鹿児島県が、川内原子力発電所(薩摩川内市)の安全性などを検証するため設置された「鹿児島県原子力安全・避難計画等防災専門委員会」に関するHUNTERの情報公開請求に対し、開示決定期限を意味なく1か月延長。県議会日程をまたぐことで、事実上の隠蔽を図る構えを示した。
県民を欺いて誕生した「脱原発知事」への期待は、しぼむ一方。改めて、三反園県政の原発対応を振り返った。
(写真左は鹿児島県庁、右は川内原発)
■騙された鹿児島県民
昨年7月の鹿児島県知事選挙で初当選し、“脱原発派の知事誕生”として全国的な注目を集めた三反園訓鹿児島県知事。来月で就任1年を迎えるが、「川内原発を止める」という最大の公約は事実上反故にし、伊藤祐一郎前知事を打倒するため候補者一本化をのんだ反原発派とも決別した。
歯切れがよかったのは、就任会見で「県民が不安に思う原発はいったん停止すべきだ」と語った時まで。九電に原発の停止要請を行ってからは、一気に原発容認へと舵を切り、平気で県民を愚弄するような言動を続けている。薄れる一方の期待感。騙された県民から、辞任を求める声さえ上がる始末だ。一連の動きを振り返っておきたい。
九電への原発停止要請は形だけ。知事の要請を受けて九電が実施した特別検査を安全確認のアリバイにし、公約達成をアピールする道具に仕立てるという詐欺的手法だ。知事選直後には、電力業界の関係者に「(九電の)悪いようにはしない」というメッセージを託したことも分かっており、県民は完全に騙された格好となっている。
■不透明感増す原発専門委の選定経過
反原発派が一縷の望みを抱いていたのが、知事と反原発団体代表・平良行雄氏との間で交わされた政策合意に基ずく「原子力問題検討委員会」の設置。しかし、「鹿児島県原子力安全・避難計画等防災専門委員会」と名を変えて設置された組織には、約束の反原発派委員は選任されず、原発容認のための装置と化した。
専門委は、川内1号機に続いて2号機についても「問題なし」の結論。原発自体の安全性を議論せぬまま、営業運転にお墨付きを与える形となっている。
専門委の構成にも疑問符がついた。報道で、専門委の座長を務める鹿児島大の宮町宏樹教授(地震学)が、今年度から3年間の予定で九電から経費約2億円の研究を受託していたことが判明。九電の利害関係者が九電の事業を検証するというお手盛り組織に、批判が集まる状況となっていた。
12名の委員はどうやって選ばれたのか――。確認するため、先月23日に委員選任過程を示す文書を開示請求したが、1か月経って送られてきたのは、下の開示決定期間延長通知だった。
大半の自治体が「15日間」を開示決定までの期間と定めているのに対し、鹿児島県だけが「30日間」。もともと情報公開に消極的な同県だが、原発専門委の関連文書の公開を、さらに30日間延長するのだという。理由は「事務繁忙」。ふざけているとしか言いようがない。
専門委のメンバーはわずか12名。委員選定に係る文書が、数百枚、数千枚に上るとは思えない。所管課である原子力安全対策課に確認を求めたが、延長理由は「県議会などで多忙」。要はやる気がないということだ。
県職員にとって、情報公開請求に対応するのは重要な業務。多忙を理由に怠業というのでは、県民の知る権利に応えることはできまい。延長する理由は、今月19日から来月7日までの日程で開かれる県議会の時期を避けるため。つまり、三反園県政にとって都合の悪い情報は、県議会閉会中にしか出さないということだ。事実上の隠蔽である。
どこまでも県民を軽んじる三反園県政。ある県議会関係者は、次のように話している。
「三反園県政は、伊藤県政以上に歪んでいる。伊藤さんは有言実行の政治家。言ったことは、それが不評だと分かっていても必ずやる人だった。三反園さんは嘘つき。県民の前では耳ざわりのいいことを並べたてるが、中味はゼロ。特に、原発に関する施策はデタラメと言うしかない。原発を理解していないのは明らかで、議会答弁もあやふやなものばかり。裏で九電とつながっているのではないかという噂が、真実味を帯び始めている。専門委のメンバー構成も、九電から推薦された結果ではないのか。県議会中に騒がれないよう、不必要な隠ぺいに走ったのだろう」