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議事録に残っていた総理の「ご意向」
「総理の意向」加計学園問題が急展開(下)

2017年5月19日 08:55

首相会見会見2.png 正式に残された政府の記録に、“総理のご意向”が明記されていた。「法改正を要しないものは直ちに、法改正を要するものは次期国会への法案提出を視野に、それぞれ実現に向けた議論を加速してまいります」――。これは国家戦略特別区域諮問会議(議長:安倍首相)の席上、安倍首相自身が発した言葉だ。「法改正を要しないもの」の中に、加計学園が狙う獣医学部新設が含まれていたこともは言うまでもない。
 “ご意向”が示された後、愛媛県今治市と加計学園が申請した岡山理科大学獣医学部の新設が、あっという間に決まる。
 
■出来レース
 国家戦略特別区域諮問会議は平成27年12月に「広島県と今治市」を特区に認定。28年11月には、文部科学省が過去50年以上認めていなかった獣医学部の新設を特例で認める告示を出していた。この動きを受けた今治市は今年3月、市が所有する評価額37億7,500万円の土地を加計学園に無償譲渡し、96億円もの補助金支給まで決めている。

 結論から先に述べるが、加計学園・岡山理科大学獣医学部新設を決めた国家戦略特区の協議過程は、明らかな出来レース。「加計ありき」の証拠が、政府の正式な記録の中に残っていた。

 国家戦略特区を利用した獣医学部の新設を希望していたのは、加計学園と京都産業大学。政府は、国家戦略特別区域諮問会議、同会議ワーキンググループ、区域会議分科会などで各個の特区申請について議論していたが、この段階で京産大の申請は袖にされていた。

 今治市(加計学園)の申請については、ワーキンググループの会議で2回議論されているが、京産大の申請については1回のみ。区域会議分科会では「今治分科会」を設置し加計学園の計画を2度議論。一方、京産大の申請内容については一顧だにされていなかった。

 下は、加計学園と京産大の申請について、議論された会議を一覧表にしたもの。京産大がいかに軽く扱われているか分かる。表中の「八田」は、国家戦略特区諮問会議有識者議員でワーキンググループの座長を務めた八田達夫アジア成長研究所所長。「山本」は、山本幸三特区担当大臣である。「安倍」は、もちろん“ご意向”を発した総理本人だ。

1-特区.png

 官邸のホームページ上に公表された議事録から、八田氏、安倍首相、山本大臣の各会議での発言をたどってみると、加計学園に対する特別な配慮が働いていたことが分かる。平成27年6月5日に開かれたワーキンググループにおける今治市からのヒアリング。座長の八田氏はむしろ獣医学部新設に消極的で、公務員獣医師が不足する現状を訴える愛媛県側に対し、“獣医師を集めたいなら奨学金を出して愛媛県に就職してもらえばいい、それで大部分の問題は解決する”といった趣旨の発言を行っていた。12月10日の第2回ヒアリングではダンマリ。ところが、28年9月21日の「今治分科会」では、「私はこれはぜひ推進していくべきだと思っております」と豹変していた。
 
 平成28年10月4日の国家戦略特別区域諮問会議。八田氏は、次のように熱弁を振るっている。

――最後に、先ほど今治市の分科会での話が出ましたので、ちょっとそれについて、この民間人ペーパーから離れますが、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。今治市は、獣医系の学部の新設を要望しています。「動物のみを対象にするのではなくてヒトをゴールにした創薬」の先端研究が日本では非常に弱い、という状況下でこの新設学部は、この研究を日本でも本格的に行うということを目指しています。さらに、獣医系の学部が四国には全くないのです。このため、人畜共通感染症の水際対策にかかわる獣医系人材の四国における育成も必要です。したがって、獣医系学部の新設のために必要な関係告示の改正を直ちに行うべきではないかと考えております。

■議事録に残された「総理のご意向」
 ワーキングチームの座長である八田氏が、今治市=加計学園の計画を強烈に後押しした格好。この時点で結論が出たようなものだったが、これを受ける形で安倍首相は、遠回しながら「法改正を要しないものは直ちに、法改正を要するものは次期国会への法案提出を視野に、それぞれ実現に向けた議論を加速してまいります」と発言していた。

 11月9日の同会議では、山本特区担当大臣が総理の“ご意向”を確認している。
――前回の会議で、重点課題につきましては、法改正を要しないものは直ちに実現に向けた措置を行うよう総理から御指示をいただきましたので、今般、関係各省と合意が得られたものを、早速、本諮問会議の案としてとりまとめたものであります。内容といたしましては、先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置、農家民宿等の宿泊事業者による旅行商品の企画・提供の解禁となっております。

 「直ちに」行うべきものが、≪先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置≫と明言しており、これは加計学園が目指すとしていた獣医学部の設置目的。わざわざ総理の“ご意向”の内容を説明し、加計の事業を後押しした形となっていた。昨年の10月以降、加計学園による獣医学部設置計画が急速に進んだのは、明らかに国家戦略特別区域諮問会議での総理発言が起点。“ご意向”は役人が忖度したものではなく、総理自らが口にしたものだったということになる。安倍総理が、お友達のために一線を越えたのは確かだ。



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