有権者の選択にも間違いはある。とりわけ候補者が口先だけのペテン師だった場合は、短い選挙期間中に政治家としての資質や人柄を見抜くことができず、とんでもない人間を権力者にしてしまうものだ。
その典型が鹿児島県。昨年7月の知事選で初当選した三反園訓氏が、マスコミを脅すわ、県議に裏取引を持ちかけるわの大活躍。そうした不行跡を県議会で質問された知事は、議場で非常識極まりない対応を見せていた。
■自民県議が驚きの質問
先月26日、鹿児島県議会の一般質問で、自民党の県議が以下の内容で知事の政治姿勢を質した。
①昨年度の知事選について
②ミサイル避難訓練の報道と、避難訓練の時期について
③特別顧問増田寛也元総務大臣の就任について(位置づけ,起用理由、年訪問回数、活動内容、報酬)
④薩長明治維新150周年プレイベント、薩長同盟150周年記念パレードについて(効果)
⑤県政ビジョン策定有識者委員会について
⑥県内報道機関に対するBPOについて
⑦3月議会一般質問登壇者事前に知事室への呼び込みについて
⑧来月で1年になるが、これまでの1年をふりかえって、どのように総括されますか
このうち、HUNTERが注目したのは⑥と⑦。「県内報道機関に対するBPOについて」と「3月議会一般質問登壇者事前に知事室への呼び込みについて」という奇妙な質問だった。早速、実際の質疑を鹿児島県議会の記録動画で確認した。
質問した自民党県議によれば、一部マスコミの報道内容が気に入らなかった三反園氏が、記者を知事室に呼び込み「BPOに訴えるぞ」と発言したのだという。事実なら脅迫。報道への、極めてたちの悪い圧力だ。地元メディアの関係者に聞いてみたが、新聞記事への文句はもちろん、テレビ局には顔に塗る化粧がないだのといちゃもんばかりつけるのが常だといい、報道出身とは思えぬバカ殿ぶりだ。
(*BPOとは、NHKと民放各局によって設置された第三者機関「放送倫理・番組向上機構」のことで、問題があると指摘された番組・放送を検証して放送界や特定の局に意見や見解を伝え、一般にも公表することで是正を促す団体)
次に、県議の知事室呼び込みだが、三反園氏は3月議会で一般質問に立つ予定だった自民党の県議を個別に知事室に呼び、「何かあったら言ってください。(私が)やりますから」と話したのだという。手心を加えてくれるなら、依頼案件はさばきますよという裏取引。こちらも時代劇の悪役を彷彿とさせる、エピソードである。
■答弁は県職員 卑怯な県政トップ
県議の質問は知事にあてたもの。三反園氏がどう答えるか興味深くながめていたところ、驚いたことに答弁したのは県の幹部。三反園知事は、県議の質問に答えることなく、質疑終了となってしまった。
質されたのは知事本人の政治姿勢なのに、役人に答えさせるという非常識な展開。これを咎めぬ県議会もお粗末だが、三反園訓という政治家の県民を愚弄する姿勢には呆れるしかない。
もともと、県民の視線など気にしてないのだろう。知事選で公約に掲げた“川内原発の即時停止”や、原発反対派を入れた専門委員会の設置は事実上の反故。知事就任前から九電に「悪いようにはしない」というメッセージを送っていたことも分かっており、ペテン師としては超一流だ。一貫しているのは、“県民のことより自分のこと”というあさましい根性だけ。これでは、三反園氏に一票を投じた県民は浮かばれまい。
マスコミへの圧力も、県議との裏取引も、県民無視の暴走。「訴えるぞ」で相手に何かを要求するのは犯罪行為だ。これは政治家以前の問題で、三反園氏が知事にしてはいけない人物だった証左だろう。知事選から1年。いつでもリコールは可能である。