自民党の中川俊直衆院議員が18日、女性スキャンダルで経済産業政務官を辞任した。重婚の疑いも浮上しており、公人としては当然の身の振り方だろう。議員辞職が視野にいる事態だが、地方にはさらに悪質な政治家がいる。
東京への公務出張の度に、高額な飲食やクラブでの遊興といった接待を受け、ホテルの自室でデリヘル接待まで受けていた鹿児島県南大隅町の森田俊彦町長だ。
放射性廃棄物(核ゴミ)の処分場誘致を巡って数々の「嘘」を繰り返し、町民を欺いてきた森田氏。税金を利用した性的接待の甘受まで明らかになった以上、潔く辞職すべきだろう。
■森田町長への質問取材
電力業界関係者から受けた接待について、HUNTERは18日、改めて南大隅町役場にFAXで質問書を送付した。森田町長が接待を受けたのは、公務出張先でのこと。出張そのものの必要性にも疑義が生じており、税金を使った旅行である以上、疑惑について自治体としての説明責任を果たすのが当然だからだ。
同じ内容の質問書は、町長選挙を目前に控えていたことから、第三者の目に触れないよう配慮し「親展」と明記して先月21日に森田町長の自宅に郵送。22日には役場にも「親展」で郵送したが、自宅分は封を開けずに「受取拒絶」で返送されてきていた。役場への郵送分については、回答がない。質問書は、以下の内容になっている(実際の質問書では●、▲、〇の部分が実名)。
南大隅町長
森田俊彦様取材質問書
前略 貴殿は平成25年3月19日に開かれた南大隅町議会で、町長就任後、●●●●●●商事株式会社●●●代表側から接待を受けたことはないと断言しておられます。しかしながら、私共の取材で以下の内容が確認されました。
・貴殿は、平成22年以降、東京出張の度に前出・●●●氏と東京都内で会い、赤坂プリンスホテル内の料理店や都内向島の料亭「桜茶ヤ」などで飲食の接待を受け
・その後の流れで銀座のクラブ「セントポーリア」「オフィス」等でも、接待を受けた。
・飲食接待のあとは、宿泊先ホテル「〇〇〇〇麹町」「○○○○〇〇〇半蔵門」「ホテル○〇〇〇半蔵門」などの自室に●●●●●●商事▲▲▲▲氏の手配で女性を招き入れ、性的交渉を持った。以上の内容について、●●●●●●商事側に証言を求め、同社側から提示された領収書、カード支払い明細等の証拠書類や貴殿の出張命令書などを精査し、さらに確認された店舗やデリバリーヘルス関係者に取材した結果、事実であると判断いたしました。貴殿が支払を行った形跡もありません。
接待は疑いようのない事実であり、議会答弁は虚偽です。特に、平成24年から25年1月にかけての接待については、時効が5年ということから収賄事件として立件が可能な事態であると思料しております。また、公費出張先でのわいせつ行為は、法律に抵触する疑いが濃い行為であるばかりか、公人としての資格を厳しく問われる暴挙であると指弾せざるを得ません。以上の取材結果と当社の見立てに対し、貴殿の見解を求めます
質問書への回答期限は、きょう21日。報道各社による核ゴミ絡みの取材に対し、4年間逃げ回ってきた森田氏のこと。今回も沈黙して、時が過ぎるのを待つつもりだろうが、そうはいかない。疑惑は、公費出張の際に行われた違法行為に関するもの。自身が掲げた「正々堂々」の旗の文句のように、正面から疑惑と向き合い、説明責任を果たすべきだろう。
■嘘で守った町長の座
これまで森田氏は、数々の疑惑について「HUNTERの記事はでっち上げ」「対立陣営の策謀」――などといった「嘘」やごまかしで町長の座にしがみついてきた。森田氏の「嘘」は枚挙に暇がない。まず、電力業界関係者からのモーターボート授受については説明が二転三転し、今年になって実はタダでもらったものだったことが明らかになっている。
