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聞いて呆れる「誠実に公務」 市民を犯罪者に仕立てた福岡市役所の手口

2017年5月12日 08:44

市役所 44.jpg 役人が作った文章の酷さについては十分理解しているつもりだったが、これほど醜悪な役所の文書は見たことがない。
 高島宗一郎市長が進めてきた屋台公募に絡み、昨年10月に起きた市役所内での「暴行事件」。生活ができなくなると窮状を訴えた屋台の女将を屋台担当課長が愚弄した上に、暴行されたとして女将を犯罪者に仕立て上げたというものだった。
 刑事告発までの顛末について関係文書を情報公開請求したところ、開示されたのは、担当課長の一方的な言い分だけを記した報告書と課長自らが起案した決済文書だけ。いずれの記述も、福岡市のレベル低下を物語る、お粗末極まりない内容だった。

 “事件”の概要を振り返っておきたい。事の発端は高島宗一郎市長の発案で進められてきた屋台公募。関係者の話によると、「暴行事件」が起きたのは昨年の10月で、営業場所である市内赤坂地区で営業ができなくなることに疑問を抱いた屋台の女将が、所管課であるにぎわい振興課を訪ね、三笘和弘課長に説明を求めた時のことだったという。屋台の女将にしてみれば、営業場所が一方的に公募エリアから外されるのは寝耳に水。しかも自分の屋台は今年3月末で許可取り消しとなる「名義貸し」であり、営業自体ができなくなる。数か月前にいきなり廃業を言い渡されたも同然で、まさに生活がかかった切実な問題だった。

 赤坂地区は、なぜ屋台の営業場所から外れたのか――。問い詰める屋台の女将に、三笘課長は「場所については選定委員会が決めた」。対応に困るような6か月前という時期に、なぜ突然赤坂地区からの屋台締め出しを通告してきたのかという問いに対しても「答える必要がない」などとして、説明責任を放棄していた。存続を願う常連客の署名はについては「見る必要がない」。あげく、「(そんなに客がいるなら)店舗をやったらいいじゃないか」と言い放っていた。生活を奪われる相手を見下す役人に、女将が怒るのは当然だろう。思わず課長の胸ぐらを掴んだはずみに、課長の首のあたりをひっかいたのだという。「警察呼べ」とわめく課長。同行した赤坂地区の自治会長と番組制作会社のスタッフがその場を収め、30分以上話し合いを続けたというが、福岡市はその後福岡県警に告発状を提出。屋台の女将は公務執行妨害と傷害で略式起訴され、罰金15万円を支払っていた。

 自分たちの非は棚に上げ、抗議した市民を犯罪者に仕立て上げる高島市政――。HUNTERは先月、『にぎわい振興課で起きた暴行事件に関する全ての文書』を開示するよう、福岡市に請求していた。開示決定期限延長の末、出てきたのは3枚の公文書。昨年10月5日に起きたトラブルの記録と、記事告発した際の決裁文書だった。まず、事件当日の出来事の記録。作成者は、“被害者”本人の三笘課長である(以下、赤いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)。

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 都合の悪いところはすべて省き、あたかも自分が被害者であるかのような書きぶりだ。当日の課長と女将とのやり取りを知らない人間が見れば、「非は屋台の女将にある」としか思わないだろう。実際には、前述した通り課長の独り舞台。精神的に市民を追い詰め、突き放し、あげく愚弄していた。
≪(女将を)制止する目的で「警察を呼んでくれ」≫と叫んだことになっているが、女将が課長の胸ぐらを掴んだ瞬間に同行していた自治会長と番組制作会社の社員が止めに入っており、わざわざ叫び声を上げて騒ぎを大きく必要などなかった。大げさな記述は、相手を罪に落とすための作為としか思えない。
 
 記録に中にある≪特定の人だけに公募場所に係る情報を事前に話すことはできない≫も、ふざけた話だ。赤坂地区の屋台をなくすというなら、当該屋台にはいち早く知らせるのが筋。わずか数か月前に店仕舞いを通告されても、地域の常連客を抱えている屋台は対応のしようがない。まさに生活がかかる話であるにもかかわらず、役所の論理で市民の暮らしを切って捨てる高島市政の在り方には、怒りを禁じ得ない。

 歯向かう相手は徹底して叩くのが高島流。職員にもその考え方が浸透しているらしく、告発の決裁文書は、さらに酷い内容だった。それが下。

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 起案の趣旨は「国等が行う事務に関する情報であって公にすることにより、当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」(「公文書非開示決定通知」より)という、訳の分からない理由でほとんどが黒塗り。しかし、一部開示された記述には、呆れるほど幼稚で大げさな一文があった。担当課長に愚弄され怒った女将の行為が、≪本市の重要施策である屋台公募に伴い発生した大事件≫だというのである。『大事件』――開いた口が塞がらないが、この決済文書を作成したのも三笘課長本人。滑稽というしかない。

 ≪誠実に公務を遂行している本市職員への暴力行為を絶対に看過しないという厳正な姿勢を明確にする≫という一文に至っては、腐った組織の恐ろしさを感じさせるものでしかない。“被害者”とされるにぎわい振興課の三苫課長が、「誠実」とは真逆の姿勢で仕事を行っていることがハッキリしているからだ。電話で確認すれば済む話でも「市役所に来い」が、同課長のHUNTERに対する姿勢。昨年来、何度も「市役所に来い」を連発されている御仁なのである。今年2月には“暴行事件について話を聞きたい”という記者の用件を聞いた上で、またしても「市役所に来い」。にもかかわらず、当事者が三笘課長であることを明確にしたとたん「その件については話せない」……。のこのこ市役所に出向いていれば、記者は無駄足。不誠実とはこういう人のことを言う。税金で飯を食っている立場であることがまるで分っていない三笘課長が、“誠実に公務を遂行している本市職員”であるはずがない。

 窮状を訴える市民を愚弄したあげく、相手の落ち度を捉えて犯罪者に仕立てる市役所。福岡市民は、いい加減高島市政の本当の姿に気付くべきだろう。市長がやる派手なことばかりが報道される福岡市だが、市民の暮らしが向上したという話は聞いたことがない。



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