加計疑惑や自衛隊の日報問題をリセットするため、衆議院の解散を決めた安倍首相。政権の隠蔽姿勢が、国政を歪めているのは確かだろう。情報公開の重要性が叫ばれて久しいが、現実には後退する一方だ。
地方も安倍政権に右へ倣え。特に全国の首長でもっとも首相に近いと言われる福岡市の高島宗一郎市長は、「情報発信」は大好きだが、「情報公開」は大嫌い。政権同様、特区絡みの情報を出し渋る構えを見せている。何故か――。
(写真は福岡市役所)
■形骸化する福岡市の情報公開
高島市長の就任後、福岡市役所で著しく後退したのが情報公開の姿勢だ。市にとって都合の悪い案件に関しては、正当な理由もなく開示決定期限を延長することが常態化。さらには、あるはずの文書を「ない」と強弁し、存在を指摘されて渋々開示に応じるというケースさえある。条例を無視した恣意的運用で、福岡市の情報公開制度は形骸化している。
積極的に説明責任を果たそうという意欲も感じられない。国や他の自治体が窓口での情報開示を実施する場合、所管課の職員が立ち会い、当該文書について尋ねられたことに答えるのが普通。かつては福岡市も同様の対応をしていたのだが、ここ数年で情報公開室に開示する文書を投げ込み、要望しなければ顔も見せない状況になっている。
■「国にお伺い」で開示決定期間延長
そうした中、福岡市が、ある情報公開請求で「自治」の原理原則を疑わざるを得ない対応を見せて、政権にへつらう姿勢をさらけだした。HUNTERが請求したのは、今年4月から導入された空港アクセスバスの関連文書。空港アクセスバスは、国家戦略特区を利用した“特例”の事業だ。現行で認可が必要な運賃を「届出」で済ませ、30日前に届出が義務付けられた運航計画を「7日前」でOKにするという、バス事業者にとってはありがたい内容。特区申請したのは福岡市だが、制度を活用しているのは民間企業である。その企業に市関係者の注目が集まっていることから、空港アクセスバスの導入と事業者選定の経緯が分かる文書を請求していた。大した分量ではないはずの該当文書だが、市側の対応は下の「開示決定期間の延長」だった(赤い囲みはHUNTER編集部)。
延長の理由は「対象公文書が国と関連するものであるため、国との調整に時間を要しており、期間内に決定を行うことが困難であるため」――。所管課の総務企画局企画調整部は、国にお伺いを立てなければ、開示決定できないという。
おかしな話である。国家戦略特区に関する事業であることは確かだが、文書を保有しているのは福岡市。国の判断と市の判断は別だろう。なにより、福岡市は独立した行政機関。「自治」の原則からいっても、保有文書の開示・不開示を決めるのに、国の都合を聞くのは間違いだ。情報保護の観点から意見を求めるべきは民間企業や個人。国が絡むからと言って一々お伺いを立てていては、地方自治体の保有文書は国の保有文書に等しくなってしまう。市側に抗議したが、既に期間延長を決定済み。聞く耳持たずといったところだ。一体何を怖がっているのか?
■注目集める「おともだち」
市側が空港アクセスバスの情報開示に慎重になるのは、この事業が加計学園の獣医学部新設と同じ「おともだち特区」の典型例だからだ。空港アクセスバスを運用している企業の代表者は、高島市長に近い人間。市議会で関係を聞かれた市長は「知人」と逃げたが、世間一般では「おともだち」と呼ぶのが普通の付き合いがあることが分かっている。しかもこの代表者については、自身の会社の事業資金を巡って東京や福岡で警察への被害相談が相次ぎ、告訴状が出されていたことも分かっている。注目が集まるには、それなりの理由があるということだ。
福岡市の情報公開が後退しているのは、大半の報道関係者が認めるところ。後ろ向きになっている理由が、国ではなく市長と「おともだち」の関係にあるのだとしたら、まさに“行政が歪められた”ということになる。