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独裁政治の腐臭

2017年5月26日 10:00

首相会見会見2.png 一強の政治状況とは、すなわち「独裁」である。安倍政権のこれまでを振り返ると、まさに首相の独壇場。やりたい放題と言ってもおかしくない。
 特定秘密保護法、TPP、安保法、共謀罪法案は“強行採決”。集団的自衛権の行使や武器輸出解禁、教育勅語の教材使用は“閣議決定”という形で事を決してきた。いずれも、国家の根幹を大きく変える重要課題だが、主権者である国民の声は無視されたままだ。
 加計学園問題が政権を揺るがす中、改めて“安倍政治”を検証する。
  
■国を揺さぶる「閣議決定と強行採決」
 安倍晋三の政治手法は一貫している。広範な議論が必要な政策課題については、国民の理解が深まる前に一方的に決めるというもの。“強行採決”と“閣議決定”で国を動かすことが常態化している。
 国民の声を無視して理不尽を押し通した後、決まって「ていねいに説明していく」と釈明するが、この言葉が実行されたためしはない。共謀罪を含む組織犯罪処罰法の改正案にしても、23日に衆議院で強行採決。反対意見を一顧だにしない姿勢は、これまでと同じである。第2次安倍政権の足跡をまとめてみた。

1-安倍政権の歩み.png

 特定秘密保護法、TPP、安保法、共謀罪法案、集団的自衛権の行使容認、武器輸出解禁――。いずれも、安倍政権以前なら一内閣でようやく一つ片付くかどうかの重要課題だが、国見の声を無視し、数の力で強行突破してきた。議論を省く手法を、「決められる政治」だと胸を張るのは間違いだろう。安倍政治の本質は、民主主義と対極にある「独裁」でしかない。

 調子に乗った独裁者・安倍は、党内議論もすっ飛ばして、憲法を変えると発言。「2020年」と期限を区切る横暴さで、改憲を強行する構えだ。最高権力者の姿勢を真似たのか、自衛隊の制服組トップである統合幕僚長まで安倍の改憲発言を「ありがたい」と言い出す始末。憲法99条の憲法擁護義務(*「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」)などお構いなしの暴走がまかり通っている。軍人が独裁者に追随すると、国はどうなるか――。歴史を知らずとも分かる話だろう。

■共謀罪がもたらす「戦前」
 特定秘密保護法は、特定秘密を漏らした役人だけでなく、その内容を探ろうとした民間人まで処罰されるという内容。国民には、何が秘密なのか分からないというのだから、あちこちに地雷を敷設されたようなものだ。加えて、権力側が個人の心の中の思いまで「こうだ」と決めつけることのできる共謀罪法案を通そうというのだから、誰もが犯罪者になりうる社会の到来が確実だ。かつてこの国では、同じような法律が制定され、国家が国民をがんじがらめに縛りつけた時代があった。大正14年に制定された「治安維持法」である。

 治安維持法は、共産主義拡大の抑止を目的にしたもので、立法当時は資本主義と国体(天皇主権)に反対する運動を取り締まることに主眼を置いていた。その後、国際社会での日本の立場が変わるとともに、立法趣旨が拡大解釈されるようになり、昭和16年(1941年)3月に全面改正。政府批判をする勢力(国民)すべてが弾圧の対象となった。以後、無実の人間が数多く特高警察に検挙されるなど、国民を恐怖で支配する時代が到来する。特定秘密保護法と共謀罪法案は、運用次第で治安維持法と同じ効力を持つことになるだろう。「反対者は許さない」という姿勢が顕著な安倍の狙いは、まさにそこにある。

■腐敗した嘘つき政権
 独裁者は、平気で嘘をつき、国民をたぶらかす。理不尽な閣議決定や強行採決が繰り返されるたび、安倍が言ってきたことを振り返ってみれば分かることだ。
・手段的自衛権⇒米艦防護は海外で活躍する邦人を救うため
・安保法制⇒国民の安心・安全を守るため
・改憲⇒憲法に自衛隊を明記するのは、北朝鮮などがもたらす危機に対処するため
・共謀罪を盛り込んだ組織犯罪処罰法⇒東京オリンピック・パラリンピックを成功させるためのテロ対策
 
 実際には邦人が米艦に乗って紛争国から退避することなどあり得ないし、北朝鮮へは「自衛権」で対処可能。集団的自衛権は他国の軍隊を守るためであって、国民の安心・安全とは関係がない。テロ対策は必要だが、国民の心の動きを権力が勝手に監視する必要はあるまい。つまり、首相の説明はすべてこじつけ。「嘘」と言っても過言ではない。先の大戦中、「勝った、勝った」の大本営発表が国家を崩壊寸前まで追い込んだ歴史を忘れてはなるまい。特定秘密保護法、安保法、共謀罪法案、集団的自衛権の行使容認は、「戦争ができる国」にするための道普請であることに気付くべきである。

 安倍政治の「横暴と嘘」を端的に示しているのが加計学園問題であろう。前文部科学事務次官の爆弾証言で明かされたように、国家戦略特区を利用した加計学園の獣医学部新設に理不尽極まりない「総理のご意向」が働いたのは確実。「腹心の友」のために安倍が便宜供与を指示しない限り、「ご意向」という言葉は出てこないからだ。加計学園の問題は、安倍の横暴が招いた汚職事件なのである。官房長官や読売新聞が前次官の人格をどれだけ攻撃しようと、事務方トップだった人の身体を張った証言の重さには何の影響も与えない。

 政府は、「総理のご意向」文書を出所不明の怪文書と批判し、「文科省内には存在しない」と明言。関係者の国会招致にも応じていない。一方、前次官は「あるものを、ないとは言えない」と断言した上で、保有していた8枚の文書を会見で示している。一連の文書は上司への説明資料だったとも話しており、役所の中で「共有」されたのなら立派な公文書。「存在しない」はずはない。つまり、政府側の説明は十中八九「嘘」。南スーダンに派遣されていた自衛隊PKO部隊の日報を、最初は「不存在」とした政府の姿勢とダブる。

 閣議決定、強行採決、そして「ご意向」でのゴリ押し――。傲慢と嘘で国民を動かしてきた安倍政治が、腐敗の度を増しているのは確かだ。



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