政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
僭越ながら:論

核ゴミ最終処分の現状

2017年2月22日 08:25

gennpatu 007.jpg 自分が住むまちで、核ゴミ処分場の建設計画が持ち上がったとしたら、どうするか?おそらく、大多数の人が「反対」と答えるだろう。一方で、原発については「将来はなくすべき」と「即時廃炉」を合わせた割合が過半数を占めるのも確かだ。原発を推進するにせよ、なくすにせよ、避けて通れないのが核ゴミをどう最終処理するかという問題。いずれ私たちは、核ゴミと正面から向き合わなければならない。
 政府は昨年、核ゴミの最終処分に適する場所を「科学的有望地」として公表する予定だったが、「官邸の意向」(永田町関係者)でズルズルと延期。年度内の公表も難しい状況だという。どうする、核のゴミ!(写真は玄海原発)

■増え続ける「核のゴミ」
 高浜3・4号機(福井県大飯郡高浜町)、川内1・2号機(鹿児島県薩摩川内市)、伊方3号機(愛媛県西宇和郡伊方町)と続いた原発の再稼働。高浜3・4号機は大津地裁の再稼働禁止仮処分命令を受けて停止しているが、新規制基準に基づく審査で高浜1~3号機、玄海3・4号機(佐賀県玄海町)、美浜3号機(福井県三方郡美浜町)が許可済みとなっており、地元合意が得られ次第、順次再稼働する見通しだ。
 下は、新規制基準適合性審査の対応状況だが、動かすにつれ、増え続けるのが膨大な量の放射性廃棄物(核ゴミ)。確実な処分方法はもちろん、処分地さえ決まっていない。

1-原発審査状況.png

 上掲の表の通り、既に営業運転を始めた川内、伊方を含め、稼動可能な国内の原発は43基。美浜1・2号機、玄海1号機など廃炉が決まった6基が存在する他、大間原発(青森県下北郡大間町)が建設中となっている。事故が起きた福島第一の4基を加え合計54基。たまっている核のゴミは膨大な量で、再稼働が進めば加速度的に増えていく。

■決まらぬ最終処分地
 日本を悩ませているのは、原発内の核ゴミだけではない。青森県六ケ所村には、日本原燃が所有する核燃料の再処理工場の他、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターと低レベル放射性廃棄物埋設センターが併設されているが、後者は満杯寸前。容量3,000トンとされる使用済み核燃料の一時保管スペースも、ほぼ満杯状態となっている。原発ごとに保管されている使用済み核燃料は、平成26年4月末時点で約17,000トン。再処理施設の竣工が遅れる中、原子力ムラは使用済み核燃料の保管方法を、プールの中に保管する「湿式貯蔵」から金属容器に密封して空気で冷やす「乾式貯蔵」に変更し、「敷地内半永久保管」を図る構えを見せている。それでも、高レベル放射性廃棄物は、処分のしようがない。最終処分地が決まっていないからだ。

 使用済み核燃料を再処理すると、再利用が可能なウランやプルトニウムとは別に高濃度の放射性廃液が生じる。廃液はガラスの原料と融合させ「ガラス固化体」となるが、これが「高レベル放射性廃棄物」だ。高レベル放射性廃棄物は、地下300メートルより深くに埋めるいわゆる"地層処分"を行なうことになっているが、平成14年から事業を担ってきた「原子力発電環境整備機構」(ニューモ)の計画は進んでいない。

 国は、交付金をエサに最終処分場を誘致する自治体を公募してきたが、誘致に前向きになった自治体では反対運動などで方針撤回を余儀なくされるケースが相次いだ。平成19年には、誘致を表明した高知県東洋町で反対運動が起き町長が辞職。出直し町長選挙で誘致撤回を掲げた候補が当選し、処分場計画はご破算になった。鹿児島県南大隅町では、いったん町の有力者らが賛同したものの、保身に走る町長の「嘘」で町政自体が混乱し、今日に至っている。

 冒頭で述べた通り、政府が選ぶ「科学的有望地」は、混乱を避けたい官邸の意向で公表が延びている状態。公表されても、日本地図上に有望地付近を色分けする程度のものと見られており、議論を進める材料にはなりそうもない。ましてや、総選挙を控える政治状況。原発の争点化を嫌がる安倍首相としては、核ゴミ最終処分についての議論を封じておきたい心境だろう。先送りする間にも、引き取り手がない「核ゴミ」は増え続ける。 

■核ゴミ処分、議論を!
 核のゴミをどうするかは、日本全体で考えるべきだ。原発については反対、推進と意見が分かれる現状だが、核ゴミ処分だけは共通の課題だからだ。仮に政権交代が実現し、原発推進の自民党が下野する事態になったとする。次の政権が「廃炉」を打ち出し、原発を停止させても、核ゴミの処分という課題は残る。反原発を叫ぶ立場の人たちにとっても、核ゴミ処分だけは避けて通れないのだ。しかし、私たちは核ゴミの問題から逃げている。

 似たような事例がある。沖縄は戦後、米軍に県土を占領され、県民は基地と隣り合わせで暮らしてきた。普天間飛行場の返還が決まったものの、移設先を県内の名護市辺野古に押し付けられ、戦中からの理不尽に苦しめられている。沖縄の民意を無視した安倍政権の暴走も、止まりそうにない。虐げられる沖縄に同情はしても、声を上げない本土の日本人。本土に基地を移設しようという声でもあがろうものなら、「とんでもない」というのが大方の反応だ。国民あげて辺野古移設に反対すれば、「それなら本土に」と言われるのは必至。無意識のうちに、沖縄から目を逸らせている。この無責任は、核ゴミ問題に通底している。

 「基地は国外へ」という手もある。しかし、核のゴミには「国外処分」という選択肢はない。国内で、しかも原発が供給する電気を使ってきた「本土」が引き受けざるを得ない話なのだ。沖縄には原発がなく、従って核のゴミを引き受ける義務がない。核ゴミは、逃げることが許されない本土の問題なのである。

 筆者は、原発推進にも、再稼働にも反対だ。だが、核ゴミ処分場については、議論を封じるつもりはない。もちろん、廃炉を前提としての話である。廃炉を前提に核ゴミを引き受けるという自治体が現れた時、間違いなく反原発が一歩前に進む。



【関連記事】
ワンショット
 福岡市東区の筥崎宮「神苑花庭園」でのワンショット。枯山水...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