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沖縄(上)

2017年9月14日 09:00

0-DSC05081.jpg 住民の集団自決があったことで知られる沖縄県読谷村の戦争遺跡「チビチリガマ」が、何者かによって荒らされるという事件が起きた。チビチリガマは、沖縄戦の悲劇を後世に伝えていくための重要な場所。平和学習の場としても知られており、沖縄の心を踏みつけにする蛮行である。
 安倍政権のもと、戦争犯罪を否定する輩がやたらと増えた。極端に右に寄った自称「保守」による沖縄への侮辱、差別も露骨になっている。政府・自民党に、選挙結果が示した民意さえ無視される沖縄県民……。“戦争被害”は、いまも続いているのに、大半の本土メディアはその現状を大きく報じようとしない。
 今月初旬、旧盆を迎えた静かな沖縄を取材した。

■温度差
 昭和20年4月1日の米軍上陸は、読谷村の西海岸から。翌日2日に、チビチリガマへ避難していた住民約140名のうち83名が集団自決したとされ、約6割が18歳以下の子供だったという。つまり、チビチリガマは犠牲者の墓。遺族会の意志により立ち入りが禁止されてきたが、重要な沖縄戦の遺跡として読谷村の文化財に指定され、平和学習の場としても利用されてきた。チビは「尻」、チリは「切る」という意味だそうで、チビチリガマの名称は、そこが浅い谷の底にあり、谷川を流れる細い川はガマへ流れるが、どこへ流れ着くのか分からないという事からこの名が付いたのだという。

 報道によれば、ガマに残されていた遺物のびんやつぼ、急須などの遺物が割られ、遺骨が集められている箇所まで荒らされていた他、子供達が捧げた折り鶴が引きちぎられ、入り口に建立されていた「世代を結ぶ平和の像」の石垣が破壊されていたという。戦争犠牲者に対する冒とくも、ここまで来れば凶悪な犯罪だ。しかし、事件を報じる本土メディアのニュースの扱いは、決して大きいとは言えない。本土で悪質な墓荒らしや戦争遺跡の破壊が起きれば、どれだけ騒ぐことか。温度差は、確かにある。

■普天間、オスプレイ、沖縄差別
 先月29日、エンジントラブルを起こした米軍の新型輸送機オスプレイ1機が、大分空港に緊急着陸。11日後の今月8日にようやく離陸した。同機の所属は普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)。最終的に戻るのは沖縄である。

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*市街地の中心を占める米軍普天間飛行場の全景

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*普天間基地に駐機されているオスプレイ

 大分空港に緊急着陸したオスプレイは普天間に戻るが、本土メディアが報じるのは同機の離陸まで。欠陥機がその後どうなるかまで、追うことはない。本土内では大騒ぎ。しかし、沖縄の現状を伝えるのは一部の報道機関だけだ。“温度差”で片づけるには、あまりに違うこの対応。「遠い沖縄なら仕方がない」という、ある種の差別が存在する。

■辺野古で
 今月はじめ、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移転先である名護市辺野古を訪ねた。この時期、沖縄は旧盆。沖縄は旧暦で行事を行うことが多く、今年は新暦の9月3日から5日が沖縄のお盆にあたっていた。安倍政権によって強行されている移設工事も、お盆の前後1日を含めて休み。辺野古は、いつになく静かで、移設反対派のテントの人影もまばらだった。

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*臨時制限区域を示す浮具(フロート)の内側に海保の監視船。奥が米軍キャンプ・シュワブ

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*辺野古海岸側から見たキャンプ・シュワブ内部

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*人影のないゲート前テント村

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*普段は工事車両が出入りし、数十人の警備員がいる基地の入り口

 本土で、沖縄の旧盆や、それによって移設工事も休みになっていることを知っている人がどれくらいいるだろう。たまたま見落としたか、あるいはまったく報道されていないのか――。どちらであるにせよ、大したニュースになっていないのは確かである。沖縄のことを、正確に伝えきれないもどかしさ……。辺野古海岸そばにある以前からあるテント村で、十数年前に沖縄に移住してきたという老婦人が「本土の人間は、沖縄のことをほとんど分かっていない」と寂しそうに呟いた。お盆が終われば、移設工事を強行する国と移設に反対する“国民”との睨み合いが復活。周辺は、再び騒然となる。それが沖縄の「日常」なのである。

(以下、次稿)



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