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おかしくないか?福岡市の「公設屋台」

2017年2月 3日 09:10

 飲食店の良し悪しを決めるのは「味」である。不味いものしか出さない店は淘汰される。見てくれだけの食べ物は、いっとき流行っても、いずれは消えるものだ。判断するのは客。地域の食文化を育むのも客で、役所が関わるべき話ではない。
 ところが福岡市では、博多に根付いた「屋台」を存続させるためと称して、市が新規屋台出店者を選定。今年の春にも事実上の“公設屋台”が登場することになるのだという。役所がつくる食文化――おかしくないか?

■「公設屋台」までの動き
 公設屋台の言い出しっぺは、話題づくりに異能を発揮する、タレントアナウンサーあがりの高島宗一郎福岡市長だ。屋台の存続を訴えた市長の方針で、市は平成23年、総務省から出向してきた若手官僚を「屋台課長」に任命。24年には第3者委員会「屋台との共生のあり方研究会」(会長:鳥越俊太郎)を立ち上げ、屋台に関する議論を集約していた。

 研究会は、衛生面や道路使用で批判が出ていた屋台の規制強化に向けた方針を打ち出し、それまでの指導要綱に替わる新たな条例の必要性を提言。市はこれを受けて25年に「福岡市屋台基本条例」を制定している。条例は、店を辞める屋台営業者の配偶者と子が継ぐことを認める一方、 許可を受けた名義人以外が営業する「名義貸し禁止」を厳格化。規定によって、今年3月までに28軒の屋台が廃業する。

 「公設屋台」への動きはここから。福岡市は昨年夏、廃業に伴って減少する屋台の数の適正化を図るとして、新規の営業希望者を公募したのである。公募である以上、新規の屋台を選定するのは福岡市。かくして、100件を超える応募者の中から、役所が屋台を選ぶことになった。

■「味」は二の次
 屋台を巡る一連の議論や条例、公募要領に出てくるキーワードは「観光」である。条例の目的では≪屋台が福岡のまちににぎわいや人々の交流の場を創出し、観光資源としての効用を有していることを踏まえ――≫。基本理念でも、目指す屋台を≪観光資源として福岡市を広報することができる屋台≫としている。屋台の営業候補者募集においてもこの考え方が踏襲されたのは言うまでもない。福岡市屋台選定委員会の議事録には、事務方からの次のような発言がある。
「福岡市の屋台数が大幅に減ってしまい、観光客等が落胆することがないように、本人営業の規定違反の処分猶予期間が終わり、28箇所が廃業となります平成29年4月1日から、新たに公募で選ばれた屋台が営業を開始できるスケジュールとしたいと考えております」(にぎわい振興課長)――観光客のための屋台公募であることは瞭然。しかも、食にとって一番大切な「味」という言葉は、どこにも出てこない。

 募集枠28に計108人の応募。選定上位者から順に、中洲などの「観光スポットエリア」と天神などの「商業地域エリア」に出店させるのだという。だが、選定過程は不透明。議事録は「非開示」部分ばかりで、どのような基準で出店者を選んだのかまるで分らない。108人を書類審査でふるいにかけ、二次審査まで残ったのが28人。ここまでの過程で、応募者が提供しようとしている「味」の確認はされていない。美味いか不味いかの判断をせず、ウケ狙いの店だけを選んだということだ。就任以来、高島市長が最も力を入れて推進してきた施策が「観光」。市民より流入者を大切にする市長の下、不透明な選定で、味は二の次の公設屋台が出現する。

■公設屋台への疑問
 そのそも、庶民の食文化である「屋台」と最も縁遠いのが「役所」。公設屋台の発想は、どこぞの独裁国家と同じだ。しかも、ペーパーや言葉で表現できない飲食店にとっての命である「味」を無視して出店者を決めたというのだから、呆れるしかない。市道の占用許可権限をいいことに、役所が店を選定することに違和感を覚える市民は少なくあるまい。

 書類審査で振り落とされた中には、多くの常連客に愛されてきた屋台もあると聞く。地元客が愛するのは、大将やおかみさんの人柄であり、なによりその店の「味」のはずだが、書類審査でそうした点が読み取れたとは思えない。役所の論理で選ばれた屋台が、長く繁盛するのか疑問。少なくとも私は、公設屋台などごめんだ。

 



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