公費を使った中国・四国地方への視察旅行で、単なる観光目的としか思えない日程を入れていたことが分かった鹿児島県南大隅町の議会。同町議会への情報公開請求で入手した関連文書から、県内など別に実施された泊りがけの視察が、“夜の研修”に主眼を置いたものだったことが分かった。
県内視察の大半が、鹿児島市内で1泊する日程。宿泊先は、常に繁華・歓楽街「天文館」にあるホテルとなっている。関係者の話によれば、町議らが意図的に鹿児島泊の日程を組み、夜の町に繰り出すことが常態化しているという。
■宿泊は毎回「天文館」
平成24年度から今年2月までに、南大隅町議会が実施した宿泊を伴う委員会などの視察旅行は16回。このうち、中国・四国地方に出かけた平成24年、27年、28年の旅行の後半は、昨日報じた通り“私的な観光”と言う他ない内容だった。議員らの視察報告書はなく、議会での報告も旅行の前半部分だけとなっている。
同町議会の不真面目さが露骨に表れているのが、鹿児島県内での視察。分かりやすいように、16回の視察旅行について、所管委員会と目的地(「研修先」と表記)、宿泊先などについてまとめた。
一目見て分かるように、鹿児島県内の視察は、なぜか毎回鹿児島市内での泊まり。ひどいケースでは、熊本県内の自治体から宮崎県内の自治体に回る視察で、わざわざ鹿児島市内に戻って1泊していた。鹿児島泊は合計9回。8回は同じホテルで、もう1回も近くのホテルを利用していた。
理由は一つしかない。南大隅町の議会が宿泊先に選んでいるのは、娯楽・歓楽街「天文館」にあるホテル。視察に参加した町議たちは、夜の町に繰り出すことを第一の目的に、ホテルを決めているのである。南大隅→熊本→宮崎の行程で、鹿児島市内を宿泊地に選んだのもそのため。関連文書を精査してみると、鹿児島市内に泊まるため、「町民のため」という本来の目的を無視した日程を組んでいた。
「1泊」を確保するために日程は、まさに税金無駄遣いの証明。一番わかりやすいのは、出発時間を遅らせることだ。複数の視察先を回るとしても、鹿児島県内なら1日で終わらることは十分に可能。しかし、南大隅町の視察出発時間は午前9時~10時30分など遅い時間が大半で、初めから「1泊」を確保するためのスケジュールになっていた。最悪のケースが下。行程表に記された出発時間は「午後12時45分」となっている(*赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。
この日の日程にある肝付町は、南大隅町の隣町。肝付町農業振興センターは、南大隅町役場から車で40分ほどの距離しかない。2日目の目的地「ゆす村農園」は、鹿児島市に隣接する日置市伊集院町にある施設。早朝に出発していれば、2カ所視察が可能だった。ちなみに、この視察では2日目に予定されていた農園が、大雨の影響で受け入れ困難に。結局、南大隅町から1時間ちょっとの距離にある垂水市漁協の施設を視察し、形だけ整えていた。
■「1泊ありき」の証明
町民を愚弄するふざけた日程が、「鹿児島天文館で1泊」のためであることは明らか。その証拠となる文書も存在する(*赤い囲みはHUNTER編集部)。
平成27年2月に行われた教育産業常任委員会の視察の案内文。初日の視察先は「長島町B&G海洋センター」と決まっているが、2日目の視察先は未定。『ご希望があれば、事務局へご提案して下さい』と記されていた。つまり、予定もないのに2日間の日程を組んだということ。「必ず1泊」が、決まり事だった証だろう。後日2日目の目的地に決まったのは鹿児島市内の「都市農業センター」。宿泊は、天文館夜の研修の起点となるいつものホテルだった。南大隅町議会は、天文館に1泊する必要が生じるような場所を意図的に選んでいる。
■議会事務局、「天文館の夜」認める
“鹿児島市内で宿泊した町議らが、夜の天文館に繰り出しているのは事実か?”――南大隅町の議会事務局に確認したところ、「そうですね」として町議らの夕食後の外出を認めている。
委員会視察にかこつけた観光や「夜の研修」――。南大隅町は、収賄の疑いのある町長に加え議会まで腐っている。