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政府の犯罪 ― 加計学園獣医学部新設の裏

2017年5月31日 08:45

1-岡山.png 安倍晋三首相の「ご意向」が示されたのかどうかにかかわらず、国家戦略特区を利用した加計学園の獣医学部新設が、政権ぐるみの便宜供与であることは疑う余地がない。
 首相とその親友の関係が背景にある疑惑でありながら、所管省庁である文科省の実務を取り仕切っていた前事務次官の証言を、安倍政権は黙殺する構え。真相を明かされた瞬間、政権そのものが吹っ飛ぶからに他ならない。
 「加計学園だけを特別に扱ったわけではない」と強弁を続ける政権側だが、この問題の核心部分である“大学設置認可基準に関する告示”をめぐる動きから、同学園の提案しか認められないような形を作り上げていたことが明らかとなっている。 

■「岩盤規制」は虚構
 加計学園が獣医学部を新設するにあたって最大の壁となっていたのが、文科省が平成15年に告示した「大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準」。文科省は、大学の新設等に関する認可基準について「歯科医師、獣医師及び船舶職員の養成に係る大学等の設置若しくは収容定員増又は医師の養成に係る大学等の設置でないこと」と規定しており、獣医師養成のための学校・学部の新設を認めていなかった。同様の状態が50年以上続いており、安倍首相とその周辺はこれを「岩盤規制」だったとしている。だが、この主張は間違い。政権側が勝手に持ち出した虚構に過ぎない。

 そもそも岩盤規制とは、規制を解除あるいは緩和することで多くの国民に恩恵をもたらすにもかかわらず、役所が従来の規制方針を頑なに守ること。分野ごとの守旧勢力に「既得権益」があるからだ。しかし、獣医学部新設に反対してきた学会や日本獣医師会に特別な既得権があるわけではなく、逆に規制を緩めることで獣医師過剰が懸念される状況だ。つまり、獣医学部新設を認めない文科省の方針は「岩盤規制」ではなく、獣医学分野の秩序維持が目的。政権側の主張は筋が通らない。さらに言うなら、学部新設で利益を得るのは加計学園だけ。一部のためだけの規制緩和が国策としてまかり通ったことに、最大の問題があると言うべきだろう。

■獣医学部新設 ライバル京産大を断念に追い込んだ手口
 加計学園の野望を遂げさせるため政権ぐるみで行ったのが、前述した「大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準」の無効化である。国家戦略特別区域諮問会議の結果を受けた内閣府と文科省は、昨年11月18日から12月17日の期間で獣医学部の新設を認める告示案についてパブリックコメントを実施。意見募集にあたって公表された内容に、加計学園を助けるためのカラクリがあった。内閣府のホームページ上に残されている募集概要(下の文書参照。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)によって、“犯意”を証明することが可能だ。

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 パブコメ募集の時点で獣医学部新設を特区申請していたのは加計学園・岡山理科大学と京都産業大学の2校。京都大学iPS細胞研究所との連携などを柱とする京産大の計画案が充実しているのは、誰の目にも明らかだった。計画内容で差をつけるのは無理。そこで政府は、無理やり“物理的な条件”を考え出す。

 まず、昨年11月9日の国家戦略特別区域諮問会議で唐突に出された「追加の規制改革事項」を同会議の決定事項にし、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」として事実上の地域規定を設ける。大阪府立大学に生命環境科学部獣医学科があることから“関西圏は除外”ということだ。

 次に政府側は、“京都と大阪は違う”と言われることを恐れたのか、京産大が学部新設を断念せざるを得ない別の条件まで付け加える。概要の「2、内容」の冒頭、「上記趣旨を満たす平成30年度に開設する獣医学部」の一文だ。獣医学会が抱える問題として挙げられるのは獣医学分野での「教授」が不足していること。ましてや特区申請が認められるかどうか分からない状況では、教授の先行確保などできるはずがない。当然、建物などハード面での準備も不十分。普通に考えれば、1年3カ月で新学部建設と人材確保ができるわけがない。地域と開学時期を指定されたことで、京産大は獣医学部新設断念に追い込まれていた。公平・公正を欠いた特区認定の過程は、政府による犯罪行為と言っても過言ではあるまい。

 でっち上げ諮問会議に、理不尽な条件提示――。今年1月、文科省・内閣府の共同告示で獣医学部新設を認めた政府の学部設置者募集には、加計学園しか応募しなかった。つまりは、仕組まれた「一者応札」。政府が、首相のお友達に便宜供与を図った前代未聞の“事件”である。



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