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福岡市役所 報道規制の実態

2017年1月20日 08:30

市役所 44.jpg 福岡市(高島宗一郎市長)の報道課が、部内の幹部研修で、重要事項を取材したメディア側と文書によるやり取りを行うよう求めていたことが分かった。組織防衛のため、市側にとって都合の悪い話での議論を避ける狙いがあると見られる。
 研修は部長級職員に対するもので、そこから取材対応にあたる課長級職員などに伝えられる形。事実上の「指示」であり、市側が実際に文書取材を要請するケースも出ている。研修では、記者とのやりとりを録音することも奨励しており、報道規制に走る高島市政の実態を露呈した格好だ。
(写真は福岡市役所)

“文書による取材対応と録音”部内研修で事実上の指示
 HUNTERは昨年11月、JR博多駅前で起きた地下鉄七隈線延伸工事の陥没事故に関連し、福岡市交通局に対し「道路法」と事故現場の本格復旧との関係について訊ねた。道路法40条の規定に従えば、本格復旧前に、陥没事故現場に埋まったままとなっている信号機や配管、コンクリートがら、土嚢などを掘り出す必要があるからだ。この折、所管する交通局建設課は、文書で回答するためとしてメールで質問事項を送るように記者に申し向けていた。市側の回答は、20日後。回答の内容について同課に確認を求めているが、何度連絡しても反応さえない。メディア側に文書での取材を要請するケースは、他でも確認されている。

 「取材に対し、文書でのやり取りをするよう、組織として指示を出しているのではないか」――。疑問を抱いた記者が福岡市報道課に確認を求めたところ、部長級職員への研修で、以下の2つのケースについて文書でのやり取りをするよう「依頼」(報道課長)したことを認めている。

  • 回答の内容に正確さを期する必要がある場合
  • 上司に報告をする必要がある場合

 また、各課の判断で、上司に報告する必要がある場合の取材は録音をとるか文書で残すよう「依頼」したという。

口頭取材の重要性を証明した報道課長の「嘘」
 文書でのやり取りとなれば、一問一答形式の取材は不可能。役所側との議論も深まらない。まともな取材ができないとなれば、事実関係を探ることもできなくなる。嘘やごまかしが常態化した福岡市役所においては、なおさらだ。“回答の内容に正確さを期すため”などともっともらしい言い訳を並べているが、不都合な事案の取材に時間をかけて対応し、役所側の主張を崩す機会を与えまいとする魂胆が透けて見える。実際、役所側との口頭によるやり取りの過程で、嘘やごまかしが発覚するケースは少なくない。じつは、当の報道課長自身が、HUNTERの記者とのやり取りで、そのことを証明してしまっている。

 今月18日の報道課への最初の取材で、取材対応に関する一連の依頼(指示)内容を文書化したものはないかと尋ねた。報道課長は「ありません」とキッパリ。重ねて訊いたが、「口頭での依頼だった」として明確に文書の存在を否定していた。以下は、翌日の確認取材での報道課長とのやり取りの概要である。

 記者:昨日は「分からない」ということだったが、取材対応に関する依頼は、いつ頃からやっていたのか分かったか?
 課長:今年の4月に、私が部長級職員への研修で依頼した。

 記者:指示ではないのか?
 課長:指示する立場にない。

 記者:4月に課長になったばかりで、いきなり依頼したのか?引き継ぎ事項だったのではないか?
 課長:引き継ぎの資料の内容に従った。

 記者:ということは、文書があるということか?
 課長:……。

 記者:昨日は文書は存在しないと答えたが、きょうは取材対応について記した資料があると言う。おかしくないか?
 課長:失礼した。引き継いだ研修の資料があった。

 記者:情報公開請求すれば、その文書が開示されるということでいいか?
 課長:そういうことか。そちらの狙いは分かった。

 語るに落ちるとはこういうこと。課長の舌打ちが聞こえてきそうな展開だったが、記者とのやり取りがなければ、問題の文書は隠されたままになっていただろう。滑稽なことに、文書のやり取りでは真実に近づけないことを、報道課長自らが証明してみせた格好となった。

伝わらない市政の歪み
 この報道課長のように、高島市政になって、市の幹部職員が平気で嘘をつくようになった。根太が腐っているのは確かだ。情報公開請求への対応でも恣意的運用が目立っており、多忙や文書量の多さを理由に開示決定期限を延長するのが常態化している。情報公開制度自体が形骸化した状況だ。文書取材の奨励も、権力側による権利の乱用と言わざるを得ない。

 福岡市の報道対応を巡っては高島市長の就任後、取材対応を課長級以上の職員に限った上で、取材内容を詳しく記し上司に報告するよう求めるなど規制が強化されてきた。また、役所内で使用するパソコンのシステムにインターネットの閲覧制限を設定し、市政記者クラブ加盟社以外のニュースサイトを“隔離”するなど、市政に批判的なメディアの締め出しに躍起となっている。市側の番犬ばかり集めた記者クラブのお陰で、市民に伝わるのは景気のいい話ばかり。市政の歪みは、ほとんど報じられない状況となっている。



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