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「東北でよかった」と沖縄の基地問題

2017年5月 2日 08:15

 「(東日本大震災は)東北でよかった」と発言した大臣がクビになった。事あるごとに「被災者に寄り添う」と述べてきた安倍首相の嘘が露呈した形だが、沖縄県民を「土人」と蔑んだ大臣は留任したままだ。政府・自民党は、同じ日本人の住む沖縄に対して、寄り添うどころか冷徹な仕打ちばかりを続けている。
 安倍政権は25日、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先とされる名護市辺野古沿岸部の護岸工事着手に踏み切ったが、本土側の反応はにぶいもの。大手メディアの報道内容にも、力を感じない。
 基地問題に苦しむ沖縄に、国民の大半が寄り添っていないのは事実。本土の人間の心のどこかに、「沖縄でよかった」という思いはないか――。

■「東北でよかった」を批判できるのか?
 今村雅弘前復興担当相にとって、「東北でよかった」には二つの意味があったはずだ。一つは、同氏が語っているように、被害が甚大になる「東京でなくてよかった」。そしてもうひとつは、今村氏の選挙区である「佐賀でなくてよかった」であろう。失言・暴言との厳しい批判を受けるに当然の一言だったが、実は東北以外の地域に暮らす日本人の心底には、認めたくはなかろうが同じような思いが眠っているはずだ。「絆」という言葉に現実味があったのは震災後1~2年の間だけ。東北とそれ以外の地域の温度差は、年々拡がっているのが実情だろう。

 東北は、東日本大震災で2万人近くの犠牲者を出し、福島第一原発の事故による放射能被害によって広大な土地を奪われた。今も、避難生活を余儀なくされている人たちの数は10万を超える。「東北でよかった」の一言は、東北だけでなく、被災地のために力を尽くしてきた全ての人に対する侮辱だ。だが、年月とともに震災の記憶が薄れているのは、各地で運転を止めていた原発が次々に再稼働する状況を見ても明らか。国民が、放射性物質に伝来の土地を奪われ今もなお避難生活を送っている福島の人たちと向き合っていれば、原発再稼働を進める政権はとっくに吹っ飛んでいたことだろう。「東北でよかった」への厳しい批判は、東北以外に住む日本人への、形を変えた問いかけでもある。

■「沖縄でよかった」を否定できるか?
 今村前復興相は、東日本大震災が「東北でよかった」と発言し、更迭された。しかし、沖縄を予算で脅し、土人発言を擁護したに等しい愚かな大臣は、何故かクビになっていない。

 沖縄県東村(ひがしそん)高江の米軍ヘリパッド建設現場で、警備にあたっていた大阪府警の機動隊員が市民に対して発した「土人」の一言。官房長官が「不適切」と明言し、法務大臣が「差別用語」だと認めたにもかかわらず、担当大臣として沖縄の怒りを代弁すべき鶴保庸介沖縄担当相は、一貫して“差別”を否定し、土人発言を容認した。大臣就任以来、沖縄への敵意を剝き出しにしてきた鶴保氏の発言をまとめた。

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 周知の通り、沖縄は太平洋戦争末期に本土の捨て石にされ、国内唯一の地上戦で県民の4人に1人が犠牲になった。戦後は米軍の「銃剣とブルドーザー」に県土の大半の土地を奪われ、米軍基地に「占領」されたままだ。県土の2割近くを米軍基地が占める自治体など、沖縄以外にはどこにもない。戦前・戦中、そして現在も本土の日本人の心のどこかに「沖縄でよかった」という思いが横たわっているのではないか。

 今村氏に限らず、閣僚や副大臣、政務官といった要職に就く政治家が東北の人たちを「土人」と呼んだらどうなるか。おそらく、発言者は時日を置かずにクビになるに違いない。しかし、沖縄から総スカンをくらった鶴保沖縄担当相へのお咎めは一切なし。この能ナシ政治家が大臣の椅子にすわっていられるのは、政府・自民党が沖縄を本土とは違うところだと見下している証左だろう。

 本土の都道府県における地方選や国政選挙のたびに、「基地はいらない」と審判を下したとする。国がそうした民意を無視して基地建設を進めたとすれば、間違いなく大手メディアは連日トップニュースで国を糾弾するだろう。安倍寄りの読売・産経とておそらく右へ倣い。報道の集中砲火を浴びた政権は、たちまちダッチロール状態に陥ることになる。しかし、沖縄のこととなると、ほとんどの本土人は知らん顔。メディアも、アリバイ作り程度の報道しかやっていない。「東北でよかった」に反応した私たち本土の人間も、「沖縄だから仕方がない」という言い訳がましい本音を抱えている。だから、沖縄のことは対岸の火事。そこには「東北でよかった」と通底するものがある。

 東北のことも沖縄のことも、もちろん原発のことも、私たち「日本人」全体の問題だ。日本人なら、復興の現状を共に語り、沖縄の苦痛を分かち合い、原発の理不尽に心から怒りの声を上げるべきではないのか。この国の未来を決めるのは、安倍でも無能な大臣たちでもなく、主権者たる私たち国民なのだから。



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