鹿児島県東京事務所が「公用車」として借上げているハイヤーを、少なくとも3回、プライベートで利用していた三反園訓鹿児島県知事(写真)。同県への情報公開請求で入手した知事の出張関連文書を精査すると、公務外のハイヤー使用が歴然となる。
ハイヤーの利用明細によれば、知事が公用車で訪れていた場所は新宿、麻布、六本木。県東京事務所も県庁秘書課も、こうした知事の動きを把握していなかった。しかも、3回の私的なハイヤー利用のうち1回は、知事が東京に行くため無理やり作った“不必要な公務出張”にともなうものだった疑いがある。
■8月22日―早めの出発でプライベートの時間を確保
三反園知事がハイヤーを公務外使用したと見られる3件のケースを、個別に見てみる。確認したのは、交通事業者が県東京事務所に請求書を提出した折に添付された「利用明細」、「行命令書」、「知事日程表」である。まず、昨年8月22日のケース。利用明細に記された走行経路は次のようになっている。
「羽田空港~麻布十番~六本木~神田神保町~麹町」。ハイヤーの利用時間は「16時55分~22時25分」だ。夕方5時頃羽田に着いた知事は、麻布十番、六本木で私用をこなし、夜10時半近くなって神田神保町にある東京の自宅まで送らせていた。ハイヤー利用の5時間半がプライベートだったことは、当日の「知事日程表」と取材に応えた県側の回答からも明らかとなる。下が8月22日の日程表(以下、日程表の赤い書き込みはHUNTER編集部)である。
この日、東京に着いてからの公務予定は一切入っていない。県側は、知事の行動を把握していなかったとしており、つまりは“所在不明”。実際には羽田から麻布十番、六本木に行って夜遅くに東京の自宅に到着していた。旅行命令書によれば、出張目的はNHKの籾井勝人会長(当時)訪問。しかし、NHK訪問は翌23日午前10時の予定となっており、前日の早い時間に東京に向かう必要はなかった。知事は、プライベートの時間をとるため、わざわざ22日の昼間に東京に向かった可能性が高い。
■10月2日―私用で公用車8時間半
10月2日のハイヤー利用も、明らかにプライベートだ。走行経路は「東京駅~新宿~神田神保町~紀尾井町~羽田空港」。東京駅から新宿に行った後、神保町の自宅に寄って紀尾井町に向かい、それから羽田というコースだった(下、参照)。
一方、この日の「知事日程表」では、終日「出張(岩手)」。公務の予定はない。旅行命令書でスケジュールをたどってみると、10月1日に国民体育大会開会式に合わせ岩手入りし、2日は新幹線で東京まで戻り、羽田から航空機利用となっていた(下、参照)。
公務はなく、まっすぐ羽田に向かうだけのはずが、東京駅から向かったのは新宿。それから自宅に寄り、紀尾井町を経て羽田に向かっていた。この間、8時間30分。料金にして51,770円。三反園氏は、自身のプライベートにどれだけの税金が消えているのか、考えていないのだろう。
■9月16日―不必要な出張の疑い
9月16日のケースからは、ハイヤー利用以前に、東京出張そのものの必要性に疑義があることが分かる。利用明細では、16時40分から22時50分までのハイヤー利用で、羽田から紀尾井町に行き、六本木に寄って最後は自宅で降りていた。
この日の知事日程表が下。午後は「行財政折衝」となっている。当然、霞が関にあるいずれかの官庁か議員会館のある永田町に行くはずだが、前掲のハイヤー利用明細で明らかな通り、知事は紀尾井町、六本木にしか行っていない。
それでは、「行財政折衝」のため、どこに行く予定だったのか?下の旅行命令書には、用務地として「鹿児島県東京事務所」とあり、住所が書いてある。その後ろに、付け足しのように「永田町」とあるのが分かる。
公用車が、東京事務所のある平河町を通ったのは知事を羽田で拾う前。空港で知事を乗せてからは、平河町や永田町に行っていない。予定の出張日程と実際の走行経路が食い違っていることは、この時の出張自体が、実は私用で発生する税金支出を正当化するための偽装だったことを示唆している。そもそも出張した県知事に、随行職員なしの公務はあり得ないだろう。不必要な出張だったとすれば、組織ぐるみで背任行為を行ったことになる。
昨年の県知事選挙で三反園氏は、「県民の視点」「県政の刷新」を訴えて初当選を果たした。しかし、知事就任以後、やっていることはタチの悪い「嘘」と「ごまかし」の県政。「止める」と言った川内原発に関する公約は事実上反故にし、原子力ムラに恩を売った形になっている。選挙運動費用を巡る疑惑では頬かむり。公用車のプライベート使用に至っては論外と言うしかない。まるで“西のマスゾエ”。三反園訓に、これ以上鹿児島県の舵取りを任せてはいけない。