核関連施設誘致に関する「委任状」の件にしても同じ。当初、取材や議会質問に「書いていない」と断言しながら、数週間後に実物が報道されて、謝罪に追い込まれた。この時、町のホームページに掲載された森田町長の「一連の報道(核関連施設誘致)についての御報告」という一文が残っている。
このたび一連のテレビ報道等につきまして、町民皆様へ大変ご迷惑をお掛けし、またご心配いただきましたことに対し、衷心よりお詫び申し上げます。
この件に関しましては、平成19年当時、本町が企業誘致・地域活性化策として前町長時代、議会議員の賛同の下、誘致運動が進められ、当時商工会長でありました私も推進要請を受け、誘致活動推進に動いた事は事実であります。
その後、町長に就任させていただき、町政座談会におきまして、町民の皆様より誘致すべきではないとのご意見が多かったため、私は商工会内部の推進組織に属していた時の考え方と、町長就任後広く町民皆様の意見を聞く立場において、町民の総意に大きな温度差を感じた次第であり、町長として誘致すべきではないと考え方の軌道修正をいたしました。
そのような経緯の下、あの3.11の東日本大震災による原発事故の悲惨さを目の当りにし絶対に作るべきでないと政治判断、誘致は絶対にすべきではない旨決断いたしました。
過日、報道のありました委任状につきまして、私は軽率であったことを猛省し、本件について町民皆様へ深くお詫び申し上げます。
なお委任状については、5月1日相手方より原本が返却され、この件につきましては相互理解の上、全ての委任事項破棄の手続きも完了いたしました事をご報告申し上げます。
今後においては「核関連施設 立地拒否条例」の制定に基づき、私の任期中このような施設の誘致は改めて断固拒否の宣言をし、その政治姿勢を今後も厳しく貫いて参ります。
2期目の大きな政策課題であります「観光元年スタート」に、町民皆様からの大きな期待と、鹿児島県全体の経済浮揚が、佐多岬開発にかかっており、本町が 過疎化の波に埋没しないよう職員と共に新しい知恵を出し合い、これまで頂きました叱咤・叱責を真摯に受け止め、全身全霊で引き続き町民皆様に十分ご理解い ただける政治姿勢で尽力していく覚悟で御座います。
今回報道の件、一連の事案につきましてご迷惑をお掛けいたしましたことに対し、わたくし南大隅町長 森田俊彦 は、改めまして町民皆様へお詫び申し上げ、書面にて御報告に代えさせていただきたいと存じます。町 民 各 位
平成25年5月南大隅町長 森 田 俊 彦
≪町長に就任させていただき…中略……町長として誘致すべきではないと考え方の軌道修正をいたしました≫とあるが、これは真っ赤な嘘だ。森田氏が町長に就任したのは、平成21年4月。委任状は、同年5月28日に書かれており、「公印」まで捺されていた。
3.11=東日本大震災の発生は平成23年。委任状に関する報道があったのは25年4月。≪原発事故の悲惨さを目の当りにし絶対に作るべきでないと政治判断、誘致は絶対にすべきではない旨決断いたしました≫と固い決意をしながら、2年間も委任状を放置するはずがない。森田氏が委任状の返却を受けたのは、報道で叩かれた25年4月以降。少し考えれば、整合性がない説明だと気づきそうなものだが、町民は森田氏のペテンに引っかかった。
■出処進退、自ら判断を
モターボートについても、委任状についても、説明はすべて「噓」。おまけにデリヘル接待とくれば、辞任するのが当然だろう。今年2月、モーターボートに関する真相を報じたHUNTERに対し(参照記事⇒“核ゴミ疑惑の南大隅町長 モーターボートの「嘘」明らかに”)、町民の前で「訴える」と強がって見せた森田氏。デリヘル接待についても合わせて訴えていただければ有難い。万全の態勢で、すべての証拠を開示することを宣言しておく。これはHUNTERから町長への、事実上の辞職勧告と受け取ってもらって結構だが、政治家の出所進退は自らの判断で決めるもの。付け加えておくが、森田氏を巡る疑惑は核ゴミ関連だけではない。