「希望の党」「立憲民主党」と新党の設立が相次ぎ、総選挙の構図が固まった。自民・公明VS野党に違いないが、台風の目になると見られていた希望の党は、小池百合子代表(東京都知事)の「排除」発言で、スタート時の勢いを失いつつある。
肝心なのは「公約」の中身だが、憲法や安保法制への対応に注目が集まる一方、日米関係と安全保障といった国の根幹にかかわる沖縄の基地問題については、何も語られていない。この国は、どこまで沖縄に冷淡なのか――。
■相次ぐオスプレイの事故
昨年12月、沖縄県名護市沿岸に米軍普天間基地所属の新型輸送機オスプレイが墜落した。本土メディアの報道では「大破」「不時着」などという見出しになっていたが、どう見ても墜落。機体はバラバラの状態だった。墜落地点は、普天間飛行場の移設先となっている同市辺野古と大浦湾を挟んだ安部(あぶ)の海岸付近。沖縄県民に大きな衝撃を与えたのは言うまでもない。
普天間飛行場のオスプレイ
当然、米軍はオスプレイの運用に慎重になるものと思われていたが、さにあらず。今年9月までの間に、普天間基地所属の同型機が相次いで事故を起こす状況となっている。他の航空機ならあり得ない事態。操縦が難しいと言われるオスプレイは、機体そのものに欠陥がある可能性が高い。
これが本土に関係することなら大騒ぎ。改めて辺野古移設の是非が、総選挙の争点になってもおかしくあるまい。しかし、安倍晋三首相が解散を表明して以来、本土メディアが希望の党の小池代表に、辺野古移設の是非について確認を求めたという記事は見たことがない。
■辺野古には無関心の小池新党
4日、希望の党本部に電話を入れ、普天間飛行場の辺野古移設について、同党がどのような方針で臨むのか聞いた。返ってきたのは「決まっていません」の一言。公約発表まで何も答えないのだという。しかし、この日までに明らかとなった同党の公約の柱は、憲法改正、消費増税の凍結、国会議員定数と歳費の削減、原発ゼロなど9項目。基地問題には一切触れていない。辺野古移設は沖縄ローカルだと考えている証拠であり、それは小池氏ら同党幹部が、この国の安全保障に関する本質的な問題を理解していないことの表れだ。
もっとも、憲法改正や安保法も認めるという同党のこと、辺野古移設に反対するはずがない。小池氏は辺野古移設を推し進めた元防衛相。期待もしていなかったが、それにしても公示まで6日という時点で「決まっていない」はお粗末すぎる。「三都物語」と言うだけあって、彼女が関心を持っているのは大都市のことのみ。当然、沖縄県民の思いなど忖度しない。
■置き去りにされる沖縄の民意
大手メディアも冷淡だ。テレビや新聞の記者が、希望の党の関係者に「辺野古移設はどうするのか」という問いかけをした場面は皆無。沖縄県では基地問題が最大の争点だというのに、本土は民進の分裂劇ばかり追いかけている。日本国内にある米軍基地の7割超を引き受けているのは沖縄だが、この国の安全保障に最大の寄与をしている地域には何の配慮も示されない。
埋め立て工事が進む辺野古沿岸。奥がキャンプ・シュワブ
沖縄では、2014年1月の名護市長選、11月の知事選と辺野古移設反対を唱える「オール沖縄」が完勝。前回の総選挙と昨年の参院選では、すべての自民党候補が敗れている。同県の民意が「基地移設反対」であることは明らかだ。しかし、安倍政権はこれを無視して辺野古での基地建設を強行しており、現在もキャンプ・シュワブのゲート前で反対派の抗議活動が続いている。沖縄と本土の民主主義は別物とでも言うのか?
小池さんは「希望の持てる国」を目指して国政政党を立ち上げたと胸を張ったが、これまでの対応を見る限り、辺野古移設に反対するつもりはなさそうだ。“沖縄には希望はないのか”と問いたい。