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選管が公選法違反 町議選巡り役場が不正隠し 守秘義務違反も
鹿児島・南大隅町

2017年6月20日 08:45

DSC04845.jpg 鹿児島県南大隅町の選挙管理委員会が、HUNTERの情報公開請求を受け、既に提出されていた町議会議員選挙の選挙運動費用収支報告書を当選した議員に返却。新たな報告書用紙を渡して不適切な記載を書き直させ、再提出させていたことが分かった。選挙の不正や不適切な記載を確認することができない状態となっている。
 報告書を3年間保存するよう義務付けた公職選挙法の規定に抵触するだけでなく、情報公開請求の事実を漏らすという守秘義務違反まで犯しており、選管の不正は明らか。同町の異常な行政運営の実態が浮き彫りになった。

■選管が不正隠しを主導
 HUNTERの調べによれば南大隅町選管は先月、当選議員を一人ずつ呼びだし、情報公開請求がかかっていることを告げた上で、収支報告書の記載内容に間違いや不都合な点がないかを確認。提出されていた報告書の原本を議員側に返却し、後日、議員側が精査したものを再提出させていた。選管が報告書を返却する際、新たな報告書用紙を添付していたことも分かっている。

 選管の指導を受けた一部議員は、書き直した報告書を提出。報告書の原本がなくなっているため、不適切な記載や不正行為の確認ができない状態となっている。選管が、議員側の不正隠しを主導した形だ。

 問題はまだある。同町選管に提出された全ての収支報告書には、当然あるべきはずの「受理印」がなく、いつ提出されたのか分からない状況。「15日」とされる法定の提出期間が守られたという保証がなく、事務処理自体の違法性が疑われる現状となっている。
(下は、開示された町議らの選挙運動費用収支報告書)

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 公職選挙法は、候補者が選任した出納責任者に選挙に係るすべての収入・収支を会計帳簿に記載し、その内容を選挙運動費用収支報告書に転記して、選挙後15日以内に選管に提出するよう規定。報告書を受理した選管に、「受理した日から3年間」の保存を義務付けており、南大隅町選管が一定期間報告書を議員側に返していたことは保存義務違反となる。この間、あるべきはずの報告書がなかったことで、報告書の閲覧請求を認めた同法の規定にも抵触していたことになる。

 19日、一連の不正行為について南大隅町選管に確認したところ、議員らに収支報告書の情報公開請求が提出されていることを告げた上で未記入の報告書を渡し、不適切な記載があれば書き直して再提出するよう求めたことを認めている。この作業の結果、数人の町議の収支報告書が書き直されたというが、どの記載をどう書き変えたのか分からないとしている。選挙の不正が、闇に葬られた可能性が否定できない。

■県選管、識者―「聞いたことがない」
 一定期間、選管に保存されているはずの報告書が不存在の状態となっており、公選法が定める閲覧の権利と選管の保存義務が放棄されたのは事実。開示請求の事実を告げたことで守秘義務違反も重なっており、行政機関としての信頼性が失われた状況だ。さらに、開示された収支報告書は、本来開示すべき“請求日時点での文書”ではなく、原本を“改ざん”した形のもの。不適切な収入・支出を探し出すことができず、適法な選挙収支報告とは言えない現状が続いている。

 HUNTERは同日、南大隅町選挙管理委員会の天目石幸一委員長と事務局長(町総務課長が兼任)に説明を求めたが、両人とも事態の重要性が理解できておらず、「連絡する」という約束も反故に。選管の不正について、説明がつかない状況となっている。鹿児島県選管は、「収支報告書を候補者に返して書き変えさせるなど聞いたことがない。南大隅町選管に事実確認する」としている。

 前代未聞の選管による不正行為。行政の事務や情報公開について詳しい市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は、次のように話している。
「いったん提出された選挙の収支報告書を候補者に返して書き変えさせるなど、聞いたことがない。選挙事務の公平性が失われており、報告内容自体の信ぴょう性が疑われる事態だ。情報公開請求がかかっていることを議員側に伝えたことは、明らかに守秘義務違反。役場側が、不適切な選挙運動の実態を隠してやったに等しい」



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