資金管理団体による不透明なカネ集めに業者丸抱えの選挙。政治資金を巡って疑惑まみれとなった森博幸鹿児島市長だが、市のトップとして、もらうべきではない相手からの資金提供があったことが分かっている。
「いわさき」と「南国」――鹿児島を代表する有力企業グル―プの代表や役員らのカネが、市長の選挙や資金管理団体の政治活動費として提供されていた。
(写真は、鹿児島市役所)
■いわさきグループの政治団体から150万円
昨年11月の鹿児島市長選挙。森市長は、『地域創生戦略会議』という聞きなれない政治団体から150万円の寄付を受けていた。鹿児島県選挙管理委員会への情報公開請求によって入手した政治団体設立届及び異動届によれば、同団体の設立は平成24年。当初は、『これでいいのか鹿児島』という名称だったが、鹿児島市長選挙まで1か月あまりとなった昨年10月19日に、代表者交代と合わせて現在の団体名に変更されていた。
地域創生戦略会議が市長に寄附した150万円の原資について確認したところ、同団体に収入があったのは平成24年の設立年だけ。9人から1,250万円を集め、同年に約940万円を支出。このあと、25年、26年と資金の動きはなかった。残金約300万円の中の150万円が、市長に寄附された形だ。9人の寄附者のうち、少なくとも7人まではいわさきグループ内の企業の代表者か役員の経験者。それぞれ、100万円から150万円の寄附を行っていた。設立時の団体代表者も現在の代表者も、「いわさきグループ」に属する企業の役員かその経験者。地域創生戦略会議は、事実上いわさきグループの政治団体だった。
いわさきグループは、鹿児島県内を中心に、ホテル、バス、海運、航空など40社以上の傘下企業を抱える観光・交通事業の雄。鹿児島市との間に、さまざまな利害関係があるのは言うまでもない。グループトップは、岩崎芳太郎氏。同氏は、平成24年の鹿児島市長選挙で、3選を目指していた森市長に対抗して立候補した無所属新人の後援会長を務めていた。地域創生戦略会議の前身『これでいいのか鹿児島』は、岩崎氏が支援した無所属新人を支えるために設立された政治団体だったのである。市長と敵対した団体が、4年後に手のひらを返した格好。市長選1か月前の名称変更は、世間体をはばかった岩崎氏の意向だったと見ることも可能だ。ただし、前述したようにいわさきグループと鹿児島市には利害関係がある。現職・森氏へのいわさき側からの寄附は、違法ではないが不適切と言わざるを得ない。
■南国殖産代表者からも献金
県内でいわさきグループと競争関係にあるのが「南国グループ」。県内トップの商社「南国殖産」を中核に、運輸、食品など幅広い分野に企業群を形成している。鹿児島市とは、燃料納入やビル管理などで数多くの契約を結んでおり、市街地の再開発でも共同する機会が多い。県選管に提出された政治資金収支報告書によれば、南国殖産の代表者は平成27年8月、森市長の資金管理団体「もり博幸後援会 博友会」に30万円を寄附していた。
いわさきグループによる選挙資金提供と同様、南国の代表者による市長側への献金は、「契約などの見返りではないのか」という有権者の疑念を招きかねないもの。ただちに公職選挙法や政治資金規正法に抵触する事案ではないにせよ、両グループと鹿児島市の余りに深い関係からすれば、賄賂性があると見られてもおかしくはあるまい。森市長は、カネをもらっていいい相手と、そうでない相手との区別がついていない。
報じてきた通り、森市長の選挙資金は大半が業者側の寄附。自己資金ゼロという実態は、まさに「丸抱え」だ。業界選挙にシラケてしまった市民は少なくなかったらしく、昨年の市長選は投票率が25%まで落ち込んでいる。