市長の夫人同伴が問題視された、鹿児島市の姉妹都市訪問。市への情報公開請求で入手した旅行命令書などを精査したところ、平成26年に実施されたオーストラリア旅行で、日程の多くに、視察と称する「観光」が含まれていたことが分かった。高額な旅行費用の内訳が存在していないことも明らかとなっており、市民軽視の税金支出に批判の声が上がりそうだ。
■まるで観光旅行 驚きの旅費
森市長の夫人を同伴した海外出張は2回。毎回10~11名で訪問団を組織し、平成23年にアメリカの姉妹都市マイアミを、26年にはオーストラリアのパース市を訪れていた。夫人同伴には賛否がある。HUNTERが注目したのは、海外出張の内容と旅費だ。
23年のマイアミ訪問にかかった経費は、市長夫妻、市議(2人)、市民代表(2人)、市職員(4人)ら10人で1,295万円。6日間の日程で、一人あたり129万5,000円という計算。旅費額を押し上げたのは市長夫妻など市職員以外の航空券代がビジネスクラス利用でかさんだせいだった。市長と夫人、市議、市民代表の旅費は、いずれも176万4,100円。これに対しエコノミ―クラスだった職員の旅費は、半分以下の60万6,850円に過ぎなかった。
姉妹都市マイアミには、3日間滞在。公務が入っていたのはここまでで、4日目のワシントンDC、5日目のニューヨークは、「視察」と称する「市内観光」に費やしていた。市長も市議も、税金利用の旅行であるという自覚に欠けている。
■旅費明細は不存在
26年のオーストラリア旅行では、8月5日から14日まで10日間に渡る日程で、市長夫妻、市議(2人)、市民代表(2人)、市職員(5人)ら11人が、姉妹都市パースなど3都市を訪れていた。旅費は、総額1,525万2,746円。一人あたり約139万円の計算となる。市側の説明によれば、市職員以外はビジネスクラス利用だったという。この時の旅行も、観光目的としか思えない内容が含まれている。復命書にあたる「鹿児島市・パース市 姉妹都市盟約40周年記念訪問団報告書」から、訪問団の動きをまとめた。
6日のゴールドコースト到着後、鹿児島市平川動物公園に贈られるコアラがいるドリームワールド訪問。その後、州政府との懇談で訪問初日の日程を終了し、翌7日はメルボルンへ。この日から9日までの3日間は公務がなく、完全な観光旅行となっていた。姉妹都市バースで公式日程をこなすのは10日からの4日間。復命書を見る限り、楽な時間割りとなっている。報告書に掲載された現地写真(下の写真参照)は、どう見ても観光団の記念写真だった。
問題は、約1,525万円にのぼる旅費の内訳が分からないことだ。23年のマイアミ訪問については、個別の航空券代や宿泊費が分かる書類が残されている。しかし、26年のオーストラリア訪問は旅行代理店との契約書が残っているだけで、支出総額しか分からない。開示された資料に中には、何にいくらかかったのか、証明する書類が存在していないのだ。他の自治体なら普通に残される航空券代やホテル代、通訳費用などの明細が、一切ないという異常な事態である。
所管課である鹿児島市国際交流課に確認したところ、予算額算出の折に提出させた旅行代理店からの下見積書を、「廃棄した」(同課)と言う。旅費総額は分かるが、内訳は不明。個別の費用が、高いか安いかさえ判断できない。業者の下見積りが、本当に存在したという証明もできない状況だ。同市の文書管理には、重大な瑕疵があると言わざるを得ない。
不正な支出はなかったのか――。本来、市議会がチェックすべき事案だが、市議2人が同行していたせいか、問題になっていない。市役所と議会がグルになって、市民の税金を食い潰した格好だ。重ねて述べるが、公費出長の原資は税金。市や議会に自覚があれば、ビジネスクラス利用で観光など絶対にできないはずだ。市長はもちろん、鹿児島市議会にも猛省を促したい。