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安倍晋三「こんな人たち」発言 指さす先に有権者5,300万人

2017年7月11日 09:00

1-安倍指さし.png 昭和30年(1955年)、いわゆる保守合同によって自由党と日本民主党が一つにまとまり、自由民主党が結成される。実現させたのは、三木武吉。「ヤジ将軍」「寝業師」などといわれた政治家である。
 衆院選の立会演説会で「ある有力候補のごときは妾を4人も持っている」と攻撃された三木は、ある有力候補者が自分であると断った上で、「妾が4人あると申されたが、事実は5人であります。これを捨て去るごとき不人情は、三木武吉にはできません」と切り返して笑いを誘い、やんやの喝さいを浴びたという。機知をもって聴衆を虜にした三木の、有名なエピソードである。
 一方、三木がつくった自民党の25代総裁となった安倍晋三は、都議選の街頭演説で「帰れ」「辞めろ」とやじった人たちを指さし、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と言い放った。その結果は、歴史的惨敗。安倍の人差し指の先にいたのは、数千万人の有権者だった。

■ナベツネも見放した?
 10日、読売新聞朝刊の1面に「内閣支持率続落36%」という見出しが躍った。脇に「不支持最高52%」。安倍首相寄りで知られる同紙の世論調査結果は、政府・与党にとって驚愕の数字だったと言えるだろう。同日、朝日新聞が掲載した世論調査結果も傾向は同じで、「支持33%、不支持47%」というものだった。5月以来下がり続けてきた内閣支持率が、いよいよ危険水域に入った形。永田町では「ナベツネ(渡邉恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆)が、安倍を見放した」という話が駆け巡った。

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 下は、今年5月からの読売、朝日両紙の支持率調査結果。内閣支持者の落ち込みは激しく、朝日の数字では2か月で14ポイント、読売は25ポイントも下げたことになる。いずれも、第2次安倍政権が発足して以来最低の数字。都議選の際、東京都内限定で行われた両紙の支持率調査より悪化した状態で、「反安倍」の流れが全国に広がっていることを示している。
1-支持率表.png

■期待薄の内閣改造 変えるべきは総理
 安倍は内閣改造で目先を変え、政権の維持を図る構えだが、おそらく狙い通りにはいかない。森友、加計の両学園問題に加え、共謀罪法の強行採決。マイナス要因がそろったところに、稲田朋美防衛相の失言や下村博文元文科省の政治資金疑惑が追い打ちをかけた。秘書への暴行・暴言で離党した豊田真由子衆院議員の騒ぎが足を引っ張ったのも確かだろう。だが、支持率低下を招いた最大の原因は、加計学園疑惑から逃げ回る安倍首相本人の姿勢と、その安倍を守るため嘘やごまかしを連発する政府・与党の不誠実さにある。信頼を失った政権に批判が集中する中、飛び出したのが安倍の「こんな人たち」発言だった。

 「こんな人たち」が怒るのは当然だが、安指が指さした先にいたのは、街頭演説の現場にいた人たちだけではない。国内の有権者は約1億120万人。いささか乱暴な計算になるが、52%が不支持(読売の調査結果)ということは、およそ5,300万人が安倍に「辞めろ」と言っているのと同義だ。安倍の人差し指の先には、それだけの国民がいたということ。事実、テレビのニュースで「こんな人たち」の場面を見たというHUNTERの読者からは、「自分が指さされているように感じた」「国民に向かって“こんな人たち”とは何だ!」といった安倍批判のメールが数多く寄せられている。反対者の声を力で潰してきた安倍の狭量さに、国民の多くが嫌悪感を抱き始めているのは確か。支持率急落は、安倍の正体に気付いた国民の意思表示でもある。従って、内閣改造は無意味。変えるべきは「総理」だろう。
 
 ちなみに、先述した三木武吉は帝国議会で、「陸軍は10年、海軍は8年……」として軍事予算を説明中だった高橋是清大蔵大臣に「ダルマは九年!」とヤジを飛ばし、議場の面々を唸らせたという。高橋のあだ名は「ダルマ」。「達磨大師(だるまたいし)の面壁9年」にかけた、機知あふれるヤジだった。翻って、安倍首相のヤジはどうか。女性議員に「早く質問しろよ」と恫喝し、安保法の議論では「まあいいじゃん、そんなこと」――。比較するのは大政治家・三木に失礼というものだが、このレベルの低さにはうんざりするしかない。
 
 三木が言ったという有名な言葉が、もう一つある。「誠心誠意、嘘をつく」である。政治家に嘘はつきものだが、三木はそこに「大義」がなければならないと説いた。安倍や政権幹部の嘘に、果たして「大義」があるのか?



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