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小池劇場 振り付けは小沢自由党代表

2017年9月28日 09:00

gennpatu 1864410756.jpg 安倍晋三首相の目論みが、完全に外れる情勢となってきた。小池百合子東京都知事が電撃的に立ち上げた国政政党「希望の党」が、立党から間髪入れず民進党との連携に合意。小池氏が一気に総選挙の主役に躍り出た。
 毎日新聞が27日までに実施した世論調査では、比例区の投票先を希望と答えた人が「18%」、民進と答えた人の「8%」と合わせると自民党の「29%」に迫る勢いとなっている。
 安倍首相の解散表明を受けてのドタバタ劇と見えなくもないが、じつは小池氏を軸にした政界再編への動きは、周到に準備が進められてきたもの。仕掛け人は誰かと取材してみると、浮かび上がってきたのは、やっぱりあの「剛腕」の存在だった。

■小池代表、前原代表代行、小沢選対本部長
 希望の党と民進党が合流する話ばかりが先行しているが、現段階で最も可能性が高いのは「オリーブの木」方式。野党勢力が結集して、小選挙区で候補者を一本化。別に政治団体か政党を設立し、比例代表を「統一名簿方式」で戦うというものだ。自由党の小沢一郎代表が提唱してきたイタリア発祥の選挙手法である。今回の場合は、民進党の小選挙区候補が離党するなどして希望から立候補。比例区は、民進に党籍を残して希望で立候補する形が有力視されている。時間的に見て、「解党」は無理。民進党の政治資金を希望に移すには、このやり方しかない。

 永田町では、「小池代表、前原代表代行、小沢選対本部長」(民進党議員の話)を期待する声も。民進党の支援母体「連合」も“保守”を嫌がる旧総評系と希望が提示した“原発ゼロ”に猛反発している電力総連以外は、希望と民進の合流に賛成。すでにゴーサインを出している。離党者続出で青息吐息だった民進党の衆議院議員たちも、勝利の予感に笑みを漏らす状況だ。

■「剛腕」復活
 仕掛け人が小沢自由党代表であることは、衆目の一致するところ。ある民進党議員によれば、小沢氏が早い時期から水面下で動き、前原、小池両氏と連携。早期解散を睨んで、小池新党立ち上げのタイミングを指南してきたのだという。さしずめ振り付け師は小沢一郎、主演・小池百合子、助演・前原誠司といったところだ。

 1993年(平成5年)、小沢氏は羽田孜氏ら旧竹下派のメンバーと立ち上げた新生党を軸に、日本新党や新党さきがけ、社会党・公明党・民社党・社会民主連合・民主改革連合の各党派を結集させ細川護煕を首班とする非自民政権を樹立させた。連立を組んだ各党は新進党を結党するに至るが、小沢氏の下にいて権力闘争のイロハを学んだのが小池都知事だった。その小池氏と前原氏とは日本新党時代からの仲。小沢‐小池‐前原という人間関係が、ここに来て生きたということになる。一連の動きを主導したのは、間違いなく小沢自由党代表である。

 小池氏も小沢氏も、非自民勢力を結集して政権奪取につなげるという成功体験の持ち主。さらに小池氏は、小泉純一郎元首相のそばで抵抗勢力を作り出して自分を際立たせる術も身に着けた。小池氏は自身の体験を存分に活かし、都知事選と都議選で勝利を収めており、その勢いは衰えていない。男女の剛腕政治家に加え、一定の政治基盤を持つ民進党の代表となった前原氏。これで一気に選挙態勢が整った形だ。

■ゴタゴタ続く民進党内
 問題は、民進党内の左派が納得するかどうか。旧総評系や電力総連といった労組をバックに当選してきた議員にとっては、“保守”も“憲法改正”も、“原発ゼロ”も容認できない概念。特に参議院にはそうした議員が多い。27日の夜に開かれた同党の参議院議員総会では、左派系の議員たちから前原執行部への厳しい批判が続出。きょう午後に予定される両院議員総会まで、予断を許さない状況となっている。

 ただし、敗色濃厚だった衆議院組は藁にもすがる思い。いったんできかけた流れに、逆らうとは思えない。残るのは、民進党の政治資金を、どうやって希望の党に持ち込むかという技術的な話だけになる。「無所属で戦う」としている前原氏が、党内をまとめ切れるかどうかだ。

■安倍・麻生の誤算
 こうした事態を招いたのは、突然の解散を決めた安倍首相と解散を進言したという麻生太郎副総理。民進や小池新党の準備不足を衝いたつもりが、野党再編を加速させ、誰も想像すらしなかった「政権選択選挙」に持ち込まれた格好だ。「安倍一強」は、もはや死語。憲法改正に必要な3分の2どころか、自民の単独過半数を脅かされる状況となりつつある。小池―小沢ラインの結びつきを甘く見た末の失敗。誤算のツケは大きなものとなりそうだ。



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