17日、朝日新聞が、安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が国家戦略特区の指定を受けた愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画をめぐり、特区を担当する内閣府が文部科学省に「総理のご意向だと聞いている」「官邸の最高レベルが言っている」などと伝えた時の記録が文書として残っていたことを報じた。
政府・自民党が安倍昭恵首相夫人の国会での証言を回避し、森友学園問題に幕引きを図ろうとしていた矢先の疑惑発覚。国家戦略特区を利用し、37億7,500万円の土地と96億円もの補助金が学園側へ渡ることになった不可解極まりない事業経過を検証した。(右は朝日新聞17日朝刊の紙面)
■関連文書非開示の実態
加計学園が、特区を利用し愛媛県今治市「いこいの丘」に建設中の岡山理科大学獣医学部。約16.8ヘクタール、評価額36億7500万円の広大な土地が今治市から加計学園に無償譲渡され、県と市からはさらに施設整備費として96億円という莫大な補助金まで支給される計画だ。今治市議会で土地の譲渡と補助金支給が決まったのは今年3月。疑惑が囁かれる中、わずか数日の審議で結論を出していた。
加計学園疑惑の焦点は、特区申請から獣医学部新設許可に至る過程に「安倍晋三総理」の介在があったか否か。朝日のスクープは、「加計に獣医学部を開設させろ」という首相本人の指示があったことを示唆しており、夫人の関与が疑われている森友学園問題とは事の大きさが違う。特区に関して交わされた政府内部におけるやり取りの解明が待たれるが、じつは獣医学部用地を無償譲渡した今治市と加計学園側とのやり取りも不明な部分が多い。
HUNTERは今年3月、今治市に対し、同市と加計学園側との間で交わされた契約や両者の協議過程などに関する文書の開示を請求。開示決定期限延長の末、5月初旬になってようやく一部の文書を入手していた。下が、関連文書の内容と、開示、部分非開示、非開示の一覧。呆れたことに、大半が非開示だった。開示決定通知には「(関係者との)率直な意見交換が不当に害される」「関係機関との信頼関係を失う」といった理由が書いてあるが、要は情報公開条例の恣意的な運用による隠蔽。今治市の隠蔽姿勢は異常と言うほかない。
計22件の文書のうち、開示されたのは今治市と加計学園との間で結ばれた「解除条件付土地無償譲渡契約書」及び土地の無償譲渡と補助金支給を約した「岡山理科大学今治キャンパスに関する基本協定書」、同市職員が獣医学部誘致への対応を相談するため有識者を訪問した時の復命書及び当該有識輩が発したメッセージ文書の4件だけ。開示請求に対しては、ゼロ回答に等しい内容だった。(*下は、「解除条件付土地無償譲渡契約書」と「岡山理科大学今治キャンパスに関する基本協定書」の表紙部分)
■応援メッセージは文科省関係者
気になるのは、今治市の職員が獣医学部誘致に向けた相談のために訪問した有識者。いずれも文科省が設置している「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」の元、現委員で、同省の獣医学行政に影響力のある人物だった。二人とも製薬会社出身。竹中登一氏は元アステラス製薬の会長で、「製薬産業政治連盟」の会長も務めていた製薬業界の大物。同連盟は安倍首相の政治団体をはじめ、多数の国会議員に政治資金を提供していることが分かっている。
市職員が訪ねた協力者会議の関係者二人が、そろって愛知県知事と今治市長に「応援メッセージ」を寄せた形になっているが、前段部分はまったく同じ文章(*下がそのメッセージ。赤い囲みはHUNTER編集部)。様式も同じで、あたかも役所が用意した文書に署名しただけの形となっていた。獣医学部の新設に慎重だった文科省への圧力に利用した可能性は否定できない。
■首相夫妻と加計学園の深い関係
今治市と加計学園側の協議過程でさえ、これだけ怪しいことだらけ。国家戦略特区の中で、加計学園の獣医学部新設構想が選ばれるまでの過程はさらに不可解なことが起きていた。背景にあるのは、首相夫妻と加計学園グループとの深い関係。首相と加計の総帥・加計孝太郎氏との縁は濃く、海外留学時代からの「腹心の友」。森友問題で注目を集める昭恵夫人も、加計グループと密接な関係があることが分かっている。昭恵夫人は、加計学園が運営している認可外保育施設の「御影インターナショナルこども園」の名誉校長。さらに系列の教育施設に、当時の文科大臣夫人とともに次のような挨拶文を寄せていた。
森友学園問題と同じような構図。その裏で、岡山理科大獣医学部がどのような経緯で新設を認められたのか――。
(つづく)