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聞いて呆れる「人心一新」

2017年8月 3日 09:15

DSCN0047-2-thumb-600x450-14374.jpg 安倍首相がきょう、急落した支持率の回復を狙って内閣改造と党役員人事に打って出る。目玉とされるのは、首相と距離を置いてきた野田聖子元総務会長の総務相兵の起用。この他、南スーダン派遣部隊の日報問題に火をつけた河野太郎元行革担当相が外相に就任する。麻生太郎副総理兼財務相や菅義偉官房長官、二階俊博幹事長は留任。骨格はそのままに服だけ変える形だ。
 一方、トラブルメーカーとなった首相の秘蔵っ子・稲田朋美前防衛相は、厳しい世論に耐え切れず事実上の更迭。山本幸三国家戦略特区担当相や松野博一文部科学大臣も交代する。つまりは、疑惑隠し。掛け声だけの「人心一新」に、早くも「支持率回復効果はわずか」(自民党衆院議員)との声が上がっている。(写真は首相官邸)

■服だけ変えても……
 「人心」とは多くの人の心、あるいは民心。一新とは、すべてを新しくすることをいう。麻生、菅、二階という骨格を変えずに、疑惑の中心にいる大臣だけ替えるというのでは、「人心一新」とは言えまい。

 野田氏ら首相に批判的な政治家を政権に取り込み、懐の深いところをアピールしようという魂胆らしいが、安倍さんの狭量、聞く耳持たずの姿勢は既に全国民周知のこと。いまさら格好をつけても信頼は戻らない。

 特定秘密保護法や安保法、共謀罪法の強行採決では国民の反対意見を無視し、強行採決を繰り返した。集団的自衛権の行使容認にあたっては、大多数の憲法学者による「憲法違反」の指摘を黙殺した。沖縄では、知事選をはじめとする各種選挙で示された辺野古移設反対の民意を踏みにじり、工事を強行している。安倍政権のこれまでの姿勢は、「寛容」とは無縁の独裁そのもの。ご祝儀相場で若干支持率が上がっても、森友・加計の両学園疑惑や自衛隊の日報問題が解明されない限り、長続きはしないだろう。実際、安倍政権が抱える「闇」は、依然として閉ざされたままなのだ。

 歴代最低の防衛大臣となった稲田氏は、日報の隠蔽を了承したと指摘されながら、最後までこれを認めず辞任。笑顔で離任式に臨み、「情報公開への対応が不適切だった。国民の信頼を揺るがし、隊員の士気を低下させかねず、極めて重大かつ深刻だった」「風通しの良い組織文化を醸成してもらいたい」と厚かましくも防衛省に注文を付けた。まるで他人ごと。反省なら猿でもできるというのに、この無能な政治家はそれさえできない。

 日報隠蔽の責任を陸上自衛隊に押し付けた形になっているが、最終的に隠蔽の指示を出したのは背広組=内局だ。最終決済は防衛大臣だった稲田氏が行っており、間違ったシビリアンコントロール(文民統制)が機能したのは事実。閣内を去ったからといって、政治家としての説明責任を逃れられると思うのは早計だろう。

 森友学園や加計学園の問題にしても、“大臣交代で幕引き”という訳にはいなかい。森友疑惑について国民が求めているのは、同学園が開校を目指していた小学校の名誉校長だった安倍昭恵首相夫人の国会での証人喚問。加計疑惑も同様で、安倍首相をはじめ首相の「腹心の友」加計孝太郎や関係者の証人喚問が必要だろう。偽証した場合は刑事告発されるという厳しい場で真相解明が行われるまで、学園絡みの騒動に終止符が打たれることはない。

■改造の失敗例
 内閣改造には、一時的に支持率を押し上げる効果があるが、失敗例も。昭和49年、「文芸春秋」が掲載した立花隆氏の「田中角栄研究―その金脈と人脈」によって追い詰められた田中角栄首相(当時)は、内閣改造を断行。しかし、状況はより悪化し、改造からわずか15日で退陣を表明している。疑惑絡みで下がった支持率を回復させるのに、内閣改造は功を奏さないという実例である。

■一新すべきは……
 森友・加計両学園や自衛隊の日報を巡る疑惑に対し、関係する大臣の首をすげ替え、国会での追及から逃れようとする安倍首相。支持率低下は他でもない、安倍首相本人への疑念が膨らんだ結果なのに、自民党内で実情を指摘する声は表面化しない。
 「一新すべきは総理大臣」――自民党は、そうした国民の思いを“忖度”できないのだろうか。



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