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北朝鮮危機に衆院解散 疑惑隠しで国政私物化

2017年9月19日 08:45

1-官邸HP.png 国民に何を問おうというのか――。大義も争点も見当たらないところを見ると、やはり疑惑を隠すための総選挙なのだろう。
 安倍晋三首相が、9月28日召集の臨時国会冒頭で解散に打って出る可能性が急浮上、永田町もマスコミも総選挙に向けて走り出した。
 北朝鮮がミサイル発射や核実験などを繰り返し、深刻な脅威をもたらしている中での政治空白。事あるごとに「国民を守る」と言い続けてきた宰相の言葉が、虚言だったことは明らかだ。

■避けたかった「追い込まれ解散」
 森友、加計の両学園問題で窮地に立った安倍首相。自分と妻に向けられた疑惑だけに、ズルズルと時間が過ぎて再び支持率が下がれば、党内から辞職を迫られてもおかしくない状況だった。
 救いの神は「北朝鮮」と「民進党」。 金正恩がミサイル発射や核実験を繰り返したことに加え、山尾志桜里元政調会長の不倫騒動で、若干ながら支持率が上向いていた。
 小池新党も結党前。一番避けたかったのは“追い込まれ解散”だけに、今を千載一遇のチャンスと見たのだろう。

 戦後の総選挙は26回。このうち任期満了によるものは、わずかに1回。三木武夫が首相だった1976年(昭和51年)のロッキード選挙である。党内抗争が激化して「解散権」を縛られた末のことだった。
 任期満了ではないが、同様に解散権の行使を封じられた首相として宮澤喜一(解散:1993年6月)、麻生太郎(解散:2009年7月)がいる。

 ちなみに、この3回の選挙は自民党の惨敗。とくに1993年の選挙では過半数を割り、細川(護熙)連立内閣の成立を許して自民党が下野。麻生政権時の2009年の選挙では、歴史的な敗北で旧民主党に308議席を奪われ第一党の座から滑り落ちている。
 安倍にとって、追い込まれた形となる「来年の総選挙」は選択肢になかった。
 
■大義も争点もない選挙
 伝家の宝刀(解散権)は、抜く機会があってこそ生きるもの。そこで重要なのは大義名分だが、今回の解散にはその大義名分どころか、争点さえ見あたらない。解散は、時の首相が国民に信を問う行為。国会論戦も始まっていない時点で、有権者に問うべきものがあるはずがない。消費増税の是非やアベノミクスをを争点化するのも無理。消費税10%への引き上げは、すでに2度延期して選挙のネタに使っている上、何年たっても実感の伴わないアベノミクスは死語になりつつあるからだ。
 ここで、安倍政権下で行われた国政選挙を振り返っておきたい。

1-選挙.png

 安倍政権が3回の国政選挙で争点に掲げたのは、アベノミクスと消費増税先送りの是非。改憲や安保法、集団的自衛権の行使容認などには触れず、経済政策アベノミクスの継続を問う形で選挙を戦っていた。
 増税賛成の声が少ないことを睨んだ、大衆迎合的政治手法で自民は圧勝。争点隠しが功を奏したのはもちろんだが、野党、とりわけ旧民主党の不人気に助けられたという側面もある。

 しかし、前述したように今回の選挙では同じ手が使えない。安倍の経済政策は、しょせん金持ち優遇。一般庶民が何の恩恵も受けていないことは、増えることのなかった給与の額が如実に物語っている。「増税分を社会保障費に」などという消費税絡みの公約が出てきても、国民がスンナリ受け入れることはないだろう。憲法改正を前面に押し出せば、自民党の大敗は必至。森友・加計をごまかすだけの材料がなく、ただの信任投票になる可能性が高い。

■そこにある北朝鮮危機
 そもそも、国が戦後最大の危機を迎えている現状で、解散総選挙など許されるはずがない。北朝鮮の暴走は、予測不能の状態となっており、いつミサイルが飛んでくるか分からないというのが実情だ。かつてはミサイル発射前に予測されていたが、ここ数回、ミサイル発射が公表されたのは発射された後。上空を通過する頃になってJアラートを発している。政府の危機管理が追い付いていないということだ。

 仮に臨時国会の冒頭で解散したとすれば、来月10日公示、22日投開票の線が濃厚だ。その10月10日は、朝鮮労働党の創建記念日。北朝鮮が、ミサイル発射か核実験を行う可能性がある。衆議院の解散後、国会の場で対応にあたるのは参議院だけ。選挙一色となった国内で、Jアラートの警報音が鳴り響くことになる。

 混乱が予想される中、衆議院を解散するというのは「国益」に反する行為。「国益」の大切さを叫んできた右寄りの安倍が、土壇場で私利私欲を剥き出しにした格好だ。集団的自衛権の行使容認や、安保法の場面で、首相が強調してきたのは「国民の安全を守るため」という理由。しかし、北朝鮮危機を前に政治空白を作ることは、その言葉が虚偽だったことの証左であろう。

 首相は、「解散総選挙は、政権基盤を強化するため」と強弁しているらしいが、それはあくまでも口実。8月の内閣改造に意味がなかったことを自白したも同然だろう。自己愛のかたまりでもある安倍は、北朝鮮問題を隠れ蓑に、森友・加計疑惑から逃れることしか考えていない。まさに「疑惑隠し解散」だ。最終目標は「改憲」。来年9月までの総裁任期をまっとうし、3選を確実にして改憲に持ち込む腹なのである。

 国民の生命や財産を守ることを二の次にして、自分勝手な政権運営――。この展開を一番喜んでいるのは、金正恩なのかもしれない。



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