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「加計ありき」の証明 黙殺された京産大提案

2017年7月28日 10:10

1-京都2.png 安倍首相の親友が理事長を務める学校法人「加計学園」による獣医学部新設問題を巡って、「加計ありき」を否定する首相や政府関係者。しかし、国家戦略特区の議論過程を振り返ってみれば、同学園の計画が特別扱いされていたことが鮮明となる。
 加計学園の対抗馬として浮上していたのは、京都産業大学による獣医学部新設計画。内容的には加計のそれを上回っていたが、政府からは一顧だにされていなかった。

■提案書に京産大明記 意図的に伏せられた加計 
 京産大の計画を特区申請したのは京都府。平成28年3月24日に開かれた国家戦略特別区域会議(関西圏)で副知事が、創薬分野で活躍できる獣医師の育成を目指すとして、獣医学部新設を追加提案していた。下が、この時の提出文書である。

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 この京都府の提出文書と、加計学園と組んだ愛媛県今治市の提出文書とでは大きく違っている点がある。京都府提出文書の提案内容の下を見ると、事業の「実施主体」を「京都産業大学」と明記している。つまり、政府側はこの段階で、京都で獣医学部新設を目指しているのが京産大だと把握していたことになる。

 一方、安倍首相の国会答弁でも明らかなように、今治市の特区計画を巡る議論では、提出書類に「加計学園」という実施主体の名称は1度も出てこない。ワーキンググループや諮問会議での議論も同様で、今年1月20日まで「加計学園」は伏せられたままだった。

 不可解というしかない。実施主体を確認せずに、実現すれば52年ぶりという獣医学部新設についての議論ができるはずはないからだ。考えられる理由はひとつ。首相と加計学園の理事長である加計孝太郎氏の関係を「忖度」した特区関係者が、疑念を持たれないよう、意図的に加計の名を隠して議論を進めたということだ。もちろん、事業主体が加計学園であることを承知しているからこその配慮。安倍首相も分かっていたはずで、だからこそ国会で、「加計学園の提案を知ったのは1月20日」だと強弁できた。

■黙殺された京産大の計画
 京都府の提案から約7か月後の10月17日、ワーキングチームによる京都産業大学へのヒアリングが行われる。内容は、事業計画についての説明と確認程度だったが、京産大の獣医学部新設についての議論は、当日の1回限りで終了。公式記録ではこのあと、ワーキングチームはもちろん、特区諮問会議でも京産大のことが話題に上がることはなかった。“今治市=加計学園”の議論過程と、“京都府=京産大”のそれを比較してみれば、両者への対応の違いは歴然だ。

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 議論の対象にもならなかった京産大の獣医学部新設計画。他方、今治市の計画については、ワーキングチーム座長の八田達夫アジア成長研究所所長が早い段階から後押しするなど、歪んだ会議運営が行われていた。特区諮問会議で、事実上加計の計画を認めたのが10月4日。同月17日のワーキングチーム京産大ヒアリングは、単なるアリバイ作りに過ぎなかった。一連の流れが示しているのは、明らかな「加計ありき」。安倍首相のお友達で構成される特区諮問会議もグルで、国政を歪めた可能性が高い。

 「岩盤規制に穴をあける」のは結構。規制緩和でビジネスチャンスが拡がることに、反対する人は少ないだろう。だが、ビジネスと教育をいっしょくたにするのは間違い。岩盤規制ではないものまで、穴をあける必要はない。京産大の獣医学部新設計画を黙殺し、「加計ありき」で進められた国家戦略特区。「何も知らなかった」という安倍さんは、よほどのバカか、そうでなければ悪質な嘘つきかのどちらかだ。



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