政治信条を貫くこと。バッジの有る無しに関係なく、信念に従って生きるのが「政治家」だからだ。

 希望の党は、原発ゼロ、消費増税凍結という有権者にとっては聞こえの良い政策を打ち出した。しかし、基本理念は「改憲」と「安保法」大賛成。「しがらみのない政治」も「寛容」も嘘だ。安倍政治以上の息苦しい政治を、国民は本当に望むのだろうか。



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