やっぱり、国家戦略特区は“お友達”に甘かった。
国家戦略特区を活用した事業の一環として今年4月から福岡市で運行されている「空港アクセスバス」の導入をめぐり、今年開かれた国家戦略特区区域会議や同諮問会議で、認定の是非に関する話し合いが行われていなかったことが両会議の議事録から分かった。
事業者の経営実態や将来性についても一切議論されておらず、結論だけを確認した形。首相に近い高島宗一郎市長とつながりの深い企業が、優遇された可能性がある。
■“結論ありき”の特区認定
福岡市への情報公開請求で入手した資料によれば、福岡市が特区認定を申請した空港アクセスバスについての政府内での議論は、今年1月27日の国家戦略特区ワーキンググループ、2月10日の同区域会議、2月21日の同諮問会議の計3回。このうち、ワーキンググループの議事録は作成されておらず、区域会議と諮問会議の議事要旨だけが公表されている。
議事録(要旨)の記述を追うと、2月10日の区域会議には高島市長が出席。福岡市が進める空港アクセスバスを含む4つの特区案件について説明したあと、何故か空港アクセスバスの運用申請を行っている企業の代表者を紹介し、挨拶させていた。
馴れ合いの特区認定をうかがわせるのは、この時の企業代表者が発した挨拶の内容。議論はこれからだというのに、すでに空港アクセスバスの運行が決まったかのような物言いになっていた。(以下が代表者の挨拶)
「ロイヤルバスの●●と申します。今回、我々が空港アクセスバスの運行に関する特例を活用して、路線バス事業に新規参入し、福岡空港のアクセスバス運行を開始させていただくことは、大変名誉あることだと思っております。運航開始は今年の4月を予定しており、新しいバスサービスによって福岡を訪れる皆様の利便性向上に努めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします」
この日の区域会議における空港アクセスバスについての話は、前述した市長の説明とロイヤルバス会長の挨拶のみ。会社の内容や詳しい計画についての議論はなく、同日の会議で提案されたすべての事案があっさり承認されていた。まさに、アリバイ作りのための会議だったということだ。21日の諮問会議も同様。空港アクセスバスについての議論は一度もなく、区域会議の決定事項を追認して日程を終了していた。
結局、福岡市が業者側の相談を受けた昨年9月から特区認定を受けた今年2月まで、空港アクセスバスを運行する会社の経営実態について検証した記録はなかった。
前稿で報じた通り、民間の調査機関による調べでは、福岡市で空港アクセスバスを運営している会社の昨年7月決算期の売上は約5億3,000万円で3億2,000万円以上の赤字。直近4年の売上は約1億6,000万円から7億までと幅が大きく、平成25年7月期に約1億円の赤字、26年同期にも約5,300万円の赤字を計上していたことが分かっている。黒字は一昨年だけ。バス路線を維持する体力に、疑問が生じる経営状況と言うしかないが、こうした企業実態は無視された格好だ。
福岡市が戦略特区ワーキンググループに正式提案(1月27日)してから、特区諮問会議の結論(2月21日)が出るまで、わずか26日間。異常な早さは、結論ありきだった加計学園のケース以上だった。
■膨らむ疑問
仕組まれた特区認定ではなかったのか――。疑問が膨らむ中、HUNTERが注目したのは2月10日に開かれた戦略特区区域会議での一コマ。高島市長がロイヤルバスの代表者に挨拶を促した場面だ。議事録の記述は、次のようになっていた。(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)
じつは、この時の「社長」という呼び方は、正確に言うと間違い。ロイヤルバスの登記や福岡市の行政文書を確認してみると、空港アクセスバスの特区認定に向けて福岡市や“市長の知人”が、かなり無理な形で準備を進めていたことが分かる
(つづく)