愛媛県今治市が特区申請した加計学園の獣医学部新設を巡る疑惑が拡大する中、新たに注目を集めているのが全国各地に病院などの医療関連施設を展開している「国際医療福祉大学・高邦会グループ」による医学部新設。今年4月に開学した国際医療福祉大学医学部は、千葉県成田市が特区申請し、スンナリ選定されていた。「新設ありき」は加計のケースと同じだ。
事業形態もほぼ同じ。加計は、獣医学部用地を今治市から無償提唱されたうえ建設費まで得ているが、高邦会・医学部の場合も用地は成田市の無償提供。160億円の校舎建設費用のうち半分の80億円を千葉県と成田市が拠出する形となっていた。
それでは、「情報公開」についての姿勢はどうか――。関連文書の情報公開請求をしたところ、医学部新設を特区申請した成田市が、隠蔽姿勢を露わにする状況となっている。
■医学部新設関連文書 開示まで4か月
成田市への情報公開請求は3月初旬。医学部新設に関する文書について幅広く請求をかけたつもりだったが、開示されたのは同市と国際医療福祉大学との間で交わされた協定書などごく一部の文書。やむなく、3月27日に「医学部新設に関する全ての文書」を開示請求していた。この段階で分かっていたのは、何の相談もなく一方的に開示決定し、不十分な文書を送りつけてくる成田市側の不誠実な態度。保有文書を出し渋る同市に、隠蔽の臭いを感じさせる対応だった。
この後も、同市の不誠実な対応が続く。3月31日になって、成田市企画政策部国家戦略特区推進課から送られてきたメールは、「請求内容が包括的であるため、開示請求の対象となる文書を現在の請求内容より特定し、絞り込んだものとしてくださいますようお願いします」――。つまり、“請求文書を減らせ”というのである。もちろん断ったが、この対応は役所の身勝手に過ぎない。成田市は、作成する文書リストの中から選べというのだが、請求側は記述の中身が分からない。すべての文書を精査しなければ、施策の決定過程が検証できない以上、対象文書のすべてを確認するしかないのだ。要は出し渋りだった。
結局、長期出張に出ていた記者の対応が遅れたこともあって、3月に行った開示請求が正式に受理されたのは5月8日。成田市の対応に不信感を抱いていたところに送られてきたのが「開示決定期限延長通知」だった。
2か月近くかけて文書の特定をしておきながら、さらに2か月開示決定を延ばすというふざけた対応だ。「文書が大量」「第三者への意見聴取」は役所が文書開示を引き延ばすときの常套文句。出し渋ったのは、国会の開会中を避けたとしか思えない展開だった。
■隠蔽
隠蔽を確信したのは、ようやく送られてきた開示決定とリストの内容について成田市側に確認を求めてから。リストに記された文書の記載内容が分からないため2種類の文書の存否について確認したところ、ひとつは不存在、もう一方は“存在はするがリストの中には含まれていない”という。一体どういうことか?
不存在とされたのは、国際医療福祉大学・高邦会グループ側との協議の記録。特区申請から事業実施に至る過程で、同グループ側との協議は欠かせないはずだが、成田市の担当課はその記録自体を「作成していない」と明言する。今治市の場合は、加計学園側との協議記録が存在し、情報公開にあたっては非開示(下の文書参照)。成田市は、協議記録そのものがないという不可解な結果となった。「あるものを、ない」を、疑わざるを得ない。
一方、開示対象から省かれていたのは、医学部新設に絡んで行われた職員の出張に関する文書。内閣府などとの協議では当然出張命令が出されていたはずで、復命書もあるはずだ。なぜ省いたのか聞くと「そこまで必要がないと判断した」「必要なら、再請求してくれ」という理不尽な対応だった。
「○○ありき」で進んだ特区選定の過程、公費支出に支えられた事業形態、関係自治体による関連文書の隠蔽――。特区を利用した「学部新設」は、加計も高邦会も構図が同じなのである。