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ニュース女子

2017年3月23日 09:40

1-画面.png 沖縄のヘイトデマで問題になった「ニュース女子」の存在を知ったのは昨年末。問題となった高江報道の前々週の放送だった。SNSにアップされたニュース女子の画面を見て、愕然とした。ニコルソン四軍調整官(在沖米軍トップ)と翁長知事を並べて「どちらが沖縄を守っていると思います?」とキャプションがつけられていた。12月13日、オスプレイが名護市安部という集落付近に“着水”し、大破。その後、ニコルソン四軍調整官は県の抗議に「県民は感謝すべき」と反論した。県民にとっては許されない暴言である。しかし、「ニュース女子」の画像は、両論併記の体を取りつつ本音では米軍擁護の姿勢が強く感じられるものだった。
(右は、ネット上で流されたニュース女子の画面)

■「ニュース」なのに内容は虚偽
 そして1月2日。正月のおめでたい気分の中、放送されたのが問題となった「ニュース女子」高江報道である。悪意に基づいて作られたとしか思えない虚偽報道で、一言でいうと酷いもの。「ニュース」とうたいながら、事実の方が少ないのである。
 「沖縄以外のメディアは入れない」「反対派は日当を貰っている」「反対派が救急車を妨害」「無法地帯に沖縄振興費が流れている」などの明らかな嘘。反対運動へは、「武闘派のシルバー部隊」「危険」「黒幕」「凶暴化」といった、暴力や陰謀を強く印象づける修辞。沖縄の反基地運動を敵視する基地容認派であり、日常的にデマを拡散するボギーてどこん(本名:手登根安則。前回の参院選比例区で極右政党「日本のこころを大切にする党」から出馬、落選)を「県民代表」として出演させる一方、反対運動参加者の生の声や沖縄の基地負担には一切ふれられていなかった。

 「沖縄以外のメディアは入れない」「反対派は日当を貰っている」「反対派が救急車を妨害」「無法地帯に沖縄振興費が流れている」などの明らかな嘘。反対運動へは、「武闘派のシルバー部隊」「危険」「黒幕」「凶暴化」といった、暴力や陰謀を強く印象づける修辞。沖縄の反基地運動を敵視する基地容認派であり、日常的にデマを拡散するボギーてどこん(本名:手登根安則。前回の参院選比例区で極右政党「日本のこころを大切にする党」から出馬、落選)を「県民代表」として出演させる一方、反対運動参加者の生の声や沖縄の基地負担には一切ふれられていなかった。

 なぜこんな事が起こるのか。
 「ニュース女子」の高江報道は、実際には高江を取材していない。高江から40キロも離れた二見杉田トンネルの前で「危険」との理由で引き返し、デモには「危険」だとして近寄りもしなかった。
 番組内で黒幕と称した「のりこえねっと」にも、全く取材をせずに「資金は出所不明」と繰り返した。公式のSNSで何度もカンパを募っているにも関わらず、だ。
 つまり、「ニュース女子」は、肝心な事実を意図的に無視した上で、印象操作や虚偽でひたすら都合のいい方に誘導する手法を取っているのである。

■放送法違反
 ところで、放送法4条にはこう書かれている。

 一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二 政治的に公平であること。
 三 報道は事実をまげないですること。
 四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 ニュース女子の高江報道は、明らかに放送法の二・三・四に違反している。

 その後、「ニュース女子」は様々なメディアに批判され、事実関係を検証され、BPO審議入りと言う不名誉な事態に陥った。だが、それでも強気の姿勢を崩さない。
 ニュース女子などCS放送番組を展開するDHAシアターは「数々の犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を聞く必要はないと考えます」との見解を公表。地上波の枠を提供したTOKYO MXも「事実関係に捏造、虚偽があったとは認められず、放送法、放送基準に沿った内容だった」との見解を示した。

 両者の言い分は、「放送法を遵守する気はない」という意思表示以外の何ものでもない。放送法を守る気がないのであれば、DHCシアターもTOKYO MXも地上波を使用する資格はないだろう。放送法に縛られない番組を作りたいなら、TOKYO MXは放送権を返上すべきだし、DHCシアターはCSやネット向けの番組だけを制作すべきだ。

■背景に右派陣営の活発な動き
 近年、「ニュース女子」に見られる沖縄ヘイトデマは、主にネットの世界で蔓延してきた。それが地上波で放送されたことに「ニュース女子」問題の深刻さがあるのだが、背景にあるのは安倍政権下で勢いを増した右派の動き。例えば、森友学園問題で注目を浴びる「日本会議」や、タレントの出家騒動で話題になった「幸福の科学」、あるいは「在特会」などのヘイト団体による組織的な活動だ。ニュース女子の高江レポーターである井上和彦は、日本会議のイベントに頻繁に登壇している。

 彼らは、反対運動の意図的なデマを流布し、沖縄を嘲笑し、罵倒し、差別して得られる快楽を刺激する。それらは、沖縄に基地を建設したい政権の思惑とも一致し、相互に利用する形でヘイトを加速させてきた。組織的に拡散される沖縄ヘイトは、権力に楯突く者への反感や、基地問題への後ろめたさを覚える一般の人々の中に差別を着実に植えつけてきた。「反対派を射殺しろ」といったおぞましいヘイトスピーチを目にする事も珍しくなくない。そして、大半の無関心層がそれをスルーする。

■ニュース女子の今後に注目
 沖縄は憲法が掲げる「平和と平等」、そして基地縮小を求めて復帰した。四十年が経過し、基地問題は解決するどころか、「北朝鮮の陰謀論」といった愚かしいヘイトデマが地上波から放送されるに至っては、やはり日本は沖縄を差別し利用する対象としか見なしていないのではないかという疑念が頭をもたげる。 

 MX前の抗議や、メディアからの批判があったためか、3月13日にTOKYO MXで放送予定だった同番組は、地上波で放送されずにネット放送となった。一応1月2日放送の「検証」と称していたが、実際には批判された箇所から論点をずらして反論し、正当化するというものばかり。在日韓国人である辛氏を槍玉に上げ、「反対派の黒幕」「親北派」などと嘘の表現をした事が問題だったのに、「ニュース女子」は「辛氏の政治的発言を批判した」事にして、「外国人の政治的発言を批判したら差別にすり替えられた」と被害者を装ったのである。

 その他の「検証」も相変わらず正当化と虚偽に満ちた内容だったが、局が審査を通さなかった点は評価すべきだろう。このまま「ニュース女子」が地上から消え去るのか、あるいは沖縄と日本に亀裂を入れる楔となるのか、今後も注目したい。このまま「ニュース女子」が地上から消え去るのか、あるいは沖縄と日本に亀裂を入れる楔となるのか、今後も注目したい。

(東恩納亮)



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