デリヘル接待を受けていた疑いが出ている森田俊彦鹿児島県南大隅町長の陣営に、公職選挙法違反の疑いが浮上した。
同陣営の選挙運動費用収支報告書の記載から分かったもので、4月に行われた町長選挙の際、森田陣営は法の規定を超えた数の弁当を購入していた。
同町関係者の話によれば、森田氏の選挙事務所内で、食事の提供が認められている運動員や労務者以外の人間にも弁当を配ったとの話が出ており、買収にあたる可能性もある。
■過剰な数の仕出し弁当購入
HUNTERが同町選管に情報公開請求して入手した森田陣営の選挙運動費用収支報告書及び報酬支給者届出書によれば、同陣営が町選管に届け出た事務員は3名、車上運動員が4名の計7名。このうち、選挙期間中に報酬の支払いを受けた者は事務員2名、車上運動員4名の計6名だった。公選法が食事の提供を認めているのは運動員と労務従事者のみ。森田陣営の収支報告書には労務者報酬の記載がなく、食事の提供を受けることができるのは、実際に報酬を得た6名のみだったことになる。
単純計算で、6名なら朝・昼・夜3回の食事で18食。候補者本人を加えても21食、選挙戦は5日間で21×5=105食あれば足りる計算だが、実態は違っている。下は、森田陣営の食糧費支出をまとめた表。告示から4日目までは、選挙戦3日目を除きなぜか1日25食の仕出し弁当を購入していた。最終日には35食。選挙期間中を通じて購入された仕出し弁当は125食となり、明らかに過剰な弁当購入だ。
■しどろもどろの出納責任者
同町関係者の話によれば、森田陣営の食事は「仕出し弁当」と差し入れの料理。陣営関係者の多くが、選挙事務所内で飲食を行っていたという。運動員と労務者以外の関係者に食事の提供を行った場合は、公選法が禁じる買収行為。過分な仕出し弁当をどう扱ったのか、森田陣営の出納責任者に話を聞いた。
記者:収支報告書の記載内容についてお尋ねしたい。
出納責任者:4月で役を降りたので、問い合わせには対応していない。記者:選挙運動費用収支報告書に宣誓の判を捺している。説明責任があるはずだ。
出納責任者:選管の問い合わせには対応している。誤解を生むといけないので……。記者:あなたしか分からない話。簡単な話だ。なぜ1日25食もの弁当が必要だったのか、という点についてだ。
出納責任者:はい、はい。記者:運動員が6名。残りの弁当はどうしたのか?
出納責任者:食事については、私の方で弁当配布の形とか、とってないですから。分からないですから。記者:収支報告書の記載は、単に存在する領収書に従ったということか?
出納責任者:はい。記者:帳簿は保管しているのか?
出納責任者:帳簿は全部預けている。えーっと、後援会の方かどうかよく分からないんですが……。役を降りた時に、お返ししたものですから。記者:どう弁当を始末したのか、分からないのか?
出納責任者:はい。そうですね。記者:あなたは、常に選挙事務所にいたのか?
出納責任者:居りました。記者:弁当をどう始末したのか本当にご存知ないのか?
出納責任者:女性の方がいらっしゃったからですね……。記者:森田陣営では、弁当は6名の人にしか出せない。朝食は出していないと聞いているが?
出納責任者:はい。出してないですね。記者:そうすると、昼と夜だけ。6(名)×2(食)で12食。町長を入れても14食になる。そうすると、11食分の弁当が余ることになるが?
出納責任者:エーッと……。記者:運動員以外に、食事を提供したのではないか。そうなると、買収にあたるが?
出納責任者:それはないと思うが……。残っていたのは見た記憶がある。記者:運動員以外が弁当を食べていたという証言があるが?
出納責任者:運動員以外が食べることはないと思う。記者:地元選出の県会議員が、事務所で弁当を食べていたという証言がある。県議は選挙区外在住で問題はないが、町民への弁当提供は公選法に抵触する。
出納責任者:それは、ちょっと分からない。運動員も少なかったから。残っているのを見たことはある。もったいないなと、思っていたが……。記者:では、なぜ数を多めに注文されたのか?6名しかいないのなら、必要ないはずだ。
出納責任者:そうですね。女性の方々の加勢もいらっしゃったので……。記者:その方々には出せない。実費をもらったなら別だが、そうした収入の記載はない。
出納責任者:はい、はい、はい。記者:なぜ弁当を毎日25個頼んだのか?
出納責任者:はい、はい、はい……。記者:あなたも弁当を食べたのではないか?
出納責任者:私はですね、はい、食べたですね。記者:なんであなたが弁当を食べたのか?それは違法ではないか?
出納責任者:私はですね、え~、実は私の方はですね、後援会の経費だと思ってるんですが……。記者:後援会の経費で、弁当を食べたということか?
出納責任者:はい。私は、後援会の経費という形で……。記者:選挙中は、後援会活動はできない。
出納責任者:はあ、はあ、はあ、はあ……。記者:あなたが買収されたということになるが?
出納責任者:ちょっと分からないですね。記者:後援会活動はできないが?
出納責任者:私は、家に帰って、あの~。記者:あなたはさっき、弁当を食べたとハッキリ答えた?
出納責任者:記憶にないです。記者:言うことはコロコロ変わるのは何故か?買収行為があったのではないか?
出納責任者:いやいや……。記者:公選法に抵触する弁当の提供があったということいいか?
出納責任者:いやいや、それはないですよ。記者:あなたも、弁当を食べたと言ったが?
出納責任者:いや、食べてない。記者:あなたの話はコロコロ変わる。
出納責任者:選管には答えているが、一般には対応していませんから。取材にも一切答えていないから。記者:不正があったか、なかったかを聞いている。
出納責任者:答える必要がないですから。記者:答える必要がないというのが、正式な回答か?あなたは、最初、分からないと言ったが?
出納責任者:分からないという答えしかないです。記者:分からないというのが、本当のところか?
出納責任者:ですから、答えることができないんですよ。記者:答えることができない?
出納責任者:はい。
■支持者への弁当提供か?
説明がコロコロ変わる出納責任者。最後は、「答えることができない」と無責任な逃げを打ったが、収支報告書の記載が事実なら、森田陣営は運動員以外への弁当提供を意図して、過分な弁当発注を行っていたとしか思えない。下は、森田陣営が町選管に提出した選挙運動費用収支報告書の記載のうち、人件費支出の部分だ。
前述した通り報酬を受け取った同陣営の運動員・事務員は6名。朝食を出さなかったことが確認されており、6×2(昼・夜)=12食で足りる。選挙戦は5日間で、12×5=60食。しかし報告書にある人件費支出の記載によれば、事務員2名が仕事をしたのは、それぞれ車上運動員より2日少ない3日間だった。つまり、期間中に必要な弁当の数は56食で、候補者本人分(2食×5日=10食)を入れても最大66食分あれば十分だった。実際の弁当購入は5日間で125食。森田陣営は、必要な数の倍の弁当を購入していたことになる。しかも、最終日は運動員数をはるかに超える35食。支持者への飲食提供が行われた可能性が極めて高い。接待を受けるのが大好きだといわれる森田町長。陣営ぐるみで支持者への接待を行っていたとしたら、笑い話にもならない。