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鹿児島・南大隅町議会 視察にかこつけ観光旅行(上)

2017年6月14日 07:30

1-20170411_h01-01.jpg 核関連施設の誘致を巡り、町長が電力業界の関係者から接待を受けていた疑いが浮上している鹿児島県南大隅町の議会が、行政視察にかこつけて観光や遊びが目的としか思えない日程を入れていたことが、同町議会への情報公開請求で入手した資料から分かった。
 嘘とごまかしで疑惑追及から逃れてきた町長を、側面から支えてきたのが同町議会。無駄な税金支出を続けてきた町議たちの行為に、町内から批判の声が上がりそうだ。

■省かれていた「日程表」と「旅費明細」
 南大隅町に情報公開請求したのは、平成24年度から本年2月までに実施された同町議会の委員会視察に関する文書。開示決定期限を過ぎて一部文書が公開されたが、存在するはずの「行程票」と「旅行会社提出の旅費明細」が省かれていたことから議会事務局に抗議し、改めて工程表と旅費の明細を入手した。

 開示された資料によれば、平成24年度から本年2月までの間に、同町議会が実施した宿泊を伴う委員会による行政視察は16回。このうち、平成24年度、27年度、28年度には下の表の日程で、九州圏外となる岡山、島根、高知などにある施設・名勝の視察に出向いていた。 

1-日程.png

■観光地視察という名目で観光
 問題は視察のスケジュール。3回の旅行では、それぞれ「美咲町(みさきちょう)」「海土町(あまちょう)」「土佐清水市」といった自治体の役所に話を聞きに行っている。しかし、あとはどう見ても観光。24年の出雲大社、足立美術館、27年の大原美術館、アイビースクエアなどは、自費で行くべき場所だろう。観光施設の調査だと強弁したいところだろうが、参加した議員が何を学んだのかが重要。そこで各視察の復命にあたる報告内容を確認してみた。

 驚いたことに、議員らが作成した報告書は不存在。残されているのは、議会で当該委員会の委員長が発言の形で行った簡単な報告だけだった(下の文書参照)。主役の議員たちは誰一人報告書を書いていない。しかも、日程が厳しかった28年の高知行き以外は、初日の視察報告だけ。24年は2日目以降の島根県内の視察内容が、27年の岡山県倉敷市における視察でも2日目以降に何をやったかが一切報告されていなかった。視察目的以外の日程については、町民に報告するつもりがないということだ。
(*下の文書、1枚目が24年岡山・島根視察の報告。2枚目が27年岡山・倉敷視察の報告。岡山・倉敷報告のうち2ページ目6行を省略)

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■呆れた夜の部-飲酒を伴う「懇親会」
 “視察目的の半分は観光”――そうとられてもおかしくない実態。しかも、議員視察の重みを打ち消すような「夜の部」があったことが、旅費明細から明らかになっている。下は、前述3回の視察における旅費明細。いずれの視察でも夕食は別料金で、4,500円~6,300円かかっていた。
(*下の明細書、上から22年、27年、28年分。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

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 わざわざ高い食事にした理由は、「飲酒」を伴う宴会のため。28年の工程表には「懇親会」と明記されていた(下の文書参照)。南大隅町は、人口7,000人台の小さな町。町議は12人しかいない。日頃、顔を合わせる機会の多いはずの町議たちが、2日連続で「懇親会」を開く必要などないだろう。食事をしながら視察内容を確認し合うならいざ知らず、飲酒というのだから論外。酒は議員の互助会費から支出している(議会事務局)というが、これでは、まともな視察報告など望むべくもない。

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■町会議長の苦しい言い訳
 まじめにやる気があるのかどうか――。観光と見られる視察後半の報告がなされていないことについて、同町議会の大村明雄議長に見解を求めたところ、議長は議会事務局を通じて次のように釈明する。
「南大隅町は、観光の町として振興を図ることとしている。そのため、各地の観光施設等のおもてなしの対応や、観光産業などの視察については日程の許す限り行くこととしている。報告書は、主たる目的に係る報告を掲載しており、観光施設などの視察については、帰町後の議員活動、議会活動に反映するよう話しているところである」

 いかにも苦しい言い訳である。そもそも、南大隅町は年々人口が減り続けており、町の経済を支えてきた農林水産業の振興を図りながら、新たな産業の創出にアイディアを出さざるを得ないのが現状。同町で有名な観光資源といえば本土最南端の「佐多岬」程度。残念ながら、役場などがある町の中心地からは1時間ほどかかる遠隔地で、佐多岬観光で町にカネを落とす人は少ないという。町議会が税金を浪費して、観光施設ばかり回る意味はあるまい。つまり南大隅町議会の委員会視察は“遊び半分”。その実態が、他の視察関連文書から明らかとなる。

(つづく)



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