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選挙絡みで歪む町政 ― 鹿児島・南大隅

2017年4月 5日 08:45

鹿児島 058-thumb-280x210-6513-thumb-280x210-6514.jpg 老朽化した庁舎整備の在り方について検討を進めてきた鹿児島県南大隅町。耐震か新築かの判断を委ねられた庁舎整備有識者検討委員会は「新築」を選んだが、検討委の運営自体がルール違反そのもの。議事録が残されていないことや、町が業者に業務委託して作成させた検討資料の一部を正式な納品前に都合良く利用していたことなどが明らかとなっている。
 役場の組織ぐるみで不正を犯してまで「新築」に向けて走る理由は何か?一連の過程を時系列で整理してみると、町長選絡みの「裏」が見えてくる。(写真は、森田俊彦町長)

■拙速・不正の検討委
 下は、南大隅町における庁舎整備手法の検討過程。同町への情報公開請求によって入手した関連資料を基に、時系列でまとめた。

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 南大隅町が、老朽化した庁舎の整備手法について検討を開始したのは熊本地震の発生を受けた昨年6月。7月には民間の設計業者に“耐震”か“新築”かの比較をするため「南大隅町本庁舎改築比較検討資料作成」を契約金額約90万円で業務委託し、8月に町内の各種団体代表らで構成する「南大隅町庁舎整備有識者検討委員会」を設置して整備手法についての議論を行っていた。

 検討委の結論が出たのは、11月10日。4回目の会議で「新庁舎として整備すべき」と決め、同月28日に町長に答申している。この間、約5か月。拙速を絵に描いたような展開で、検討委の実質議論は4回目会議のわずかな時間だけだった。報じてきた通り、納品前の業務委託文書を不正に使ってまで議論を進めたというのだから、呆れるしかない。新築妥当との答申を受けた森田町長は、今年1月から2月にかけて町内13か所で「町政座談会」を開き、経緯を説明。開示された座談会の記録を確認してみたが、ここでも役場側による「新築誘導」が顕著だった。

■選挙日程に合わせた結果
 庁舎新築は、一般会計予算が約75億円の南大隅町で、十数億円もの予算をかける事業。前述したように、合併特例債を利用しても5億円ほど借金をすることに変わりはない。決してスピード決着させる話ではないはずなのに、議論は半年余りで終了。あとは森田俊彦町長の最終判断を待つばかりとなっている。予告しておくが、森田氏は今月11日告示、16日投開票の南大隅町長選挙の直後、「町民の賛同を得た」として“新築”を宣言するはずだ(もちろん、当選すればの話だが)。

 役場側に議論を急ぐ理由があったとするなら、町長選挙を睨んでのことだろう。今年1月から2月にかけて開かれた「町政座談会」は、事実上、森田俊彦町長の選挙運動になっており、町長選挙のスケジュールに合わせて庁舎整備の議論を進めたのではないかとの見立ても成り立つ状況だ。役場総務課に「選挙日程に合わせるために、無理を重ねたのではないか?」と聞いてみたが、否定する声は小さかった。流行りの“忖度(そんたく”か、上からの指示か……。「新築ありき」の裏には、森田町長の思惑が働いているとしか思えない。



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