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「会議」開かず補助金審議 福岡市・保育園移転に新たな問題

2013年7月18日 08:05

 高島宗一郎市長の強引な移転計画に揺れる認可保育所「中央保育園」(運営:福岡市保育協会)の施設整備補助金をめぐり、補助金申請を認めるか否かの審議にあたった「福岡市社会福祉施設整備費等補助対象施設選定委員会」(以下、「選定委」)が、規定された「会議」を開かずに、約3億5,000万円にのぼる補助金支給を決定付ける決論を出していたことが明らかとなった。
 選定委は、定められた組織運営のあり方を逸脱し、委員の都合で“持ち回り”という杜撰な手法を採用。規定された会議を省いて結論を出しており、補助金支出の妥当性が問われる事態だ。(写真は、移転問題で揺れる「中央保育園」)

補助決定までの流れ
福岡市社会福祉施設整備費等補助対象施設選定委員会設置要領 福岡市の場合、保育所の運営法人から提出された施設整備補助金の申請に対しては、大学教授など外部の有識者らを中心に構成される選定委でその妥当性が審議され、出された結論を基に市が正式決定する仕組みとなっている。事実上、選定委の結論が補助金支給の是非を決めるといって差し支えない。

 選定委では、運営法人から出された書類を確認しながら、委員各自の意見を出し合い、多数決で補助金支給に対する賛否を問うこととなっており、組織運営の詳細については「福岡市社会福祉施設整備費等補助対象施設選定委員会設置要領」に定められている。右がその要領(全2枚の内の1枚目)である。

 「会議」について規定した第4条には、次のように明記されている。

  • 補助対象施設選定委員会の会議は、委員総数の半数以上の出席がなければ開くことができない
  • 会議の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数の場合は議長の決するところによる。

 要領は11条まであるが、議事の決定に関する規定は第4条だけで、「会議」を開かねば結論を出せない形となっている。

開かれなかった「会議」
 しかし、社会福祉法人福岡市保育協会が市に提出した中央保育園の移転にともなう施設整備補助金の申請に対しては、要領に規定された選定委の会議が開かれておらず、市職員が持参した書類を確認した各選定委員が意見書だけを提出するという、いわゆる“持ち回り”で結論を出していた。一切の審議が省かれたまま、約3億5,000万円もの税金支出が決められたことになる。手続き上、瑕疵があったことは明らかだ。
 なお、選定委員の委員長には日当13,000円、委員には11,000円が支払われていた。

 手続き上の瑕疵があったことや選定委のあり方について、事業を所管する市こども未来局保育課に聞いた。

 ―― “持ち回り”で結論を出したのは事実か?
 市側:持ち回りで決めたのは事実。

 ―― 要領には「会議」の規定がある。会議は、委員総数の半数以上の出席がなければ開くことができない、となっている。間違いないか?
 市側:たしかにそうなっている。

 ―― 要領のどこに“持ち回り”の規定があるのか?
 市側:それはない。

 ―― それでは、なぜ「要領」を無視して、持ち回りなどというふざけた手法で結論を出したのか?
 市側:“持ち回り”を決めたのは選定委自体。委員のみんなが集まることが難しいということで、持ち回りになったと聞いている。

 ―― 選定委員たちは、日当をもらっているのではないか。委員長は1万3,000円、ヒラの委員は1万1,000円で間違いないか?
市側:間違いない。

 ―― 忙しいからという理由で会議を開かず、身勝手な“持ち回り”などという手法で3億5,000万円もの補助金支出を決めた。委員に日当をもらう資格などない。
 市側:最終的な決定は市が行ったが・・・・。

 ―― 要領をねじ曲げたのは選定委員会ではないか。日当も税金、補助金も税金。そうした意識が欠けている。
 市側:・・・・・。

 問題の施設整備補助金の申請過程では、市の所管課が間違った書類を作成。市側はもちろん、選定委もその文書の誤りに気付かぬまま、補助金交付にゴーサインを出していたことが分かっている。審議の杜撰さは証明済みだ。「会議を開く」という規定をねじ曲げた上、提示資料さえろくに見ていなかったとすれば、違法性が疑われてもおかしくない決定だったというしかない。中央保育園側への補助は、いったん白紙に戻して審議をやり直すべきだろう。

【参考】
福岡市社会福祉施設整備費等補助対象施設選定委員会
・福岡教育大学名誉教授・特任教授 田中敏明⇒委員長
・福岡女子短期大学教授 尾花雄路
・公認会計士 升永清朗
・福岡市社会福祉協議会常務理事 松田潤嗣(市OB)
・福岡市住宅都市局建築指導部長 森敏彦



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