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核ゴミ処分場マップ公表 揺れる「最適地」南大隅町

2017年8月 1日 09:35

1-佐多岬.jpg 今月28日、政府が高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)を最終処分する用地の適性を4段階で評価し、日本地図上に色分けした「科学的特性マップ」を公表した。
 昨年中としていた公表時期を大幅に遅らせた上、3割の国土を「最適地」とする大雑把な評価。関係自治体から戸惑いや怒りの声が上がる中、公表されたマップを複雑な思いで眺める人たちがいた。
 鹿児島県南大隅町――。国内で、もっとも核ゴミ処分用地に適しているとされる町の住民である。
(写真は、同町にある本土最南端「佐多岬」から撮影)

■進まぬ核ゴミ処分
 原発の使用済み核燃料を再処理すると、再利用が可能なウランやプルトニウムとは別に高濃度の放射性廃液が生じる。廃液はガラスの原料と融合させ「ガラス固化体」となるが、これが高レベル放射性廃棄物=核のゴミ。地下300メートルより深くに埋めるいわゆる"地層処分"を行なうことになっているが、2002年から事業を担ってきた原子力発電環境整備機構(ニューモ:NUMO)の計画は進んでいなかった。

 国は、交付金をエサに最終処分場を誘致する自治体を公募してきたが事は進まず、平成19年には、誘致を表明した高知県東洋町で反対運動が激化。当時の町長は辞職し、出直し町長選挙において誘致撤回を掲げた候補が当選したことで、処分場計画はご破算になっている。

 平成27年5月、安倍政権はニューモに任せていた核ゴミ処分場の選定を、国の主導で決めると発表。最終処分地選定に関する新しい基本方針を閣議決定し、全国でシンポジウムや自治体向け説明会を開催してきた。新たな基準に従い絞り込んだ候補地を「科学的有望地」として公表する予定だったが、作業は難航。昨年中とされていた公表時期は大幅に遅れ、特定の候補地を示さない“色分けマップ”という形で、今回の公表となった。

■町を混乱に陥れたデリヘル町長
鹿児島 058-thumb-280x210-6513-thumb-280x210-6514.jpg こうした中、原子力村が熱い視線を注いできたのが鹿児島県南大隅町だ。同町では平成21年頃、森田俊彦町長(右の写真)をはじめ町議会議長、町議、商工会長、建設協会長、漁協組合長などが核ゴミ処分場の誘致に賛成。自治体の有力者がそろって核ゴミ処分場の誘致に賛成するという前代未聞の事態に、政府や電力業界の期待が高まった。しかし、核ゴミ誘致を察知した住民らが猛烈な反対運動を展開。町は24年12月に「南大隅町放射性物質等受入拒否及び原子力関連施設の立地拒否に関する条例」を制定し、一転して核ゴミの受け入れを拒否する姿勢に転じていた。

 落ち着きを取り戻しつつあった同町が、再び揺れ始めたのが翌年の春。核ゴミ処分場誘致に賛成していた森田町長ら町の有力者たちが、電力業界の代理人である会社社長あてに、核関連施設誘致に関する一切を任せるとする“委任状”を書いていたことが発覚したからだ。町長が件の会社社長からモーターボートをもらっていたことも明らかとなり、全国の注目を集める事態となっていた。

 追い込まれた森田町長は、核ゴミ処分場に断固反対する意向を表明。今年4月の町長選挙でも、処分場反対を訴えた。だが、この町長の姿勢を「信用できない」とする声は少なくない。森田氏は、稀に見る「嘘つき」。まるで息をするように嘘をつき、荒唐無稽な作り話で自己保身を図る人物だからだ。これまでに、モーターボートや委任状を巡る疑惑で、森田氏の嘘が次々と暴かれている。

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 今年に入って、委任状を渡していた電力業界の代理人から見返りに、飲食やデリヘル嬢の派遣といった“接待”を受けていたことが判明。町政トップが、報道機関の取材から逃げ回る日々が続いていた。そこに今回の政府発表。森田氏は、「条例を順守する」としたペーパーを配って、核ゴミ問題への直接取材を避けている。

■政府の本命は「南大隅町辺塚」
 政府が公表した科学的特性マップによれば、国土の3割にあたる緑色で示された地域が核ゴミ処分場用地の「最適地」。火山から離れ、活断層の影響が少なく、地層が強固などの条件で、なおかつ海岸のそば(*核ゴミ輸送が船舶利用のため)という要件を満たしている地域だ。南大隅町は、町役場付近を除いて町域の大部分が該当している(下のマップ参照。核ゴミ処分場の候補地は同町の「辺塚」)。

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 マップを見た南大隅町の男性は、「やっぱり、私たちの町は“最適地”なんですね。政府や自民党がお願いに来れば、森田町長や議会は、すんなり受け入れるんじゃないでしょうか。嘘をつくことに、罪悪感を有しない人たちですから」とした上で、次のように話している。
 「最近になって、森田町長・大村議長・永山商工会会長等が核廃棄処理施設に対して反対発言をするようになっています。8年前に森田町長を担ぎ出した一番の目的は核の誘致だったはずで、彼らは核誘致の為の委任状まで書いていました。委任状の背景には数多くの飲食接待や視察旅行、そしてデリヘル接待の事実まであったことが報じられています。言うならば、原子力村関係者とズブズブの関係。森田氏の嘘つき体質は周知の通りで、彼の「核ゴミ反対」はどうしても信じられません。町長は、接待疑惑についてマスコミの取材はもちろん、町民の公開質問にも答えていません。誘致賛成から反対に変わったのであれば、改めて今に至るまでの経緯を町民に知らせるべきではないでしょうか。いまの安倍政権と同じで、都合の悪い話から逃げ回り、時間の経過によって風化させるつもりなのでしょうが、そうはいきません。汚い町政にはうんざり。核ゴミ容認へと転じる可能性が高い森田氏に対し、リコールを真剣に考えるべきでしょう」

 HUNTERの取材によれば、森田町長は昨年、真意を問うた政府関係者に対し「私の志は変わっていない」と答えたという。森田氏の志が「核ゴミ誘致」であったことは、これまでの経緯からも明らか。政府の本命は南大隅町の辺塚地区とされ、嘘つき町長が居座る本土最南端の町に、混乱の火種は消えていない。



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