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現役職員が勇気の告発 鹿児島県労働基準協会の実態

2017年8月24日 08:35

1-DSC04922.jpg 国家資格である「ガス溶接作業者」の試験で、答案用紙の偽造という不正が行われていたことが分かった労働基準監督署の外郭団体「公益法人 鹿児島県労働基準協会」。協会は、不正の事実を知りながら、組織的な隠蔽を図っていた。
 勤労者や事業所を指導する立場の団体で起きた犯罪的行為。内部では、こうした状況に危機感を抱いている職員が少なくない。HUNTERの呼びかけに応じた現役職員4人に集まってもらい、協会の歪んだ実態について語ってもらった。

■歪んだ組織 幹部が暴走 
 集まったのは、協会の現状に危機感を抱いているという職員4名。顔見知りもいれば、初めて話をする人もいるという。本稿では職員A、職員B、職員C、職員Dとする。以下、2時間に及んだ鹿児島市内でのやり取りの概要をまとめた。

 記者:本日は、ありがとうございます。ここに来るには、相当勇気が必要だったのではないですか?
 職員A:正直、報道関係者と話をしていいものかどうか迷いました。ですが、ことがことだけに……。国家資格ですからね。それと、協会には自浄能力がありませんから、外部の方にメスを入れてもらうしかないと……。
 職員B:私は、他の報道機関の人に話をしたことがありますから。記事にはなりませんでしたが。実情を知ってもらいたいですから。
 職員C:協会の現状について“おかしい”と思っている職員は少なくないんです。一人ふたりではないですから。試験の不正は、加世田支部だけではないかもしれませんし、この際しっかりと膿を出すべきだと考え、ここに来ました。
 職員D:あ、私は、その、どこまで話せるか分かりませんが……。

 記者:はじめに、皆さんが知っている不正について、お話し下さい。
 職員C:加世田支部の件ですよね。それはですね、ガス溶接の試験で、点が足りない答案用紙があって、間違いを正しい答えにして別の答案用紙に書き入れということです。
 職員A:それを、本部に送った。なぜだか、不合格の答案用紙も入れて。
 職員C:それは、ばれますよね。

 記者:協会内部では、不正を知っている人が多いと――。
 職員C:けっこういるんじゃないかな。私が知る限りでも、7~8人はいますから。
 職員B:詳しくは知らなくても、何かあったという程度なら、分かっている職員は少なくないと思います。

 記者:新たに答案用紙を作成したということになれば、“改ざん”ということではないですよね。偽造ということですか?
 職員B:ああ、偽造ですね。私は、改ざん、改ざんと言っていた。
 職員A:不正は不正ですよ。
 職員D:私が聞いているのも、同じ内容です。点が足りないから、合格ラインに達するように間違った箇所を正しい答えにして、別に答案用紙を作った。とんでもない不正です。

 記者:その職員は、在職しているのですか?
 職員B:いますよ。
 職員C:処分、受けたのですかね?
 職員B:受けたと聞いてます。処分内容は知らないですが……。
 職員C:普通、クビですよね。
 職員A:クビにならずに厚遇されるから、怖い。

 記者:厚遇とは?
 職員A:そこは、ちょっと。勘弁して下さい。その人がやったことは悪いことだけど、おそらく、頼まれて、いや命じられてやったことだと思うから。だってですよ、頼まれもしないのに、受講者に便宜を図りますか?そんな大それたこと、普通やりませんよ。
 職員B:本部の指示でしょうね。
 職員C:腐った組織であることは、間違いない。不正を隠蔽したんだから。
 職員D:隠蔽ですよね、やっぱり。
 職員C:隠蔽。幹部だけで。

 記者:協会は、なぜ隠蔽に走ったのでしょうか?
 職員C:幹部の保身でしょう。(答案用紙の不正を)指示した上の人間がいたとも考えられるし、そうなれば、公表するわけにはいかない。懲罰委員会もあるにはあるが、どうせお手盛り。隠せると踏んだんでしょう。(協会の)会長の立場もある。そこで暴走した。
 職員A:うちの会長さんは、鹿児島のトヨタの会長なんですよ。専務理事は元ブリヂストン。車つながりで、会長(専務理事を)が拾ったと聞いたことがある。少なくとも、会長、専務理事、部長は不正を知っていた。
 職員D:警察沙汰になってもおかしくない話なのに、隠蔽とは……。

 記者:答案用紙を偽造までして、合格点を与えようとした理由は――。
 職員C:うちの協会でやっているのは、国家資格を得るための講習で、資格によっては、最後の試験が筆記だけという形になる。合格率が低ければ、カネを払って受講した意味がなくなるでしょう。それは、講義のレベルが低いということだから。文句も出ますよね。大きな収益のひとつが受講費ですから、合格率は高い方がいい。『合格させとけ』程度の話だったんじゃないでしょうかね。推測ですが。
 職員D:受講者からおカネをもらったと、疑われても仕方がないですが。
 職員C:さすがに、それは……。
 職員B:でも、受講者に『何かあったら、相談してください』といい顔を見せる幹部もいるから。
 職員A:知ってる。そいつ。
 職員B:会長は当初、(不正を行った職員を)クビにしろと言ってたらしいですが、他の幹部が止めたと聞いてます。不正を見逃さざるを得ない理由を、教えられたからではないかと思います。

 記者:他に不正はないんでしょうか?
 職員C:今度の件は、氷山の一角ですよ。他にも不正はある。調べていただければまだ出てくると思います。
職員B:おかしな試験結果ばかりの支部もある。
職員A:それは確か。100点ばかりなんてあり得ないのに――。支部によって、姿勢が違うから。まじめにやっているところと、そうでないところと……。

記者:内部で、現状を変えようという動きは出なかったんですか?
職員A:いまの協会ではダメだと考えている人は、もちろんいると思います。ですが、本部の専務理事や部長の権限が強すぎて、モノを言える雰囲気ではない。専務理事なんて、とにかく上から目線。職員を見下してかかってる。もとが会社の社長さんですから。好き勝手やってるという話も聞きます。
職員D:たしかに、うちの(協会の)幹部は協会の理念とは逆のことばかりやっていますよね。労基の下の組織とは思えないところがありますよね。パワハラ、セクハラ、今度は国家資格の講習で不正というんじゃ……。
職員C:パワハラで裁判まで起こされた。
職員A:恥ずかしい。企業の労働者に対して指導をしていかないといけない立場でありながら……。まず、膿をしっかりと出すこと。労基も知らん顔しないでほしい。私たちも、声を上げるべきだと考えているのですが、生活のことを考えると、踏ん切りがつかなくなる。報道してもらうことで現状が少しでも変われば、とそう考えています。

 労働基準監督署の外郭団体で起きた国家資格試験の不正。事実関係を知りながら隠蔽するというのでは、勤労者に指導する資格などあるまい。現役職員らの話から浮かび上がってきたのは、一部幹部の暴走による歪んだ組織運営の実態だった。HUNTER取材班は、鹿児島県労働基準協会の内情について、追跡取材を続けている。



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