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森友問題 忖度ではなく「請託」

2017年3月28日 09:17

DSC04637.jpg 幕引きを図るつもりが疑惑拡大。国会の証人喚問に応じた森友学園の籠池泰典理事長が、安倍晋三首相の妻、昭恵夫人から100万円の寄付をもらったと証言。昭恵夫人付きの経済産業省職員が、籠池氏に「口利き」をうかがわせるFAXを送っていたことまで暴露された。
 渦中の昭恵夫人は、フェイスブック上で寄付を否定。公式な場での釈明がないまま、一方通行の情報発信に走ったことで、疑念を膨らませる形となっている。
 不可解なことだらけの森友問題。国会での議論も、おかしな方向に走っている。

■通用しない首相=身内の証言
 首相は「刑事罰に問われるような事案ではないから、証人喚問は不当」と言うが、とんでもない間違いである。公人であろうが私人であろうが、頼まれて役人に口利きし、国有財産の借用や売買に影響力を行使するのはルール違反。見返りを受けていれば、犯罪行為であろう。そもそも、刑事事件の被疑者や被告の家族が無罪を訴えても、証明力が弱いと見なされるのが普通。身内同士では、かばい合うのが当たり前だからだ。首相の夫人擁護は、身内をかばうためのもの。国民を納得させるだけの説得力はない。もっとも、籠池氏側の証言が事実なら、総理の座はもちろん、議員バッジまで外さなければならないのだから、首相とて本当のことを話すわけにはいくまい。「首相が言っているから正しい」は、この場合、通用しない。

■これは「請託」だ!
 100万円の寄付の件以上に問題なのは、夫人付きの経産省職員が森友の国有地賃借に絡み、出身省庁でもない財務省に、わざわざ問い合わせしたことなのだ。よほどの関係でなければ、起こり得ない。籠池氏側は、権力を使って財務省を動かそうとした。昭恵夫人は安倍晋三と一体の関係なのだから、間に付き人がいようといまいと、こうした場合の要請は「請託」と見なすべきだ。首相は国会で声を荒げ、昭恵夫人の潔白を強調しているが、肝心の昭恵夫人は公式の場で釈明しておらず、疑惑は拡大する一方となっている。報道機関の世論調査によれば、昭恵夫人の証人喚問を求める声は、国民の半数以上。首相周辺が庇えばかばうほど、首相本人や昭恵夫人への疑念が大きくなる状況となっている。

■「忖度」などあり得ない
 今年の流行語大賞に選ばれそうな「忖度」(そんたく)についても、おかしな使われ方をしている。忖度など、役人の世界ではあり得ないからだ。ある霞が関の官僚OBは、こう話す。
「役人が忖度なんて、そんなバカな。役人は上からの指示を忠実にこなすのが使命。指示もないのに、国有財産を安く払い下げたりするはずがない。昭恵夫人付きの女性は、経産省の職員だというが、所管違いのことを、勝手に財務省に問い合わせるなんてことは、通常はできない。昭恵夫人の指示か、経産省の上司にお伺いを立てたかのどちらか。彼女が勝手に動くことは絶対にない。結果的にタダ同然で国有地を払い下げたのは、相当な立場の政治家か官僚が動いた証拠。忖度があった、なかったで騒ぐ野党も、相変わらずバカだなと思う」

 非常識極まりない学校法人が提出した小学校の認可申請に、なぜ大阪府私学審議会が「認可適当」の判断を下したのか?次に、通常ではあり得ない8億円もの値引きで、国有地払い下げが決まったのか?森友学園を巡る疑惑は、この2点に絞られよう。籠池氏の証言が事実なら、第一の疑問には日本維新の会の関与が疑われるし、第二の疑問には昭恵夫人の力添えが疑われる。いずれについても、その過程で見返りの存在が明らかになれば、刑事事件になることは必至。公人、私人に関係なく「役所」を動かした以上、当然のこととなる。野党がどこまで核心に迫れるか――。忖度がどうのと騒いでいる間は、期待する方が無理かもしれないが……。



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