今年4月に行われた鹿児島県南大隅町の町長選挙で、同町の白川順二副町長が現職陣営の選挙事務所で陣頭指揮し、事実上の責任者を務めていたことが分かった。
複数の関係者が「事務所の責任者は白川さん」「副町長が参謀役」などと証言。当時取材のため同町に入っていたHUNTERの記者も、選挙事務所に出入りする副町長の姿を確認していた。
公職選挙法は、公務員がその地位を利用して選挙運動を行うことを禁じており、副町長の行為は同法違反に問われる可能性がある。
■関係者「白川さんが責任者」
複数の町長陣営関係者によると、白川副町長は4月11日告示、16日投開票の南大隅町長選挙で、現職の森田俊彦氏を支援。連日のように選挙事務所に詰め、選挙の企画・運営を指導していたという。森田町長のある支援者は「白川さんが事実上の責任者。事務局長を兼任していた出納責任者は常勤ではなく、形だけの存在だった」と証言。別の関係者も「副町長が選挙に関する指示を出していたのは事実」と話している。
白川氏は、副町長であると同時に町建設工事指名審査委員会の委員長。町内の許認可や調達に関する多大な権力を有しており、とくに建設業者への影響力は計り知れない。選挙事務所に出入りすることさえ避けねばならない立場でありながら、白川氏は頻繁に森田町長の事務所を訪れ、選挙に関する指示を出していた。
公職選挙法は、特別職を含むすべての公務員に投票の周旋勧誘を行ったり、選挙運動の企画に関与し、その企画の実施について指示・指導することを禁じており、副町長が選挙の責任者を務めることは極めて不適切。違反が明らかとなった場合は、6月以下の禁錮又は30万円以下の罰金が課せられることになる。
■取材拒否
HUNTERは、事実関係について確認するため南大隅町総務課を通じて取材を申し入れたが、白川副町長はこれを無視。先週、下の質問書を役場に送付したが、期限までに回答はなかった。白川氏の携帯電話は、着信拒否の状態になっている。
ある九州地方の副市長OBは、次のように話す。
「自治体のナンバー2が選挙の手伝いをやるなど、ちょっと考えられない。特別職でも地位利用に抵触する可能性が高く、通常ならそうした立場の人間が挨拶以外で選挙事務所に行くことはない。住民の目もある。公務員には政治的な中立が求められており、そうした点からも不適切。関与の度合いにもよるが、違法性が高いと言わざるを得ない」
■腐敗した町政
南大隅町を巡っては、今年になって森田俊彦町長のデリヘル接待疑惑が浮上。町長やトップ当選の町議に公選法違反(接待供応)の疑いがあることや、同町選管が公選法を無視して町議らの選挙運動費用収支報告書を不正に書き変えさせていたことが分かっている。町政の腐敗は深刻な状況。町長をはじめ疑惑の当事者すべてが取材から逃げ回っており、歪む町政に町民から怒りの声が上がりそうだ。